代理ミュンヒハウゼン症候群【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

【1】に続き、代理ミュンヒハウゼン症候群についてお話しします。

私たち心理士が代理ミュンヒハウゼン症候群を疑う時に、特に気にすることがあります。

  • (子供が)医療機関で治療をしているにも関わらず、症状が改善しない。
  • (子供を)入院や一時保護など保護者から隔離すると症状が軽減、または良くなる。
  • (子供の)医療機関受診歴は多いのに、病気や怪我のはっきりした原因がわからないままである。
  • (子供の)症状軽減、悪化に不自然さがある。
  • (子供の)病状が良くなると喜ぶのではなく、不安定さや明らかな動揺や不安が見られる。

などです。

【1】でもお話ししましたが、代理ミュンヒハウゼン症候群は一見すると“病気(怪我をした)の子供を自ら犠牲にし献身的に看護する親”に映ります。

周りからは「いつも大変ね」「子供のために偉いわね」「頑張ってるお母さん」に見えるわけです。

その“頑張っているお母さん”を創作するために、健康な子供を作為的に病気にしたり不自然と思われない範囲で怪我をさせたりするのです。専門家が注意深く観察すればバレバレなのですが・・・。

海外では子供の日々の食事に少しずつ漂白剤を混ぜていた親や、かぶれるようにボディソープに薬剤を入れていた親、子供が怪我をするように自転車に細工をしていた例などがあります。にわかには信じられませんが、実際にあったことです。

明らかに虐待とは違うのは、決して我が子が邪魔だったり嫌いなわけではなく、優しい虐待とはまた違うのですが、子供は大好きで大事だったりすることです。

ただ、子供以上に自分(の感情や思い、行動)が大切で自分が大好きだったり、親自身の生育歴からアタッチメント不全やパーソナリティ障害などが関係し歪んだ認知を持っていることも多くあるように思います。

2019年のアメリカ映画【死ぬほどあなたを愛してる】では代理ミュンヒハウゼン症候群が描かれていますので、関心を持った人はご覧になってはいかがでしょうか。

<運営会社:Jiyuuku Inc.

代理ミュンヒハウゼン症候群【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

子供の虐待が報告される中で、【代理ミュンヒハウゼン症候群】という言葉が聞かれるようになってきました。

わかりやすくいうと、代理ミュンヒハウゼン症候群とは“子供を故意に病気にしたり怪我をさせ、甲斐甲斐しく世話(看護看病)する自分を装い、同情(注目)を引こうとする虚偽性障害”という精神疾患の一種です。

今回はこの代理ミュンヒハウゼン症候群について2回に分けて書こうと思います。

この『代理』の部分ですが、なぜ代理と言うのでしょうか?

詐病のように自分が病気や怪我のフリをするのではなく、多くは乳幼児の我が子に“病気である自分(詐病)の役代わり”をさせるので“自分の代理”という意味で使われます。そのほとんどが母親によるものです。

わざわざ我が子を病気にしたり怪我をさせる親などいるのか?と思いますよね。

正常な精神状態の親ならあり得ないことですが、無意識に自らが病気の子供を献身的に世話する母親というアイデンティティを求めていたり、歪んだ承認欲求などが関係し代理ミュンヒハウゼン症候群として表れます。

健康な我が子をわざわざ傷つけ不健康な状態を作り出す、これが代理ミュンヒハウゼン症候群です。

以前、入院している子供の尿に自分の血液を混ぜた母親がいました。当然病院では検査をし、原因を突き止めようとしますし治療をおこないます。しかし、誰もが「親がまさかそんなことをするわけがない」というバイアスがあり、なかなか見抜けなかったのです。

「大切な子供をわざわざ傷つける親がいるわけがない」このバイアスが代理ミュンヒハウゼン症候群を見抜きづらくしているともいえます。

実際、代理ミュンヒハウゼン症候群の母親は献身的に世話をするケースが多く、“病気の子供を必死に支える健気な母親”像に映ります。これが落とし穴になります。

自分から声を上げられる年齢にない乳幼児は生活の100%を親(主に母親)に依存しています。

ミルクをわざわざ不衛生なお湯で溶き、下痢をさせる。

沐浴時にわざと強い洗剤を使い、皮膚を荒れさせる。

以上のような報告が実際にあります。明らかに虐待ですし、実際はもっと重篤な状態に陥ってしまった子供もいます。

次回は代理ミュンヒハウゼン症候群が疑われる場合のポイントからお話しします。

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