バウンダリーとは?【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回の続きから、なぜバウンダリーを引けなくなってしまうのか、その原因と考えられるものがあります。

親が過保護、過干渉の場合、子供自身がやらなくてはいけないこと(できるようにならなくてはいけないこと)を先回りして親がやってしまうことで、子供は自分で考え行動し、成功体験を積む(もちろん失敗もある)ことができず自信が育まれません。

とても優しく面倒見がよいように見えて、実は子供の自主性や自立を阻む“優しい虐待”になってしまっているケースもあるのです。

また暴言暴力で抑圧し養育した場合、子供は自分のバウンダリーを引けなくなってしまいます。バウンダリーを引こうにも親がズカズカ入り込み抑圧し脅すので、怒鳴られ暴力を振るわれないために、自分の気持ちを殺し親の顔色伺い仮面を被るしかなく、アイデンティティーを築けないのです。

バウンダリーが築けないと、他者との心的距離の取り方がわかりません。親しくなれない、親しくなっても自分をさらけ出せない、他者に簡単に心に入り込まれる、極端に距離を置いてしまう、また反対に他者の心の領域に踏み込んでしまう、などが起きやすく、人間関係構築がとても難しく生きづらさを感じてしまいます。

アタッチメント不全があると上手にバウンダリーを引くことができないので、人間不信に陥りやすく大人になってから人間関係に悩む場面が増えます。

幼少期の家庭環境だけが原因ではありません。

ショックなことがあったり心的に痛手を負う出来事があると、傷つきたくないために無意識に心が防衛します。何度も同じように傷つき痛い思いをしたくないのは皆同じですが、この心の防衛が過剰になると他者と距離を置き過ぎたり心を開けず、自分らしさをさらけ出すことができなくなるのです。

生きていれば他者(親は一番近い他者)との関わりを避けられず、その中では傷つくことも傷つけてしまうこともあります。傷ついた経験が多いほど、傷つかないように自分の心を守ろうと必死に防衛し、バウンダリーの引き方がわからず人間関係に苦しむことに繋がっていくのです。

【3】ではバウンダリーを引くために、どのようなことを心掛ければよいのかについてお話ししようと思います。

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人間関係の距離感<後篇>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前篇に続き人間関係の距離感<後篇>、心理的パーソナル・スペースについてお話しようと思います。

物理的パーソナル・スペースはもちろんですが、それ以上に心理的パーソナル・スペースは人により、とても幅があります。

誰でも友好的で人見知りをしないように見える人でも、心理的パーソナル・スペースがとても広い人もいますし、人見知りで取っ付きにくく感じても、心理的パーソナル・スペースが狭い人もいます。

心理的パーソナル・スペースは誰にでもあるもので、その広い狭いは、自分との関係性によって距離を変化させるものと言われ、見た目だけではまったくわからないということを覚えておくとよいかもしれません。

本題に入る前に・・・。

このコラムでよく使う単語に【他者】という言葉があります。他人と他者、同じ意味ですが少しだけ受け取るニュアンスが違うと思います。

親子、兄弟姉妹、夫婦関係では日常的に“他人”という言い方はあまりしませんし、恋人同士で“他人”と言われると、よそよそしく感じてしまいます。“他人”という表現は、自分や自分と親しい人以外、というニュアンスを感じませんか?

一方“他者”は、自分以外すべての人なので、それこそどんなにおしどり夫婦でもピーナッツ親子でも、仲良しカップルでも“自分”以外は他者になります。

この“他人”と“他者”という表現の違いを頭の端に置きながら読んでみると、なぜ他者という言い方をするのかや、“他人”という言い方をした時に感じる違和感を見つけられるかもしれません。

多くのクライエントと話をし、関わってきた中で気付いたことがあります。それは、他者との距離の取り方には幾つかのタイプがあるようだ、ということです。その中で人間関係が拗れやすいタイプを4つに分けてみました。

①自分だけの都合で近づいたり離れたりする、気まぐれな<彗星タイプ>

②ふとした瞬間に(無意識的、意識的関係なく)他者の領域に踏み込む<地雷踏み抜きタイプ>

③近づかないのに遠い所から干渉してくる<マジックハンドタイプ>

④常に領域無視でガンガン踏み込んでくる<無神経タイプ>

自分の周りを思い浮かべながら、どれかに当てはまる人はいないか考えてみてください。

人間関係を上手に構築、持続していっている人を見ると、相手との間柄(関係性)、心的距離を考慮して意識的に『これは聞いちゃダメだ』『ここまで仲良くなったから聞いても(話しても)大丈夫だな』『仲良くなったけど、この話は話題にしないほうがいいかも』などを、人や場面に応じて上手く振り分けて話をしています。

心理的パーソナル・スペースは、仕事やその場でしか関わらない第三者、あまり親しくない他者に対しては広く、恋人やパートナー、親友など親密な他者に対しては狭い人が多いようです。

心理的パーソナル・スペースが広い人には傾向があります。

▶︎自分のペースを守りたい、他者に合わせるより自分のやり方を大切にしたい人。

▶︎人見知りで内向的な人や、元々一人の時間が好きな人。

▶︎自分に近づく危険から自分を守るため、トラブルになりそうな苦手なタイプとは、あまり関わらない人。

・・・なので、警戒心が強く、打ち解けるまでには時間がかかります。また、口出しされたり、自分のやり方を指摘されることが苦手で、集団行動が得意ではない人も多いようです。慎重で心配性、何事も納得がいくまで確認したいと考える、他者に急かされるのが苦手な人も心理的パーソナル・スペースを広く取る傾向があります。

警戒心が強く、自分を守るために縄張り(パーソナル・スペース)をしっかり確保しておきたいと考える人は、苦手な人を絶対に自分の心理的パーソナル・スペースに入れようとはしません。

マイルールや拘りが強く表れるASDの人にも心理的パーソナル・スペースが広い人が多く(ASDのタイプにより個人差がある)、それは、自分の価値観を否定される(かもしれない)ことを強いストレスと感じるからです。

心理的パーソナル・スペースが広い人には、相手のペースを尊重し、適度な心理的パーソナル・スペースを保ちながら、互いの距離を時間をかけて縮めていくことを心掛けると円滑な人間関係が築けるはずです。

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