組織の中のストレス

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

会社で一番の悩みは“人間関係”だと言われており、ストレスやメンタルを病む原因、退職理由も人間関係が多くを占めます。

私生活とは違い組織では上司部下、先輩後輩、同僚同士、取引先など、実に多くの人間関係があります。学校では教師と生徒・保護者という役割・期待もあります。

組織において対人ストレスを軽減し、皆が働きやすい環境に整えるのは上司(部下を束ねる立場/管理する側にある人)の仕事でもあると考えています。もっと言えば、トップの仕事であると考えています。上司でなくともプロジェクトリーダーなども、チームのメンバーが働きやすい環境に整えることも仕事であると思います。

管理職やリーダーという、人の上に立つ立場の人は部下に命令指示し、勤怠“管理”するだけが仕事ではない、ということです。

【役割期待】は、私生活ではパートナーや子供に、学校では教師が生徒に、会社という組織では部下や後輩に対して生まれやすい概念です。自分が期待している役割(仕事・家事など)に相手が応えてくれるとストレスはありませんが、期待している役割に応えてくれなかったり、「そうじゃなくて!」と、トンチンカンなことをされたり、反発を感じるとストレスになります。

こうして見ると、私たちが抱える人間関係のストレスの多くは“役割を期待する”ことから生まれていると考えられませんか?

役割期待は対人関係で誰もが持っている概念なのです。そして、役割を果たされないことや役割期待のズレから生まれるイライラや怒りが対人ストレスの正体です。

私生活だと「僕は仕事が忙しいし家にいる時間が長い妻が家事をやってくれるだろう(やっていて欲しい)」《役割期待》→“僕”が考えるほど家事をやってくれていない、暇そうなのに家事を疎かにしてダラダラしている(ように見える)→イライラ発生。

会社だと上司が部下に「資料作成してくれと昨日言ったよな」《役割期待》→いつまでも上がってこない、報告もない、忘れているのか?どうしてこんな簡単なこともサッサとできないのか?→イライラ発生。

学校だと教師が生徒に「宿題やるように言った(だからやってくるだろう)」《役割期待》→「ほとんどがやってきているのに、どうしてこの子はいつもできないの?」→イライラ発生。

どちらも相手に(誰かに)役割を“期待”して、それに応えられなかったことがイライラに繋がっているのがわかります。期待している役割に相手が応えてくれないことで不満(ストレス)を感じているのが原因です。

そうならないためにはどうすればいいのでしょうか。

とにもかくにも“コミュニケーション”です。

前記の上司であれば「明日の会議で使う資料を○○までに上げて欲しい、今抱えている仕事もあると思うができそうか?(難しそうであればいつまでならできるのか)」と、仕事内容を伝えると同時に『○○までにできるかどうか』も確認する必要がありました。一方、部下は無理そうだなと思っても「できます」と言ってしまいます。そこで上司はもう一歩踏み込んで、助っ人になるような人に根回し「彼(彼女)に資料作成を頼んだから、ちょっと手伝ってやってくれ」と言っておくのもいいでしょう。あるいは、その部下がやっている仕事を別の人に任せて、資料作成を優先させることもいいでしょう。とにかく、一人で背負わせない、頑張らせない環境を作ってやることが大切です。

これを役割期待の擦り合わせと言います。

部下にもやっている最中の仕事があるのに、いとも簡単に「○○までにやっといて」とまったく違う仕事を丸投げする上司がいますが、急ぎで抱えている仕事があると「えっ!?いきなり?」「忙しいのにその量?」「またかよ」と不満を感じ、モチベーションが下がってしまいます。プレッシャーで不安にもなるでしょう。これが連日続いたらその部下はどうなるでしょう・・・いずれは退職していくか、あるいはメンタルを病むか、はたまた最悪の事態に発展しかねません。

命令“だけ”しかできない(しない)上司、今時どれくらいいるのかわかりませんが、悪しき昭和の常識(部下は黙って上司の言うことを聞け)をズルズル引きずっている人に多い気がします。私の勝手な想像ですが・・・。

役割期待は平たく言うと「口に出してはいないけど(言葉にしていない)考えたらわかるよね?くみ取れるでしょ?」から生まれます。期待していると(勝手に)期待に応えてくれなかった、裏切られた、理解されなかった・・・と感じた時にイライラが生まれやすいというのは、誰にでも経験があることではないでしょうか。

今は特にコロナ禍ということもあり、イライラ感情を持ちやすい社会情勢ということもあり、そこここに火種があるように感じます。

コミュニケーションには時として手間や時間がかかる時もあるのですが、そのわずかな手間を面倒だと惜しんで後々イライラするのなら、思いやりのある細やかなコミュニケーション(アサーション)を心掛けてみるほうが生産的な気がします。

自分以外は親でも子でも他者。あなたが思っていること、考えていること、そんなものは口に出して言葉にしなければ伝わりません。

察しがよく伝わる人はいるかもしれませんが、それはたまたまで幸運なことです。これは当たり前ではありません。

命令するのと的確に指示ができることは別です。期待し信じ伸ばすこと。それは言葉足らずな【役割期待】とは違うものです。

自分が誰に対しどのような役割期待があるのか、そこに意思を伝える十分なコミュニケーションはあるのか(言わなくてもわかるでしょ、このくらいわかって当然、やってくれるのが当たり前というコミュニケーションの手抜きはないか)、今一度、自分自身を振り返ってみましょう。新入社員の入社時期でもあります。改めて自己点検してみるのもいいかもしれませんね。

