見過ごされる発達障害:前篇

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

母親業を14年やっているので子供の学校生活も10年近くになります。

小学6年から通級に通っていることで担任やスクールカウンセラーとのやり取りもあり、通級の授業参観や保護者会にも出向くので、他の保護者より学校に行く機会は多いかもしれません。

観察していると、クラスに3〜4人は発達グレーorバッチリ発達障害だとわかるお子さんがいるように見えます。「わかりやすい子が随分増えたな」という印象です。実際は学校不適応で不登校になっているお子さんが中学校では格段に増えているので、あくまで見てわかる範囲の話ですが。

発達障害者支援法が制定されたことで、今は特別支援体制が“言葉の学級”、“情緒級(通級)”、“特別支援級”などと学校によって名称は違うものの、校内か近郊の学校に設置されています。その結果、以前より個別支援に積極的に取り組んでいるのがわかります。

これは小学校ですが、授業中に隣の子とおしゃべりがやめられない子、机の上の物をガサガサと落ち着きなく動かしている子、まったく授業についていけておらず教科書も開いていない子、教師の質問が終わらないうちから挙手もせず話し始める子、外をボーッと夢見心地に眺めている子、キョロキョロしてまったく集中できない子、消しゴムを小さくちぎったり紙を丸めて他の子に投げてみたりする子、挙句に教室から出て行ってしまう子などがいます。

そして授業参観時、後ろでおしゃべりを止められず、担任や副担任に注意される母親や我が子の代わりに質問に答えてしまう親・・・。

保護者会では我が子がどんな子なのかを添えて挨拶と一緒に自己紹介することが多いのですが、「やんちゃで落ち着きがなく元気だけが取り柄です!」と話す母親自身が、おしゃべりに夢中で担任にも何度も注意を受けた人で、保護者会でも担任がまだ話をしている途中にしょっちゅう話を被せ、「お母さん、最後まで聞いてください、その後質問を受け付けますから」と注意を受ける・・・という場面がありました。それを見て「親子で(発達障害の)何か持ってるんだろうな」と思ったり。

親にグレーや何らかの発達障害があったり「子供はこんなものだ」というアンコンシャスバイアスが強く働けば子供の言動の違和感に気付かない場合もあるでしょう。“人の話が終わらないのに話を被せてくる”“急に話に横入りしてくる”はADHDの衝動性からよく見られる特徴です。

息子は動作の多動や衝動性からくる他害はまったくありませんが、感情コントロールの下手さ、シングルタスク、集中と不注意に課題があり、後先考えられないその場の衝動性で話を被せてくること、整理整頓ができず部屋もリュックも頭の中も散らかるタイプです。

教室から飛び出て行き授業中断、副担任が追いかける、おしゃべりが止められないなどは、学級崩壊に繋がる問題でやんちゃや落ち着きがないというレベルではないと思っています。

「子供は落ち着きなく当たり前」「子供はやんちゃなくらいがちょうどいい」と軽く考えている保護者がいる一方で、些細なやり取りから「うちの子を障害者扱いするのか!」と逆ギレする保護者もいるそうで、教師の経験値から「本人も困っているんじゃないか」と思っても迂闊に「一度発達相談を・・・」とは口が裂けても言えないそうです。これだけ“何らかの困り感”を持つお子さんが増えている中で教師の皆さんの苦労が垣間見えます。

デリケートな問題ではあるのですが、“その子に合った適切な支援”を受けることは、何より子供のためです。

「うちの子、ちょっとやんちゃなだけ!ちょっとおふざけが過ぎるだけ!おっちょこちょいなだけ、それがこの子の個性!」と思いたいのは親の勝手ですが、困り感を持ちながら学校生活を送っている子供にとって、それは親のエゴ以外の何物でもありません。体調不良であれば子供の様子や異変から早期発見し、親が率先して医療機関に連れて行くことはできますが、発達障害の場合、病気ではないのでその違和感はわかりづらく、それ故、親次第であり親の対応によって、その子の将来に多大な影響を及ぼします。親に発達障害の知識があるか、知識がなくても教師や周囲の言葉に真摯に耳を傾ける気持ちさえあれば、その子に適切な支援を受けさせることができるかもしれません。

