セルフモニタリングと認知【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

セルフモニタリング

心理学/精神科領域でよく使われる言葉ですが、最近はビジネスセミナーやコーチングでも頻繁に使われるようになってきたので、耳にしたことがある人も多いかもしれません。

人間関係はもちろん、日々さまざまなストレスに晒され心身が疲弊しがちな現代人。

ストレスコーピングをはじめ、さまざまな感情マネジメントやコミュニケーションスキルが求められます。

セルフモニタリングとはその名のとおり、“自分の状態を観察する”です。

例えば、

●寒気がして頭痛がする(風邪のひき始めかな?)→温かいものを食べて早めに寝よう。●明日午後イチ提出の資料が仕上がらない→●今日残業して、明日朝早めに出社して仕上げよう・・・のように、私たちは日常的にセルフモニタリングをし対応しています。自分の今の状態(状況)がわかっていることで対応できるわけです。

自分の身体状態、自分の置かれた状況を把握できるからこそ、適切な対応が取れるのです。

これはメンタルでも同じです。

自分の心の状態、今の感情、考え方や受け取り方のクセ、それらを把握しておく。

具体的には“怒り”を感じた時に怒りを治めるためにはまず、『自分は怒っているんだ』と感情に目に向けること。アンガーマネジメントはそこからスタートします。

考えのクセを直すには“自分にある考え方のクセ”や“思い込み”を理解し把握しておくことが大切です。

以前にも平たく言えば“考え方”“受け取り方”を認知という話をしました。認知は意識的に自分の感情に目を向けることで気づくことができます。人は案外、自分の考え方のクセには気づきにくいものなので、繰り返し繰り返し観察してみてください。そこに必ず考え方のクセや思い込みがあるはずです。

  • 「子供は親の言うことを聞くべきだ」
  • 「子供は親の言うことを聞かなくてはならない」
  • 「子供は親の言うことを聞くものだ」

どれも表現は違いますが、どこに考え方のクセや思い込みがあるかおわかりでしょうか。

次回は、実際に認知〜感情〜行動をモニタリングしながら、この3つがどのように影響し合い、また周囲に影響を及ぼすのかを分析し考えていきます。

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本年のコラムは12月25日月曜日までです。

全5回:感情と表現【3】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回【2】に続き感情と表現で、感情は認知(受け取り方)によって引き起こされるので、それをどう気づき、どのように改善していけばいいのかを考えていきましょう。

まずABC分析について説明します。

A(Activathing event)
キッカケとなる出来事で、実際に私たちが現実で直面する不快な状況のこと。

B(Belie)
キッカケとなった『A』に関する自分への語りかけ(自己内対話・セルフトークステートメント)。

C(Consequence)
感情、行動両方の結果のこと。これには不安、怒り、絶望などの不快感情の表出や、実際に起こした行動が含まれる。

ほとんどの場合、私たち自身が持つ思い込みや自動思考(アンコンシャスバイアス)、セルフトークステートメントが、実生活で起こるさまざまな出来事や状況が引き起こす感情を混乱させる原因になっています。

かなり極端な例ですが、連絡が取れないことやメールばかりしている夫の浮気を疑った妻サイドに立って、『A』(不快な出来事)、『B』(セルフトークステートメント・思い込み)、『C』(行動)分析をおこなってみましょう(笑)

妻:最近帰りが遅いね、連絡取れないし、一体どこで   何してるの?

夫:なに言ってるんだよ、社員が一人辞めたから仕事   が増えると話したろ?

妻:(B・セルフトークステートメント真っ最中)
<そうは言っても連絡取れないのは浮気しているに違いない、しょっちゅうメールやり取りしてるし>

妻:(C・実際の返し)そんなの知らない!それに最   近冷たいじゃない!もういい!!

(勢いよくドアをバターン!)

