注意機能【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

以前このコラムにも書きましたが、認知心理学で使う『注意』は、一般的に使われる“頭上注意”や“大雨注意報”とは意味が異なるという話をしました。

2020.6.5コラムより

私たちは『注意』をさまざまな認知機能のベースになるものと考えています。

注意の定義はなかなか難しいのですが、日常に溢れ返る多くの情報から自分に必要/大切な情報を選択する、選択/処理機能、それが『注意』であるといえます。

『注意』には大きく分けて【全般性注意】【方向性注意】がありますが、今回は私たちが日常的によく使う機能、全般性注意をお話ししようと思います。

全般性注意には、【持続性注意】【選択性注意】【転換性注意】【分配性注意】があります。持続“的”、選択“的”という表現もしますが意味は同じです。それぞれについて説明します。

【持続性注意】
持続する、繰り返しおこなわれる活動/作業の間(話を聞く/読書/勉強/運転など)、その行動を持続させる力。 ← 最も低次で基本的な注意。
読書/書類整理/勉強/運転などの作業を例にとると、注意集中を妨げる要因がない静かな環境で、一定時間集中して作業や行動を継続する能力のことをいいます。
【選択性注意】
複数の刺激がある状態(テレビ/他人の会話/外部の騒音など)がある環境で、これらの外部刺激を無視し、本来の目的作業、行動のみに専念する力。
アナウンスや音楽が流れ、人出も多い雑踏の中を歩きながら友人の話に耳を傾けるような状況で発揮される力です。
【転換性注意】
複数の情報処理を交互におこなう力のことで、例えば勉強中に電話がかかってきた時に電話対応中は勉強の手を止め中断し、電話を切った後にすぐまた勉強を再開する、などです。
この力が弱いと、止めなくてはいけないのにゲームを止められず、どんどん風呂に入る時間が遅くなってしまう/部屋の片付け中に出てきた雑誌を読み耽ってしまい、部屋が片付かない、などが起こりやすくなります。
【分配性注意】
電話をしながら要点をメモする/資料をまとめながらスケジュール確認をする/料理をしながら洗い物を片付けていくなど、複数の作業/行動を中断せずに継続し同時処理する力。 ← 最も高次で複雑な注意機能になります。
実際には二つ以上のことを並行して作業していくのでマルチタスクといえます。わかりやすい最たる例は料理で、究極のマルチタスクですね。

次回は注意機能を情報フィルターという視点からお話しします。

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“注意”をADHD(ADD)の特性から考える

一応緊急事態宣言は解除されましたね。まだまだ油断はできない状況に変わりはない中で、急に暑くなり、それでもマスクを外すことはできず、今度は熱中症にも注意しなければいけなくなりそうです。

お元気ですか?メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

さて今回は、生活していく上でいろいろな場面で必要となる能力、【注意】について、その種類や役割を、また、学校生活や家庭、社会生活でも困り感が出やすいADHD(ADD)の特徴と照らし合わせながら見ていきたいと思います。

軽くADHDのおさらいと、【注意】の種類やどのような場面でそれらの能力が使われるのかについて説明します。

ADHDは大きく3つのタイプに分けられます。

  • 多動/衝動性優勢
  • 不注意優勢
  • 上記を併せ持つ混合型

です。それぞれどのような特徴があるのかは発達障害のコラムを参照してください。

次に【注意】の種類や機能についてお話します。前回“分割的注意”とは?でお話しましたが、他にも幾つかの【注意】があります。

集中的注意(持続性注意)

選択的注意

分割的注意(分配性注意)

転換的注意

被る部分もありますが、例を挙げながらそれぞれの【注意】を説明します。

集中的注意(持続性注意): 一つのことに集中力を持続する機能(読書、テスト、書類をまとめる、作文を書く、授業を受ける、何かの作業をする、など)。

選択的注意:選択的注意には、今の自分にとって重要な情報を集める、不要な情報を遮断する、という二つの機能があります。 いろいろな情報から、自分に必要な情報を選択し集中する(ラジオを聴きながら勉強or仕事、散歩しながら献立を考える、など)。

分割的注意(分配性注意): 同時に一つ以上の情報に注意を向けながら行動する(複数で会話する、電話しながらメモを取る、運転しながら話をする、など)。

転換的注意: 一つのことに集中している時に、別のことに気付いて注意を切り替える(テレビを見ていて電話が鳴ったらすぐに話ができても気付かない、テレビを見ていて電話に気付かない、など)。