学校への必死の働きかけで息子は小学6年生になってようやく週1回の通級(支援級)に通えるようになりましたが、通級での丁寧な個別支援がなければ今頃は今より本人の生きづらさは大きくなり、友達からも遠巻きにされクラスで孤立し不登校になっていたと思います。

“教室から飛び出して行く子”、“上の空で集中できない子”、“忘れ物ばかりで机の中がカオスな子”など、周りから見ると問題があるように見えます。問題がまったくないわけではありませんが、

問題となるのはその子にはその子の『なぜ自分は他の子のようにできないんだろう』という漠然とした困り感があったり、褒められるよりも注意されたり叱られることが多いので、『自分はダメなんだ』と自己肯定感が低くなってしまう“見えない苦しみ”があることです。

そんな子供の見えない苦しみや困り感に寄り添いながら、今のその子の持つ課題に一緒に取り組んでいってくれるのが特別支援(個別支援)です。育てにくい子を持つ親の折れそうな心にも寄り添い、子育てのエンドレスな愚痴も丁寧に聞いてくれるという“オマケ”付きです。

今月15日にこんなニュースがありました。福岡で実際に起きたことで、考えさせられました。西日本新聞記事

後篇ではどう対処していくかなどを書いていきたいと思います。

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発達障害【ADHD】の困り感〜子供編〜

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

何度かシリーズでもお話している【発達障害】ですが、今回はADHDについて、主に学校生活で表れる困り感についてお話したいと思います。

足が不自由で引き摺りがある、目が見えないから白杖を持つ、などいわゆる目で見てわかる肢体不自由の人に比べ、パッと見てすぐにわからないのが発達障害です。

それゆえ、多動で立ち歩きがあり教室から脱走する、片付けられない、癇癪を起こすなどわかりやすい行動が表れていなければ、本人はもちろん、保護者や学校側もわかりづらいことが多く、中には強引に「何がなんでも全部個性」と言い張る保護者もいます。脳の偏りもまた個性と言えなくもないのでそれはいいのですが、いずれ本人が困り感を自覚した時に苦しむのは子供自身です。

まず以前コラムにも書いたことをおさらいします。ADHDの主な特徴は、

【多動性】【不注意】【衝動性】

の3つです。

●多動性:落ち着きがなく、じっとしていることができない。

●不注意:自分の興味関心がない物事に集中できず、忘れやすい。

●衝動性:唐突に思いつきの行動をとる、順番待ちが苦手。

などですが、これらの特徴とその程度は個人差が大きく、環境や関わりを持つ相手によっても差が見られるので、家庭と学校では様子が異なることもあります。

また、ADHD、ASDに共通する特性や行動もあるので、次に示す行動があるからといってADHDとは限りませんし、ADHDとASDを重複しているケースも多いことを先にお断りしておきます。

ADHDの行動には“気付かれやすい行動”と“気付かれにくい行動”があります。

<気付かれやすい行動>
【多動性】【衝動性】からくる行動で、友人関係のトラブルが中心、周囲を巻き込み大きな問題へ発展することがあるので気付かれやすい。

<気付かれにくい行動>
【不注意】からくる行動で、忘れ物が多く成績不振など、本人や保護者だけが困ることが多く、周囲に迷惑をかけることが比較的少ないため見過ごされやすい。

この、<気付かれやすい行動><気付かれにくい行動>が学校生活でどのような形で見受けられるのかを具体的に見てみましょう。

=気付かれやすいADHDの行動=

【多動性による行動例】

  • 席にじっと座っていられず、常にそわそわしている。
  • おしゃべりが止められない。
  • 意味もなく手足を動かす。
  • 静かにしていなければいけない場面で走り回ったり騒ぐ。
  • 集団行動ができない。

【衝動性による行動例】

  • 感情のコントロールができない。
  • 順番を持てず列に割り込む。
  • 些細なことで大声を出したり暴れる。
  • 勝手に話を始めたり、他の子への質問に答えてしまう。
  • 他の子の邪魔をしたり、ちょっかいを出してケンカになる。
  • 他の子の持ち物に勝手に触ったり、持って行ってしまいトラブルになる。