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反動形成〜防衛規制の話【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

【1】で、反動形成はフロイトが提唱した、自分の立場を守ったり上手く人間関係を維持しようとする防衛規制という概念なのだとお話しました。

働き過ぎる防衛規制は良くないのですが、防衛規制には無意識に不安や恐れ、葛藤を回避、緩和しようとして働く誰にでもある心を守るための大切な作用でもあるのです。

防衛規制はさまざまな不安や葛藤を何とか処理しようとする場面でも表れます。

<例>
●欲しいブーツがある→すぐに流行は終わるだろうと諦める。
●成績が悪い友達に「もっと頑張らなきゃ」と説教してみる。
●「明日は運動する、ダイエットもする」と今日はいっかとドカ食いする。
●私だって頑張ってるんだから、多少ダンナに迷惑かけてもいっか、と家事をサボる。
●あの人は私を嫌っているんだと思い込もうとする。

このように防衛規制を使うことで、苦しかったり認めたくないことを一時的に自己正当化して心を守ることができます。防衛規制という心の機能があるおかげで、私たちは衝動的、感情的な欲求に飲み込まれず社会に適応できていると言えます。

ただ、この防衛規制は安全装置とはいえ一時的なもので、言い方を変えれば心の自由を奪うものでもあるので、防衛規制という機能をずっと働かせたままだとメンタルバランスを崩し、心の病気になってしまう可能性が高まります。

バランスよく防衛規制を使うことで、ストレスの多い社会で上手く折り合いをつけながら生きていっているのが私たちですが、その多くは無意識での働きなので、自分でコントロールするのは難しく、防衛規制という機能が働いているのだと意識もできないことがほとんどです。

理想は、

しなやかで柔軟な防衛規制

です。

頭でわかっていても、私たちの感情や気持ちはいつも一定ではありませんから、精神的に余裕がなかったり疲れている時は“今の自分を直視しないようにする心の作用”である防衛規制はしなやかで柔軟には働きません。

【1】で“今”を感じるマインドフルネスのお話をしました。マインドフルネスには『無意識を意識する』『今ここ』を感じる練習があり、じっくり自分(と自分の内側)と向き合う瞑想が軸になっています。

練習をして慣れれば移動中の電車内、昼休みのわずかな時間でできるようになるマインドフルネスで、あなたも自分自身とじっくり向かい合ってみませんか。

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反動形成を知っていますか?【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

気持ちとは正反対の行動を取ってしまうことを、心理学では【反動形成】といいます。

わかりやすいのが『辛い(悲しい)けど、人前では明るく振る舞わなきゃ』『本当は嫌いだけど仲良いフリをしてしまう』←子供関係が絡むと本当によくあるようです。・・・などです。

反動形成はフロイトが提唱した防衛規制という概念で、“自分自身の受け入れたくない(受け入れ難い)感情や衝動を隠すために本心とは正反対の行動を取る”ことで、心の安全装置を働かせるのです。

「悲しみや辛さなど落ち込んだ姿を見せるのは良くない(心配させる/嫌な気持ちにさせてしまう・・・などから)、明るくしてなきゃ」という、弱っていたり落ち込むことに否定的な気持ちが強すぎることが、ネガティブな態度を表すことに対して不安や恐れという感情と結び付きます。そんなネガティブな気持ちを和らげる無意識な行動が、本心と正反対の行動になります。

この【反動形成】、実は悪いことだけではないのです。

会社、私生活と私たちはさまざまな人間関係の中で日常生活を営んでいます。果たして、その場面場面でいつも行動と本心が一致しているでしょうか?自分の思いどおりの生き方をしている人のほうが少ないはずです。

無人島で誰とも交わらず気ままな独り生活を送っているのでもなければ、どのようなカタチであれ人間関係が発生します。

人間関係を円滑に送るために無意識に私たちは反動形成をおこなっており、それが結果として自分の立場や心を守ってもいるのです。

だからと言って、四六時中気持ちと行動が正反対だと、それはそれで凄まじいストレスですよね。心には許容範囲があるので、反動形成だらけの状態が長く続くと、生きづらさを感じたり、さまざまな精神疾患を引き起こすことにも繋がります。

両面ある反動形成のどちらかにも偏らず、上手く付き合っていくにはどうすればいいでしょうか。

そのポイントは、

今の自分の気持ちに目を向ける

ことです。ここで大切なのは、“自分の本心”だけでなく、“それを否定している自分”や“思い込み”という隠された本心にも気づくことです。

「なぜ好きでもない先輩の飲みに付き合うのか?」→そこには「好きじゃない(嫌いだ)」という本心と、仕事を教わっている立場だし、先輩に嫌われると仕事がやりづらくなる、という隠れたもう一つの本心があります。

「なぜ何とも思ってないのに優しい素振りをしてしまうのか」には「どうでもいい」と思っている本心と、冷たい人だと思われたくない、独りぼっちになりたくない、というもう一つの隠された本心があります。

肯定的な気持ち、否定的な気持ち、その両方に気づき『私にはそんな気持ちがあるんだな』をそのまま受け止めていくことが大切です。

“今ここ”に気づき、受け止めていくのにマインドフルネスがとても有効です。

マインドフルネスもコツがあり練習も必要ですが、しなやかで柔軟性のあるメンタルを目指すという点では【アサーション】【アンガーマネジメント】【マインドフルネス】がこれからの人間関係のカギになっていくのではないかと思っています。