1日にどのような【注意】機能を使っているのか例を挙げ、見ていきましょう。あえて書き出すと、呼吸のように無意識且つ連続的に使っていることがわかります。

<設定>:週末。自宅に要介護の家族がおり、ヘルパーさんが訪問中なので、その間に近くのスーパーへ買い物に行った。

買い物帰りに友人に声をかけられました。週末で人も多く騒がしい街中、そんな場所で友人の声(話)に注意を向けます。← 選択的注意

久しぶりの友人との楽しい会話に注意を向け続けます。← 集中的注意(持続性注意)

会話を楽しんでいるとヘルパーさんから電話がかかってきたので、一旦話を止め、ヘルパーさんと話します。← 転換的注意

電話を切り、またすぐに友人と歩きながら話を続けます。← 転換的注意

道幅が狭い場所に差し掛かり、話をしながら後ろから来る自転車や車も意識します。← 分割的注意

何となくイメージできたでしょうか。

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分割的注意とは?

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

私たちが普段使う【注意】と、心理学の【注意】は意味が異なります。コラムでも、前回の心理検査や発達障害の回で【選択的注意】については触れていますが、今回は【注意】の中から【分割的注意】についてお話します。

私たちが使う【注意】は、ほとんどの場合“食べ過ぎ注意”“頭上注意”“高波注意報”のように、何かに“気をつける”という意味で使われます。

心理学では、この【注意】が違う意味で使われます。

【分割的注意】とは。

幾つもの作業をおこなう時に、並列的に集中を切り替えたり、分配する機能のことです。私たちの生活はすべて、認知活動によりおこなわれており、認知活動はさまざまな【注意(意識を向ける、集中)】を必要とされます。

重要度や振り分け具合はケースによりますが、身近なものだと、ラジオを聴きながら勉強をする、テレビをつけて人と会話をする、犬の散歩をしながら明日のプレゼンを考える・・・と思い浮かべてもらうとわかりやすいかもしれません。

大袈裟に言えばマルチタスクですが、

作業上必要となる幾つもの情報を一つ以上同時に実行していく機能

のことです。

授業中に先生の話を聞きながら黒板に書かれた字を見てノートに取る、これも分割的注意が必要で(ガヤガヤした教室内で先生の声だけに集中するのは選択的注意)ですから、この機能や選択的注意機能が低いと成績が振るわないということが起こります。

車の運転もそうで、バックミラーで後方車を確認したり、前方の車や先の信号、右折レーンにいる車、脇道から出てくるかもしれない人や車に気を配る、これも分割的注意になります。

家庭では料理を作るのに分割的注意を使っています。

私を例に『ポテトサラダを作る』で考えてみましょう。

実際の行動では、ポテトサラダを作りながら並行して、ご飯を炊くために米を研ぎ、出汁を取りながら味噌汁を作る準備をしつつ、ヒジキの煮物を作るために乾燥ヒジキを水に入れて戻したり、唐揚げの下味をつけたり、途中途中で出たゴミを片付け、調理器具を洗ったりを常に頭で考えながらスムーズに実行しています。

ジャガイモを洗って剥き、刻んだニンジンとラップに包んでレンジで加熱している間に、マヨネーズを冷蔵庫から出し、キュウリを刻み塩揉みしておきます。

そしながら、頭では出来上がったジャガイモを潰す、が浮かんできます。出来上がったジャガイモの粗熱を取りながら、塩揉みしていたキュウリの水分を絞り、それをジャガイモ、水分を絞り刻んだニンジンをマヨネーズと混ぜます。混ぜながら、掛かってきた電話を小首に挟んで話をします。電話をしながら、潰すために使ったボウルや包丁、使わない調理器具を洗い、シンクの中には物がないようにニンジンの皮やジャガイモの皮も一緒に片付けます。

これだけでもかなりの【分割的注意機能】を使っていることが分かると思います。

これが仕事だとどうでしょう。

具体的に見てみましょう。

資料作成中にあなたのデスクに電話が掛かってきます。電話で要件をメモしながら『あ、これはすぐに部長に報告しないと』と考えています。

実際に行動として現れているのは“電話を受けながらメモ”ですが、3つのタスクを使用していることがわかりますか?

1)聞く → 2)メモを取る → 3)メモを取りながら誰にいつ報告すべきか考える

【注意】あらゆる場面で必要となる機能です。【注意】には、ザックリ分けて4つの【注意】があります。

集中的注意

選択的注意

分割的注意

転換的注意

です。次回はさまざまな【注意】を発達障害特性から考えていきます。

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