うつ病【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回の続きとなります。【2】ではサポートする側が心がけてもらいたいことについてお話しします。

大きく5点あります。早速見ていきます。

①まずは、焦らずゆっくり休養できる環境を整えましょう。

周りの人が焦ると本人にも焦りが出てしまうので、本人のペースを尊重してください。また、本人に焦りが見られたら上手くブレーキをかけて、無理をさせないことも大切です。

②休養できる環境とは、普段本人がやっている家事などを代行することも含まれます。

負担を減らす、と考えるとわかりやすいかもしれません。

③励まさない、無理に勧めないことも大事になります。

本人が望まないのに「気晴らしに」と連れ出そうとしてみたり(「気分が良ければ散歩に行ってみる?」程度は良いと思いますが、「気晴らしに映画に行こうよ」という誘い方は感心しません。)気分が乗らないことをさせようとするのは止めましょう。

④踏み込み過ぎず適度な距離感で精神的にサポートしましょう。

話したくないのに「話せばラクになるから」と無理に話させないようにし、「話したいことがあればいつでも聴くから遠慮なく言ってね」と声がけをして見守ってください。

⑤鬱状態にあると「死にたい」という言葉が出る時もあります。

「そんなこと言ってはダメだ」「死んじゃいけない」「死んでも解決しないよ」などと否定するのではなく、本人にとって“死ぬほど辛い”気持ちに寄り添い、「そっかぁ、死にたくなるくらい辛いんだね」と否定も肯定もせず、そのまま受け取ってください。④のように「辛くてたまらない時に吐き出せばラクになることもあるから、いつでも聴くからね」と伝えてください。あまりしつこく伝えると、かなり負担になるのでサラッと伝えておけばいいと思います。

鬱状態の治療は長期に渡ります。サポートする側が参ってしまい一緒に煮詰まってしまわないよう、それこそ気晴らしや自分の時間をしっかり確保することも大切なことだと考えています。

自分に余裕がまったくない時は、支える側もしんどくなってしまいますから、共倒れにならないよう、フラットな気持ちを持てるよう心がけましょう。

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うつ 病【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

お盆休みが終わり、8月も後半になりました。お盆休みは生憎台風が近畿地方に上陸し新幹線が大混乱となりました。

さて、お盆明けのコラムは2回にわたって『うつ病』について書いていこうと思います。ポピュラーと言っては言葉が悪いですが、今や日常的によく聞く言葉ではないでしょうか。

通勤時など、よく利用する路線がしばしば遅延します。その理由の一つが人身事故と言われる“飛び込み自殺”です。電車に飛び込むという手段ではなくても、悲しいことに私の周りでも何人もの友人が大切な人を自殺で亡くしています。

今回は自殺の引き金として一番多いとされる『鬱(うつ)』について、その原因や症状についてお話ししたいと思います。

うつ病の原因は人の数だけありますが、決して心の弱さから発症する病気ではない、ということをまず知っておいてほしいと思います。根性論で「心が弱いから」「気にしなければ大丈夫」「気合で乗り切れる」などとのたまう人がいますが・・・ぜひ、鬱になってどれだけ辛いのかを、じっくり味わった後で同じことを言ってほしいものです。

気合で乗り切れたのだとすると、それは鬱ではありません。日常的によくあるただの気分の落ち込みです。寝て美味しいものを食べたら復活する程度の気持ちの疲れだった、ということです。

話は戻りますが、うつ病は本人の物事に対する受け止め方や周りの環境、ストレスなど複数の要因が複雑に絡み合って引き起こされます。

急激な環境変化(就職/転職/家族の不幸など)や強いストレス(望まない人事/いじめ/パワハラ・セクハラ/持病の悪化など)に直面して心身が疲れている状態が持続すると発症のトリガーになります。意外かもしれませんが、昇進や結婚などポジティブなはずの出来事がきっかけで発症することもあります。これは、嬉しく好ましい出来事も“ストレス”であることの表れです。

うつ病はさまざまな症状がメンタルや身体に表れます。

心の不調としては、

  • 憂鬱な気持ち。
  • イライラする。
  • 焦燥感がある。
  • やる気がない。
  • 今まで楽しかったことも楽しく感じない。
  • 感情が平坦になった気がする。
  • ネガティブな考えが繰り返し浮かび抜け出せない。
  • 自分を責める。
  • 自殺を何度も考えてしまう。
  • 無気力になる。

身体の不調としては、

  • 眠れない。
  • 眠った気がしない。
  • 背中や肩が痛む。
  • 頭痛や腹痛。
  • 食欲減退。
  • 性欲減退。
  • 体のダルさや重さ。
  • 疲れやすい。
  • 体重減少。