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効率的に集中する【ポモドーロ・テクニック】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回はあらゆる“注意”(注意についてのコラムを参照)に課題がある息子の学習や、自身が長時間読書や勉強をする時に実践している【ポモドーロ・テクニック】についてお話しようと思います。

ポモドーロというとイタリア料理みたいですし、テクニックと付くといきなりハードルが高くなるように感じるかもしれませんが、決して難しいことではありません。

最初は自分との闘いになりますが(笑)

ポモドーロ・テクニックとは【集中力を高めて持続させ、目の前のやらなくてはいけない(やりたい)ことに時間を効率的に使う】、何らかの作業するアウトプットに有効な技法です。

やり方は簡単。30分を一つの『塊』として考え、25分作業して5分休憩を繰り返します。

作業25分(仕事/読書/勉強/片付け、など)→休憩5分→作業25分→休憩5分→作業25分→休憩5分・・・の繰り返しです。

たったこれだけ!

どんな人でも集中力には限界があって、時間が長くなればなるほどパフォーマンスは落ちていきます。

ですからこの“この25分集中”は理に叶っています。長時間(ダラダラ?)取り組んでも、思ったほど捗らなかった・・・という経験は誰でもお持ちではないでしょうか。

短く区切られた25分という時間になるべく作業を進めようとする心理が働き、結果、集中力が高まる・・・というわけです。

30分(25分+5分)という塊で予定を立てていくので、時間管理しやすく見通しが立てやすいのも大きなメリットです。30分という隙間時間は探せば案外あるものですから。

25分と区切っていても「あ、ここまでやれば区切りがいいからやっちゃおう」や「もうちょっと集中できそう」と思う時があります。しかし、

ポモドーロ・テクニックでは作業25分を守ってください。

私は最初はここが出来なくて「もうちょっと」になっていましたが、そうなるともう後はなし崩し的にグダグダです。

25分作業→5分休憩、ポモドーロ・テクニックではこれが何より大切なのです。

休憩の5分は何をしてもいいので、私は“洗濯物を干す”、“当日のスケジュールを見直す”、“飼っている生き物の世話”、“メールの返信”という隙間時間にチマチマできる、それほど時間を費やさなくてもできることに使っています。もちろん、外出して伸びをする、目を瞑って目を休める、音楽を聴く、コーヒーを淹れるでも構いません。

これも“5分休憩”を守ります。守らないと前記のなし崩し的にグダグダになってしまいます。

30分ひと塊りを【1ポモドーロ】という単位で考え、作業に必要な時間の見通しを立てていくのです。ポモドーロ・テクニック用のタイマーもありますが、視覚聴覚両方に訴える“タイムタイマー”のようなタイマーが使いやすいと思います。

我が家では減っていく時間、残り時間が見やすくて電池も不要な、ドリテックダイヤルタイマー60分計を幾つか冷蔵庫に貼り付けて使っています。

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アンガーマネジメント【5】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

シリーズ最後となる今回は怒りを感じた場面でどう考えて(行動して)いくのかを具体的にトレーニングしていきます。

私たちが普段行動している根幹には

【その人自身の信念、善悪の判断をしているもの=コアビリーフ】

があり、コアビリーフはその人の“価値観そのもの”と言えます。

このコアビリーフが「〜であるべき」を引き起こす(コア)ので、人それぞれにあるコアビリーフが怒りをコントロールする重要なカギになります。

困ったことに、このコアビリーフには一般常識や他者の理屈は通用しません。人の数だけ存在するのがコアビリーフなのです。

わかりやすいコアビリーフの例を挙げてみます。

<例>
「子供は親に言うことを聞くものだ」というコアビリーフを持っていると、「子供は親の言うことを聞かなくてはいけない」から「子供は親の言うことを聞く“べき”だ」が生まれやすくなります。

子供は親の所有物ではなく、親とは違う考えや感情、意思を持ち、親とは違う人生を送る血の繋がりはあるけれど“別人格の他者”という現実が薄くなってしまい、“頭で”わかっていても(わかっていない人もいますが)、思いどおりにならず言うことを聞かない子供に対し、「あなたのためを思って←(これすら押し付けで虐待ですが)」と怒りを感じやすくなります。

私も発達障害を持つ手強い中学2年男子の母親なのでイライラする気持ちは物凄くわかりますし、課題が多くオレ様論をぶちかます息子に怒りを覚えます。

ただ、アンガーマネジメントを知らなかった以前とアンガーマネジメントに取り組んでいる今は、コアビリーフを知り、怒りを客観視できるようになり、一層感情マネジメントができるようになりました。それは、気持ちの折り合いがつけやすくなったことや、いつまでもイライラしなくなったこと、なかなか話の通じない息子ですが、コミュニケーションを積極的に取る時間を作るようになったことで、相互理解に繋がったのではないかと感じます。

アンガーマネジメントを身につけていく上で重要なのは、

  • 最初の6秒。
  • 自身がどのようなコアビリーフに持っているのかを知る。
  • 私たちを怒らせるものの“正体”を知る(図2)。
  • 課題の修正/行動の修正(図1)。