『C』という結果(行動)を起こすまでに、『B』が大きく関わっていますよね。

浮気を疑い『A』(不快・不信)、夫に問い詰め返事が返ってきて『B』(セルフトークステートメント)開始、モヤモヤ炸裂でぶちギレた結果、『C』という行動になりました。

このセルフトークステートメントに何が隠れているのか、皆さんはお気づきでしょうか。

そう、連絡が取れない、メールばかりしている・・・これは浮気をしているに違いない!という思い込みの罠に嵌っています。これをどう修正すれば『C』という行動にならなかったのでしょうか。

ポイントは『B』部分にあります。

<連絡が取れない> ➡︎『仕事中は連絡が取れないこともあるかもしれない』

<メールばかりしている>➡︎『仕事のメールかもしれない』『それだけで浮気を疑うのはやり過ぎかもしれない』

このように考え方を少し変えてみるのです。

“ラッシュの車内で思いっきり足を踏まれた”を例に、皆さんでABC分析をやってみてください(笑)

この『A』部分、キッカケになる出来事は思考を刺激し、セルフトークステートメントを呼び起こします。具体的には挫折や逆境、ストレスなどです。また、これらは過去〜現在〜(予測される)未来にわたり、それは現実のこともあれば、ただの想像であったりもしますし、実際に起こった悪い出来事であったり、実現しなければよかった失望であったりします。

前回情動知能についてお話しましたが、幸せでよりよく生きていくためには、一般的な知能より、この情動知能が大きく関わってきます。情動知能は遺伝ではなく、取得していくものなので向上させることも可能です。

認知療法は、誰にでもある無意識の思い込みやアンコンシャスバイアスに自分自身で気づき、修正を加えていけるようになることを目指します。また論理療法では生活の三分野、論理面・情動面・行動面を改善していくことにフォーカスします。

論理面とは【思考】【推理】【認識】、情動面とは【感情】【気分】、行動面とは【振る舞い】【動作】ということになります。

次回(20日)は“不思議な感情を生む危ない連鎖”についてお話していきます。

アンコンシャスバイアス:思い込みの罠

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

いきなりですが、あなたには下の図が何に見えるでしょうか?

多くの人は【黒い背景に白い盃】のように見えると思います。しかし、眺めていると【向き合った二人の顔】にも見えてきませんか?

二つの見え方を比べてみると、【黒い背景に白い盃】【白い背景に向き合う二人の黒い顔】というように、白と黒のどちらを主体的に見るかでまったく異なる形に見えてきます。

この現象を【図一地反転】といい、見方によって異なる形に見えるものを【多義図形(反転図形)】と呼びます。また、見えていた盃が顔の形に見えてくると、盃は姿を消してしまい、両者を同時に見ることはできません。

この“ルビンの盃”と呼ばれる絵は、実は何の絵でもなく無意味な線の集合です。それが意味を持ち図形(絵)として意味づけされるのは、大脳での処理の結果なのです。

私たちの【見る】という働きは、刺激を固定的、普遍的に取り込み、それだけで明確に判断できなければ主観的なイメージが大きく作用します。

多義図形がどう見えるかは

見る人のその時の心的な構え、期待、関心、注意、欲求などさまざまな要因

によって左右されます。

アンコンシャスバイアス(思い込み)などによる他者との意見の食い違いやズレはこんなところからも生まれ、対人関係にヒビが入ることもあるのです。

自分には自分の視点、他者には他社の視点があり、それぞれ認知も違うということを、

あえて意識する、

これが大切です。

『自分はそうじゃない(そうは思わない)から、他者もきっとそう思わないだろう(思わないに違いない、思わないに決まっている)』という“(経験則からくる)自分常識”は、実はとても危険な考えで、カチコチに固まった偏った認知になっています。

私はフルーツやほとんどのスイーツは苦手なのですが、大概、「美味しいのに何で食べないの?」「変わってる」「女性は普通、スイーツ好きなものでしょ?」や、しまいには「好き嫌い多いよね」というトンチンカンな反応に遭うことがあります。

“女性はフルーツが好き、スイーツが好き”という『(女性ならば)自分もそうだし、大多数はそうだろう』というアンコンシャスバイアスからきていますよね。

なぜフルーツが苦手だから食べないというだけで「変わってる」と言われ、しまいには「好き嫌いが多い」と言われなければならないのか謎です(笑)

ピーマンが嫌い、ニンジンは食べられない、中華はちょっと・・・と言っているならまだしも、フルーツになると「好き嫌いが多い」と決めつけられる・・・不快にはなりませんが『そんな認知しか持てないなんてカワイソウな人・・・』になります。

知らず知らずに陥っている罠、それがアンコンシャスバイアスです。

無意識にあえて意識を向けることで気づけることもありますので、ぜひ心掛けてみてください。