などです。

鬱状態は心身の十分な休養や環境見直し、投薬などで時間の経過とともにアップダウンを繰り返しながら落ち着いていくケースが多いので、焦りや不安を上手くコントロールしながら気長に治療を続けることが何より大切です。

また、このような状態の時には普段よりマイナス思考が強いので、大事な決断(就職/離職/結婚/離婚/転居など)は先送りし、落ち着いてから考えるようにしましょう。

治療は薬と認知行動療法を主軸におこなわれます。特に認知行動療法や対人関係療法は始めてすぐに満足する結果は表れないので、治療には時間がかかることを理解してほしいと思います。

鬱状態の時は本人が辛いのはもちろん、周りでサポートする人もなかなか大変です。次回はどのようなサポートをしていけばよいのかお話ししようと思います。

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組織のメンタルヘルスについて考える【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回から3回にわたり、組織のメンタルヘルスについてお話しします。

なぜ組織でのメンタルヘルス対策は必要なのでしょうか?

  • リスクマネジメント
  • 生産性
  • コンプライアンス

この3点になります。

鬱で離職者や自殺者などメンタル不調者が出ると、労災請求や民事訴訟に発展する可能性があります。これらは実際にコストが発生します。そして何より長年培ってきた企業あるいはブランドのイメージダウンに繋がり、本来の業務ではない部分での労力が必要になってきます。社会的信用の失墜も免れません。

メンタル不調者が出ることで個人はもちろん、その部署、あるいは企業全体の生産性が下がります。休職者や離職者が増えることで業務は滞り、そのしわ寄せは残っている従業員が負うことになります。当然不満が溜まると職場のムードは悪くなり、人間関係もギスギスしたものになりますし、オーバーワークや人間関係の悪化から次のメンタル不調者が出る可能性が高まり、さらに休職者や離職者を生むという悪循環に陥ります。これでは生産性が下がらないわけがありません。

ストレスがメンタルの不調を引き起こす一番大きな要因となりますが、残念ながらストレスがまったくない人はいません。生きている限り、大なり小なり付きまとうものと言って異を唱える人はいないと思います。

同じ出来事があってもストレス耐性には個人差があり、ソーシャルサポートのあるなしでもストレス反応の強さは変化します。また、その日その時の気分によってもストレス反応は変化する実にデリケートな変数がストレスです。

※参考コラム:アンガーマネジメント【1】

私たちは私生活や職場など外的影響によりストレス反応を起こします。緊張状態や嫌なことで動悸がしたり、胃が痛くなったり冷や汗をかいたことはありませんか?人によっては下痢もあるかもしれません。これがストレス反応です。

うつ病と一括りにされますが、ここで典型的なうつ病と近年目立つようになってきた新型うつ病について少し説明しようと思います。

典型的なうつ病は責任感が強く目標達成に努力を惜しまない真面目なタイプがなりやすいのですが、新型うつ病の場合、困難から逃避する性格の人がなりやすいと言われています。

より具体的には“元々あまり仕事熱心ではない”、“自立心や責任感に乏しい”、“役割から逃避しやすい”タイプで、自己愛が強く社会性が未熟、他責(他罰)傾向が強く過度な自己尊重、自己評価が高すぎる人に多く見られます。

また、一般的に典型的なうつ病の人は周りから勧められやっと受診、休養するのに対し、新型うつ病の人は積極的に医療機関を探して受診します。仕事を休むことに躊躇いがなく、すぐに診断書を提出します。典型的なうつ病が自責に向かうのに対し、新型うつ病は他責的です。平日は倦怠感など身体症状に見舞われますが、休みになると元気に遊びに行く、これが特徴かもしれません。

組織にメンタルヘルスに戻ります。組織のメンタルヘルスにおいてのストレスとは、

プレッシャーや対応困難な事案にぶつかった時に生まれる感情的な反応

と位置付けます。

よく「上司(あるいは先輩・同僚)がストレスの元凶だ」というのを聞きます。上司、先輩、同僚の言動にムカつき、「許せない!」とイキり立った時にほとんどの人は「ストレスだ」と感じると思います。しかし実はこれは自身の「許せない!」という怒りの感情により自分が振り回されていること、そしてそれこそが【ストレス】の正体なのです。

小さなイライラ、モヤモヤ一つひとつでは大したストレスではないかもしれませんが、積み重なっていくとストレス反応が増え、メンタル不調に繋がっていきます。自分の中にある小さなイライラ、モヤモヤを書き出し視覚化し、一度整理してみるとよいと思います。

【2】では、個人のメンタル不調がどのように組織へ影響するのか?からスタートします。

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