です。

  • コアビリーフを知るためには、怒りを感じた時にアンガーログという記録を取っていきます(図3)。
  • アンガーログを記録する時に、イライラ/怒りの点数を一緒に計りましょう(スケールテクニック)(図4)。

面倒なことだと思いますか?では、あなたはどのようになりたいのかを想像してみてください。

“怒りに任せて行動して失敗したくない”、“売り言葉に買い言葉で人間関係を悪くしたくない”、“自分の意見や考えに対し反対意見があっても、感情的にならず冷静に対処できるようになりたい”、“ぶちギレた後に自己嫌悪に陥ったり後悔したくない”、大体このような感じではないでしょうか。

怒りを感じた時の自分を、“紙に書く”ことで、感情を客観的に認識するのが目的なので、最初のうちは図3のようなアンガーログを付けていくことが必要です。

私は“パートナーを大切にしたい、無駄な強い怒りで心を荒ませたくない、感情的なやり取りで子供の心を傷つけたくない”が最初のモチベーションでした。すぐに記録できるように小さなメモ帳を持ち歩き、すぐに書くことがコツです。スマホ使用に問題がない場所なら、スマホ記録でも構いません。

わかりやすく図を書きましたが、必要な項目は

  • 日時
  • 出来事(怒りを感じた状況を簡単に)
  • 思ったこと(その状況をどう思ったか)
  • 感情(その時にどのような感情を持ったか)
  • 感情の強さ
  • 行動(自分がどんな行動を取ったのか)
  • 結果(あなたの行動の結果、どのような結果になったか)
  • 違う考え方(他の視点から考えることはできなかったのかを書く)

です。

「いちいち書き出すなんて面倒くさい」「そんなことしなくたって自分はアンガーマネジメントできる」「怒っても周りに迷惑なんかかけないし(無人島でもなければ誰かを不快にしているものなので、自分を客観視できていないただの勘違い)」「自分を怒らせるほうが悪い(オレ様何様殿様気質でスペシャル身勝手ですね)」などと思う人は、途中で放り出す可能性が高いので、アンガーマネジメントには不向きかもしれません。そういう人は、

ハッキリ言います、やるだけ無駄です。

誰でも簡単に身につけられるアンガーマネジメントですが、多少の面倒くささは伴います。何かを身につける、覚えて応用していくにはそれなりの【努力】をしてきたことを思い出してください。

何度もおはじきを数えて数を覚え、学校で漢字小テストのためにノートにひたすら漢字を書き、九九はお風呂でのぼせるほど繰り返し、語呂合わせで歴史年表を覚えてきませんでしたか?資格試験のために参考書に線を引き、ノートで問題を解きませんでしたか?仕事も覚えるまでは【多少の面倒くささと努力(あるいは忍耐)】を伴ったはずです。何かを身につけることは口で言うほど簡単なことではありません。

アンガーマネジメント自体は簡単です。ただ、身につけるまでには今まで気にも留めなかったことに目を向けたり、意識し考えていくステップがあるので面倒に感じます。企業で働いていれば、多かれ少なかれ部下なり後輩は必ずいると思います。彼らとの相互理解を短時間で深める、あるいは信頼関係を短時間で築いていく【スキル】である、と考えたらどうでしょう。アンガーマネジメントも仕事の一部となれば話は違ってくるのではないでしょうか。

他者を変えることは困難です。でも、自分自身の認識をほんの少し変えるだけで、あなたに対する周りの見方や評価、あなたへの接し方にも変化が表れます。

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アンガーマネジメント【4】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

適切な感情コントロールやコミュニケーションスキル(アンガーマネジメント、アサーション)を身につけることは、相互理解が深まるだけでなく、健全なコミュニケーションが社内の風通しを良くし、モチベーションアップや生産性にも関係してきます。

わかってはいるけど、どう手をつけたらいいのかわからない、まず役員から取り組んでみたい、もっと社員皆に知ってもらいたい、よりパーソナルに取り組みたい・・・など、さまざまな理由でいろいろな企業や個人からの要望や相談があり、カウセリングだけではなく研修会、スキルトレーニングの機会も増えてきました。

アンガーマネジメントは、何より“あなた自身”のメンタルヘルスを守り、ストレスになりやすい人間関係の根元改善に役立ちます。

本を読んで「そうか、わかった」、一度だけの研修会で「できるできる」と思っていても、実際は一人で努力をしてもフィードバックが上手くいかず、途中で「面倒くさい」「無理無理、できない」と放り出してしまう人も多いので、研修会だけではなく個人個人がどう取り組んでいるのかをフィードバックしていくことが有効です。

怒りの種類には問題となる4つの怒りがあります。

  • 強度が強い➡︎わずかな出来事でも激昂する、強く怒り過ぎる(事柄に対し不必要な強さの怒り)。
  • 持続性がある➡︎ 思い出して怒る、根に持つ。
  • 頻度が高い➡︎カチンとくることが多く、しょっちゅうイライラする。
  • 攻撃性がある➡︎自分や他者を傷つけたりモノを壊す(モノに当たる)。

直近1週間で、このような怒りはありませんか?

