自律訓練法<前篇>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回から自律訓練法について前篇、後篇に分けてお話します。

まず自律訓練法とは、ドイツの精神科医シュルツが【自然なリラックス状態の特徴が安静感、四肢の温感、重感(後述)】であることを発見したことから、それらの感覚を段階的に身に付けていくことで、心身のリラックスを得る目的として考えられた練習です。基本練習として標準練習が①〜⑥があり、次いで黙想練習、自律性修正法、自律性中和法、時間感覚練習、空間感練習、自律行動療法、自律フィードバック訓練法と進めていきます。

前篇では標準練習の公式⑥までを、後篇では黙想練習についてお話します。

標準練習は、公式化されたワードを反復暗唱しながら意識を集中させ、関連する身体部位に意識を向け、段階的に生体機能のチューニングを図るものです。

自律訓練法は、心身の緊張を和らげリラックスさせるものですが、残念ながら練習を始めたからといって、すぐに効果が表れるものではありません。

まず、標準練習を始める前にどのような環境でおこなうのが効果的かをお話します。

▶︎外界刺激の少ない場所で、適度な明るさと心地よい温度、静かな環境がよいでしょう。私は寝る前の静かな部屋で茶香炉を焚きながらおこなっています。

▶︎身体を圧迫する衣類ではなく、ネクタイやベルトなどは外したほうが集中しやすいと思います。

▶︎生体症状にも意識を向けていくので、空腹時、満腹時を避け、お手洗いも済ませておきましょう。

リラックスできる体勢であれば特に決まりはありません。ベッドに横になる、お気に入りの座りやすい椅子に座る、座禅・・・集中しやすくラクな体勢を考えてみてください。ただ、いくらリラックスできるといっても入浴中はオススメできません。

標準練習①〜⑥のベースになる練習として、気分を落ち着かせる、あるいはクールダウンさせるための【安静練習】ということから始めます。

リラックスした状態で、例えば『私は今とても穏やかな気持ちでいる』など、自分なりに気持ちをクールダウンさせる言葉を繰り返し暗唱していきます。環境音楽を流しながら、お気に入りのアロマを焚きながらでもいいでしょう。

ここで大切なのが『落ち着かなきゃ』と努力するのではなく、雑念が浮かんでも構いません。そのままの状態で心の片隅で『私は気持ちが落ち着いている』という言葉を繰り返していくだけで大丈夫です。

安静練習も標準練習も心の中で公式ワードの暗唱なので声に出す必要はありません。誰も見ていませんが、ブツブツ言っているとかなり怪しい人です(笑)安静練習の後から標準練習に入ります。

力を抜いたラクな体勢から・・・

①重感練習
『両腕・両足が重たい』
利き腕から始め、反対の腕に組み、足も同じように進めます。この重感とは、力が抜けてリラックスした時に感じる感覚を指し、人によっては『重だるい』『下に引っ張られる感じ』など感じ方はさまざまです。

公式ワード例:【右腕が重たい、左腕が重たい】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。足も同様に。

②温感練習
『両腕・両足が温かい』
重感練習により四肢の筋肉が弛緩すると、血流量の増大から皮膚温の上昇など生理的変化を得やすくなります。ここでも利き腕から順に進めていき、練習順序は、安静練習→重感練習→安静練習→温感練習となります。

公式ワード例:【右腕が温かい、左腕が温かい】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。足も同様に。

ここからは持病がある人には注意が必要となるので、主治医に相談しながらおこなうようにしましょう。

③心臓調整練習
『心臓が静かに規則正しく脈打っている』
『心臓が自然に脈打っている』
重・温感練習が十分習得できるようになると、脈拍数は減少し、落ち着いた状態になっていることが多いので、練習というより“静かに規則正しく脈打つ自分の心臓の状態”に意識を向け、気づく練習になります。いずれお話するマインドフルネスでも役立つので意識してみてください。

公式ワード例:【心臓が静かに規則正しく脈打っている】【心臓が自然に脈打っている】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。

④呼吸調整練習
『自然に呼吸(いき)している』
『とてもラクに呼吸(いき)している』
③の心臓調整練習と同じように呼吸に意識を向けるのですが、呼吸は随意神経と不随意神経から二重支配を受けているため、この練習を始めると呼吸に注意が向き過ぎて不自然になってしまうことがあります。そのような時は、呼吸に軽く注意を向けて練習をし、不自然、違和感を感じない程度にしてください。

公式ワード例:【自然に呼吸(いき)している】【とてもラクに呼吸(いき)している】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。

⑤腹部温感練習・内臓調整練習
『お腹が温かい』
『胃のあたりが温かい』
これは消化管や内臓機能のチューニングを狙ったもので、心理生理的に四肢温感練習とともに緊張緩和効果、中枢神経活動への鎮静効果が高いので、ストレス過多、過敏の改善に効果があります。右手を軽くお腹に当て、右手の温かい感じがお腹へと伝わっていくというイメージを浮かべて練習するとわかりやすいと思います。

公式ワード例:【お腹が温かい】【胃のあたりが温かい】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。

⑥額涼感練習
『額が心地よく涼しい』
腹部温感練習までが、心理的リラックス効果と鎮静、生理的に筋弛緩と血管拡張を狙った練習でしたが、これは逆に適度な内的覚醒と緊張という俗に言われる“頭感足熱”状態を作り出す目的があります。と同時に、標準練習をまとめ上げる効果もあります。

公式ワード例:【額が心地よく涼しい】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。

この練習をする際に注意していただきたいことがあり、額の一部に注意を固定したり「涼しい」の代わりに「冷たい」という言葉を使わないようにしてください。感覚がわかりにくい人は、額を濡れタオルで軽く拭いてみたり、そよ風が額を撫でていくイメージを浮かべてみてください。

以上をまとめて練習する場合は、

安静練習→重感練習→安静練習→温感練習→安静練習→心臓調整練習→安静練習→呼吸調整練習→安静練習→腹部温感練習→安静練習→額涼感練習→消去動作

と進めてください。

消去動作とは、両手開閉運動や両肘屈伸、背伸びや深呼吸をして最後に目を開ける・・・で、練習終わりにすぐ目を開けたり、立ち上がろうとして目眩などの不快症状を避けるためにおこなう動作ですので、練習の終わりに取り入れてください。

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