=気付かれにくいADHDの行動=

【不注意からくる行動例】

  • 学習用具などを机から落としやすい。
  • 興味関心が低いことは忘れてしまう。
  • 忘れ物が多い。
  • 字が汚い。
  • 机の中やランドセル、身の回りの整理整頓ができない。
  • 他の子より、よく怪我をする。
  • 教科により集中できない。
  • 文章を飛ばして読んだり、自分の思い込みで読む。
  • 指示の聞き漏らしがあるので行動が遅れる。
  • 好きな教科と嫌いな教科で意欲の差が激しい。
  • 課題や活動を順序立てておこなうことが困難。
  • テストで似た問題でも点数のバラつきが激しい。
  • 友達との約束を忘れたり約束が重複してしまう。
  • 話しかけても上の空に見える。

【その他の行動例】

  • 姿勢が崩れやすい。
  • 一人で遊んでいることが多い。
  • 友達に避けられている。
  • 日中眠そうにしている。
  • 後回しにするクセ(先送りグセ)がある。
  • 手先が極端に不器用。
  • 気持ちの切り替えがうまくいかない。
  • 知的な遅れはないのに成績が悪い。
  • 好きなことには時間をかけて取り組める。
  • 複雑な運動が苦手で、鉄棒や縄跳び、跳び箱などの上達に時間がかかる。

などがあります。

それでは不注意優勢(気付かれにくいADHDの行動)の場合、子供の学校生活ではさまざまな困り感がどのような場面で、どのように起こるのかを一日の時系列で具体的に見ていきます。

登校時:目にするいろいろなものに意識がいくため、集団の列から外れやすい、周りに注意を払わず歩くため、自転車や人と接触しがち、転びやすい。

朝会:遅刻が多い、眠そう、先生が来る前に他の子とトラブルを起こしている。

授業中:よく物を落とす、教科書や必要なものを頻繁に忘れる。座姿勢が悪い、関係ないおしゃべりが止められず注意される、指示を聞き漏らし行動が遅れ、周りの様子を見てから行動する、単純な計算は得意だがケアレスミスが多い、文章を読んで解く教科は苦手、板書に時間がかかる。

給食:おしゃべりが止められないかボーッとしていて時間内に食べ終わらない。

休み時間:休み時間が終わっても教室にいない、次の授業の準備ができていない。

体育や図工など身体を動かしたり作業する授業:説明を聞いていないため、怪我や失敗が度々起こる、計画を立てて作業ができないため最後まで終わらない、好きなことには集中して取り組むので時間がきても止められない。

掃除:掃除道具を振り回してふざけたり、いろんな場面で雑なので物を壊したりする。

友人関係:他者の話をよく聞いていないため、思いつきで関係ない話をしたり行動する、集団行動ができず孤立しがち、約束を忘れてトラブルになる。

不注意だけでも学校生活がかなり大変そうに見えます。3つの特徴(多動性・不注意・衝動性)をそれぞれの割合で併せ持っているケースがほとんどなので、年齢に沿って至るところでさまざまな困り感が表れてきます。また、行動の多動性は大人になると薄くなる傾向にありますが、行動に表れない見えない脳内での多動は残る人も多いようです。

本人に悪気はなく、気をつけよう、頑張ろうと思ってもできないことがあるのが“障害”で、他者との違いに気付き比較する年齢になった時に、困り感や生きづらさを本人が感じるようになります。

ちなみに、中学1年の息子が確定診断を受けたのは小学4年ですが、それまでは私の違和感や困り感はあっても本人の困り感はあまりなかったようで、息子本人が『何かいろいろうまくいかない』と気付いたのは小学5年、そこからさまざまな場面で学校生活に生きづらさを感じることが多くなったそうです。

このさまざまな場面に表れる行動特性は、人により表れ方も濃さも違い、また、視覚認知に問題を抱えるケースもあるため、対策の取り方も少しずつ変わってきます。

息子を例にとると、書字の苦手さや字のバランスの悪さは、不注意と同時に視知覚認知機能の“目と手の協応”と、眼球運動が大きく関わっており、わかりやすい不注意部分だけの対策を取っても、本人の困り感解決にあまり有効的ではありませんでした。

視知覚認知や眼球運動に問題があると、学習効果が思ったように表れず成績が振るわない・・・ということが起こります。視知覚認知や眼球運動とはどのようなもので、それにより何がわかるのかなどは、視覚認知でお話ししたいと思います。

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