自分の怒りを客観的に見るために視覚化してみましょう。

また、自分の怒りをどう思うかを他者に聞いて照らし合わせてみましょう。

氷山モデルで考えると、怒りは第二次感情(氷山の見えている上の部分)です。

下にある見えない表に現れない部分が第一次感情で、それらは“不安”、“苦しい”、“嫌悪”、“心配”、“寂しい”、“後悔”、“虚しい”、“辛い”などの一次感情です。

怒りを伝える時に、第二次感情でぶつけるのではなく、第一次感情で説明します。そのためには、自分の怒りにある隠された第一次感情を理解する必要があるのです。

怒りという強い衝動をコントロールするには最初の6秒がとても大切です。瞬間的に怒る“反射”は絶対にNGです。

最初の強い怒りが持続するのは長くても6秒と言われているので、この6秒を無事に(?)やり過ごすことができれば怒ってはいても瞬間的に反射せず、かなり冷静になります。

6からカウントダウンで数字を数えるでもよし、例えばリンゴやバナナを思い浮かべ、それを頭の中で数えても、池のアヒルでも、目の前のボールペンでも構いません。

まず6秒を意識してください。

怒り沸騰中の6秒は案外長く感じるものですが、この6秒が最初にトレーニングする要となる部分になります。

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アンガーマネジメント【3】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

モヤモヤやイライラ、怒りを生んでしまう背景には社会不安からくる焦燥感や不満はもちろんですが、“忙しさ”や“多様化する価値観”というものがあります。

多様化する価値観が悪いのではなく、価値観を認め合うことができないから生まれてしまうイライラと、多様化する価値観を擦り合わせる場面が増えることで生まれるイライラです。

【2】でもお話しましたが、立場や意見の違い(多様性)をお互いに認め合うことができず感情を適切にコントロールできないと、イライラや“怒り”を“個人のやりたいことを優先、押し通そうとする”ぶつかり合いの道具にしかできなくなります。

この価値観の多様化が進むと、自分“以外”の意見や立場がうまく通らなくなると思い、不機嫌な人達で溢れ返ることになってしまいます。

会社でも私生活でも“自分の思い通りにならない”“自分の思った通りの反応が返ってこない”“自分の都合を考えてくれない”と、「自分の、自分が」ばかりで、それが叶わないとすぐに不機嫌になり、イライラオーラを撒き散らし、言動に表す“お子ちゃま”はいませんか?

適切に怒りをコントロールできなければ、“扱いづらい人”“感情的になる面倒な人”“話し合いができない人”という、対人的マイナス評価にしか繋がらず、結果あなたに良いことは何一つありません。

怒りが生まれる3段階というものがあります。

アンガーマネジメント【1】で取り上げた例を思い出しながら考えてください。

<第一段階>
“出来事に遭遇する”:スマホ歩きをしていた人にぶつかられる。

<第二段階>
“出来事の意味づけをする”:同じ出来事でも、彼女にプロポーズしようとウキウキな時と、仕事でやらかしてしまった時ではイライラ度合いが違いましたよね。起こった出来事が同じでも自分の置かれた状況が違えば、まったく違う感情が生まれることがおわかりいただけたはずです。

<第三段階>
怒りの感情が発生する

第一段階の“スマホ歩きでぶつかられた”だけの“出来事だけ”では、あなたを怒らせることはできません。

起こった出来事に対し、怒りの感情が生まれるかどうかは、第二段階の【意味づけ】があり、その結果、第三段階の【怒りの発生】へと繋がっていくのです。

アンガーマネジメントでは、この【意味づけ】の部分に意識的に目を向けることで、怒りの感情をコントロールしていくテクニックを学びます。

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アンガーマネジメント【番外編】

メンタル・イデア・ラボのスミです。本城に代わり、シリーズ途中ではありますが、番外編として今回は私が書こうと思います。

私は本城のような専門家ではないためアンガーマネジメントは語れませんが、前回本城が書いた『〜べき』思考を、リアルに体験した時を綴ることで、『〜べき』思考を受けた側の気持ちを書こうと思います。

リアルの場、つまり会社でのミーティングや会議の場のことです。私がまだ広告制作会社の社員だった時のことを思い出しながら綴ろうと思います。

広告制作は簡単に言えば、クライアント企業からの依頼を受け、クライアントの希望を聞きながらコンセプトやデザイン、コピーなど表現を考える仕事です。私はプロデューサーで制作一切を取り仕切る立場でした。スタッフは同僚に留まらず、外部のフリーランスのスタッフ(デザイナーやカメラマンなど)も起用し、クライアントの窓口となって、制作コンセプトを企画立案し、それを具体化していく仕事を担当していました。

まず企画会議があり、制作会議があります。そこで外部スタッフを交えながら方向性を決めていくのですが、その場でしばしば『〜べき』思考に遭遇します。

大体において議論が白熱してくると『〜べき』思考が頻発します。もちろん言っている側は相手を言い負かすつもりで言っているのではありません。飽くまでも、その人が考える最適なコンセプトや表現方法を主張しているのです。それはとても貴重で有り難いことですが、他の人の意見を聞き入れない姿勢が垣間見えると、いくら優秀であっても、そのスタッフとは仕事のやりにくさを感じ、活発が失われた雰囲気に包まれます。

つまり、『〜べき』思考で自分の考えが一番良いという空気を前面に出されてしまうと、

周囲にコミュニケーションを取りづらい雰囲気を醸し出す

傾向があります。その人にヘンに気を遣ってしまうあまり、その人の意向が強く働くことになりかねません。もちろんスタッフが納得しての話ならば問題は顕在化しませんが、そうでない場合は誰のために仕事をしているのか混乱し、どこかで不満が表出します。

コミュニケーションが取りづらくなることは、仕事を遂行していく上でリスクです。クライアントの意向が最優先なのに、違う方向へ向かってしまうリスクがあるからです。広告制作には変更や修正も当たり前です。一度決まってもクライアントから修正指示が飛んできます。その時に『〜べき』思考の強いスタッフに伝えることに憂鬱感を覚えます。これもリスクです。伝える側に無用なストレスを抱えさせることになるからです。それが蓄積すればどうなるか、モチベーションが下がり、いい仕事が出来なくなります。最悪の場合、退職してしまうかもしれません。

『〜べき』思考が強いと、少なくとも周囲に良い影響は決して与えないと言えます。現に私もうんざりした記憶があります。なるべくあの人とは一緒に仕事はしたくないな、と思ったものです。仕事ができるできない以前に、コミュニケーションを取りやすいかどうかが、やはり重要だと痛感しました。

それは広告制作という仕事に留まらず、広くどんな仕事にも普遍的に言えることではないでしょうか。入社試験もスキルや可能性、求める人材像かどうか、即戦力になるかどうかも重要なファクターではありますが、この人と一緒に仕事をしてみたい、と採用担当者に感じてもらうかがカギのような気がします。

映画『釣りバカ日誌』のハマちゃんは、仕事ができるできないはともかく、コミュニケーションスキルが物を言うという意味では象徴的なキャラクターではないでしょうか。

経験則から言うと、仕事にストイックな人ほど『〜べき』思考の人が多い、というのが私の印象です。仕事に対する自分にストイックなら素晴らしい姿勢ですが、その姿勢を他の人に求めたり、相手の意見や考えを否定する言動になってしまうと、いわゆる“人望”を失うことになりかねません。人望を失えば必然的に出世できない、下手をすれば今の時代、早期希望退職という美名の元、退職勧告を受けるかもしれません。仕事にストイックであればあるほど、相手の意見や考えを尊重することが本当のストイックというものではないかと思うのです。

『〜べき』と言う時は、普遍的な規範や道徳を言う時、あるいは人の背中を押す時に使うことが適当だろうと思います。例えば、猛暑には水分は摂る“べき”、せっかくここまで頑張ってきたのだから結果がどうあれ挑戦してみる“べき”、今時期なら入学試験がそうかもしれませんね。このプレゼンは絶対取る“べき”、など人を応援する時の“べき”は、その人に勇気を与えることがあるかもしれません。

多様な考え方がある世の中で、しかもダイバーシティやインクルージョンという価値観がこれからの時代の世界的潮流だと考えると、“一方的”というニュアンスのある『〜べき』思考は、自分自身を貶める可能性を孕んだリスキーな思考だと言えなくもない反面、その分シチュエーションやタイミングによっては、とても力強い応援思考でもあるかもしれませんね。

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アンガーマネジメント【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

インターネットや雑誌、テレビでもアンガーマネジメント、アンガーコントロールという言葉を聞くようになりました。

本来、アメリカのエグゼクティブがマイナスになりやすい感情に冷静に対処できるように考えられたプログラムですが、トレーニングで誰もが身につけられる技術です。

人間関係を円滑にする上でアサーション同様、社会人の必須スキルではないかと考えています。特に雇用する立場の経営層、幹部の人には必須と考えます。

キレやすい思春期の子供たちを相手に息子が通う公立中学校では、人間関係教育で大切なアサーションやアンガーマネジメントを取り入れており、一定の効果は上がっているようです。残念ながら、発達障害のある息子はストレス耐性も低く衝動性もあるので、感情マネジメントはなかなか上手くいきませんが・・・。

怒りを感情的にぶつけて言い合いをしても解決に繋がることは少ないもので、自分自身はもちろん相手にもイライラと嫌な感情だけを残し、何より人間関係に決定的なヒビを入れてしまうかもしれません。

“怒り”の感情自体が悪いわけではありません。『適切な怒り』は相互理解に繋がる場合もありますし、怒りがモチベーションとなり、やる気に結びつくこともあるからです。例えば新しい事業のキッカケが『怒り』ということがあります。ある問題にただ文句や不満を言うことを超え、その不満などを解決する方向に怒りのエネルギーを転嫁させ、新しい事業を立ち上げる、といった具合です。そのような経験がある経営者もいるのではないでしょうか。

では、『適切に怒る』とはどういうことでしょうか?

その前に怒りという感情が生まれる仕組みについて理解しましょう。怒りに仕組みがあることにちょっとした驚きを持つ人もいるかもしれませんね。

怒りは不快感情に分類されるので、どんなに怒りっぽい人でも怒るのが好きな人はまずいないと思います。他者に向ける怒りの多くは、自分も含め誰もハッピーにはなりませんから、マイナスになりやすい感情と言えます。怒りを感じるような状況でも、自分のその時の状況で怒りは怒りでも、その度合いが変わります。『虫の居所が悪い』という諺もあるぐらいです。

次のような時の例を挙げます。

  • 大好きな人にプロポーズされ、嬉しくてたまらないウキウキな時。
  • 大きな商談をまとめた手腕が社内で評価され昇進が決まった時。
  • ビッグプロジェクトのプレゼンで他社に競り勝った時。
  • 念願叶って第一志望校に合格した、あるいは第一希望の企業に内定をもらった時。

そんな時に、前から歩きスマホをしてきた人にぶつかられたとしましょう。歩きスマホで前方不注意、相手に落ち度があってぶつかられたのですから、多少ムッとするのは当たり前です。

では、あなたの状況が、

  • 指輪も準備してプロポーズしようと待ち合わせ場所に向かっている途中、恋人が他の人と手を繋ぎ親密そうに歩いている場面を見た。
  • 自分が頑張って準備をし臨んだ商談がうまくいった。なのに何故か同僚の手柄になってしまい、まったく評価されなかった。
  • 第一志望どころか、行きたくもないけど仕方なく受けた滑り止めの学校も全部不合格だった。あるいは、どんなに就職活動しても内定がもらえない、採用されない。
  • プレゼンは実は茶番で、裏の政治力で既に他社に決まっていたことを知った。

こうした状況で同じように歩きスマホの人にぶつかられたら、上手くいった時と怒りの度合いはまったく同じでしょうか。

同じ状況なのに、感情や怒りの度合いは違いますよね(ムッとする程度は怒りではなく、“不快だな”くらいではないでしょうか)。置かれた状況が違えば、同じ出来事に遭遇してもまったく違う感情(あるいは度合い)を持つことにお気付きいただけたと思います。

さらに考えてみると、

出来事そのものはあなたを怒らせることはできない、

にも気付けませんか?例を思い出してください。歩きスマホでぶつかられた時・・・。好ましい状況に自分が置かれている時と、不快不愉快な状況に自分が置かれている時では、自分の反応が違ったはずです。

ここまででわかった人もいるかもしれませんが・・・

あなたを怒らせているものの正体は、実はあなた自身

だとも言えるのです。

次回から、何故イライラや怒りが生まれてしまうのか、そもそも怒りとは何か、怒りが生まれるステップについてお話していこうと思います。

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“拗らせ系自称HSP”についてモヤる私が感じていること。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

インターネットに溢れ返るHSP自己診断、やってみた人もいるのではないでしょうか。

※HSP:Highly Sensitive Personの略。高度な感覚・感受性を『気質』として持つとされる人。

今回はHSPについてですが、HSPはHSPでも“拗らせ系メンドクサイ”HSPについて書こうと思います。

HSP自己診断、あれだけの項目があるので、いくら大雑把と言われる私でも幾つか思い当たる項目はありました。よく当たると評判の占い師がバーナム効果を最大限活用しているように、一つも当てはまらない人はまずいないでしょう。

私は共感力も高く(だからと言って、人並み外れて優しいわけではありません)、雨上がりの澄んだ空気を五感で感じ、パートナーとは漂う沈丁花や金木犀の香りで季節の移り変わりや、降り始める前の雨の匂いや降り始めた土に染みる匂いについて語り、楽しみます。

でも、周りにイライラしている人や怒鳴っている人がいたり、臭いがキツくても「あらやだ、そんなに感情的に怒りを爆発させるならアンガーマネジメントやったほうがいいんじゃないの?」「クサイ。ヤダけど仕方ない。あっち行こ」と思うだけで特別ストレスを感じないので、雑と言われる非HSPのようです(笑)実際、人が叱られていても理不尽な理由で怒鳴られ、絡まれているのでなければ、まったく気になりません。

一つのものを見て、多くの情報を取り入れ深く処理する、ともありましたが・・・。

ひまわりを見て「ひまわりってどこでどう日照を認識して向きを変えるんだろう?」「そういえば、ひまわりの種はフィポナッチ数?あれ、何かの黄金比じゃなかったっけ?」「紫陽花は土壌pHで花の色が変わるけど、ひまわりは無関係なんだ」「ひまわりの種、美味しいよな〜、リス案外グルメ」「種のシマシマって植物の生存戦略的に意味あるのかな」くらいは私でも一瞬で深く考えます(どうでもいいことですが・笑)

HSPの概念自体はもちろん理解していますが、

発達障害のような“障害”ではなく、多くの精神科医同様、ただの【気質】

と捉えています。

“人一倍繊細”は“人一倍怒りっぽい”、“人一倍短気”、“人一倍心配性”、“人一倍飽きっぽい”などと同じ、気質的なもの

という考えです。

実際、ASD孤立型のパートナーは、繊細で感性豊かで感受性も強く、言葉や文字での表現は秀逸で、感動ポイントは違いますがとても感動しやすい面も持ち合わせています。そしてHSPの特徴として挙げられる、人混みやうるさい場所が苦手だったり(感覚過敏)、一度に幾つものことを並行しておこなうことは苦手ですし、周りから休みなく多くの情報を受け取り処理する脳は人一倍疲れやすいので、脳を休めるために独りになり、自分のペースで静かに過ごす時間も絶対に必要です。

またパートナーは、痛みや体のわずかな変化にはとても敏感ですし、認知スタイルの違いから傷つきやすい心の持ち主で、感情の折り合いをつけることに時間がかかるので不器用なほうです。とても人見知りで、初めての人と接する場面は凄まじく疲れるそうです。見た目がそうでなくても、他者と信頼関係を築くのに、もの凄く時間がかかりますし(私は経験者です)、時間をかけて注意深く丁寧且つ論理的に物事を考えるので、とても慎重です。

繊細でさまざまな敏感さを持っていても、パートナーはHSPではありません。

HSPとは違い、譲れないこだわりや共感力の弱さがあるのは事実ですが、前記の繊細さや敏感さ、疲れやすさやストレスの受け方はASD(あるいは他の発達障害)の人が大なり小なり持ち合わせている大きな特徴でもあります。

今現在HSPは明確な診断基準がなく、当然ガイドラインもないため、クリニックを受診しても“HSP”と診断されることはありません。

インターネットの自己診断で自認すればHSPであるようです。つまり『言った者勝ち』『あくまでも自称』ということになります。

「えっ!?あなたがHSPですか!?」と意外と思うような芸能人もHSPだと告白していますね。5人に1人がHSPと言われているそうです。これを「案外いるんだな」と捉えるか「5人に4人は違うわけね」と捉えるかはその人次第です。ちなみに私は後者です。

全員がそうとは思っていませんが、このHSP・・・いや、HSPを拗らせた“HSPを免罪符にする(無意識にでも)面倒くさい系自称HSP”とでも言いましょうか、これがかなり厄介な人になる可能性があるのです。どういうことかというと、下記のようなことが考えられます。

とても傷つきやすい 
→ だから傷付かないように言葉を選び、(私にとって)優しく穏やかに話してほしい。

●雰囲気(表情)や空気から先回りして人の感情を読み過ぎてストレスを感じやすい
→だから私の周りでは怒鳴り声や大きな声やキツイ言い方はやめて、穏やかな表情でいてほしい。

●先回りして物事を考えてしまう
→だから一度にいろんなことを言わないでほしい。

●驚きやすい
→だから大きな音を立てたり、いきなり驚かすようなことはやめてほしい。

●匂いにも敏感で気持ち悪くなったり頭が痛くなる
→だから香水や強い匂いの柔軟剤はやめてほしい・・・。

などなど、無言の過剰配慮を求めているように受け取られたり、思われてしまう危険があるからです。

確認もせず勝手に相手の気持ちを先回りして考えたり、感情を決めつけるのは危険なことで、

それでいちいち落ち込まれたり、ムッとされると“とても面倒な人”になってしまいます。空気(あるいは顔色)を読むことは悪いことではありませんし、役立つ場面も多いと思います。でも、空気(あるいは顔色)を読み過ぎてヘロヘロに疲れてしまったり、ムッとして能面のような顔になって(本人自覚なし)、勝手に決めつけた独りよがりな感情でケンケンしたつっけんどん気味な対応になるのでは、結局自分も相手も凄まじく疲弊させるストレスフルな人間関係しか築けなくなります。

「気にし過ぎ」と言われること自体「気にし過ぎな私が悪いんだろうか?」と被害的に受け取り、「気になるんだから仕方ないじゃない」と傷つくそうですが、そうではなく「今私はこの人の気持ちを決めつけて考えていないかな?聞いて確かめてないんだから本当はどう思ってるかわからないよな、ただ私には聞けないなぁ、だったら確かめようはないんだから、私はこの人の気持ちは本当はわからないんだ、機嫌悪い(ように見える)のは私とは違う問題」と諦めましょう。

確認もしていないのに、他者の気持ちや感情を勝手に深読みして決めつけられるのは・・・それがプライベートの時間であれば、私ならコミュニケーションコストがかかり過ぎるとても面倒な人と感じます。

HSPと発達障害は併発する、という見方もあるようですが、それについても私は懐疑的です。HSPにも発達障害(グレー含む)の人が持つ繊細さや敏感さに重複する特徴が多く見られますが、身近にASD孤立型のパートナー、発達障害重複で取り扱いが面倒な息子がいて、その困り感を熟知しているだけにHSPが発達障害と重複するという考えには違和感を覚えます。

発達障害特性から苦手なことや困り感があれば、医師の診断書や障害者手帳を根拠に、学校や会社である程度の合理的配慮をお願いすることも可能ですが、それが単なる“気質”だと客観的根拠となるものがないため難しいものがあります。

もし、単なる“気質”というHSPの人への配慮が認められるなら、例えば「私は人一倍怒りっぽいので、短気な私を怒らせないような言い方をしてください」や「私は人一倍飽きっぽいので、やる気が起きる飽きさせない仕事をさせてください」も気質という点で、まかり通ることになり収拾がつかなくなります。現実にそれはあり得ませんよね。

自分が短気で怒りっぽいと自覚があるなら、それはその人自身が解決しなくてはいけない“課題”ですし、飽きっぽいなら、自分で見方を変えたり取り組みを考えるという“その人自身の課題”です。そういうことに周囲や組織に配慮を求めようと思わないのが一般的ではないでしょうか。

どちらにも言えることですが、まずは“短気で怒りっぽい”“飽きっぽい”を自覚し、そんな自分を受け止めることです。“短気”はなかなか直すことが難しくても、“怒りっぽい”はアンガーマネジメントを身につけることで自分自身がラクになり、行動変容に繋がることで人間関係の軋轢を生みにくくなります。

よく“あなたはあなたのままでいい”と言いますが、それは適切でもあり不適切でもあります。

“あなたはあなたのままでいい”が、あなた自身をストレスフルに追い込み苦しめ、関わる人たちを疲れさせているようなら、“あなたのままでいい”なんて言えませんから。

イライラしやすい、怒りの沸点が低く怒りを感じやすい。そこには自分に原因があり理由があります。

次回からシリーズでアンガーマネジメントについてお話しようと思います。

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