ASD積極型/受動型【1】

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、周囲の無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回まで【ASD孤立型重複なし】を特集していたので、今回から数回にわたり、日本人に多いと言われている受動型、積極奇異型についてお話ししようと思います。

息子も発達障害ですが、彼はADHD/ASD積極型の重複で、DCD(発達性協調運動障害)もあります。ド定型っぽい友人はもちろんのこと、周りにはクライエントを含め、さまざまな凸凹を持つユニークな友人たちがいます。

近年、発達障害という言葉が社会的に市民権を得て理解も進んできた感はあります。グレーゾーンも含めると7〜8人に一人は発達に何らかのアンバランスを持っていると言われています。と同時に、『なんちゃってアスペルガー』など都合よく発達障害を自称する人も増えてきた感があります(『なんちゃってアスペルガー』を都合よく自称する人は概ね定型だったりします)。

“発達障害”と一括りにされがちですが、発達障害であってもASDだけ、ADHDだけ、SLD(限局性学習障害)だけ、という人はほとんどいません。そのほとんどが重複です(故に、前回までの特集の『ASD孤立型重複なし』の人は本当に稀な存在)。

また、本人が気付いていなかったり、周囲の無理解から発達障害を拗らせて二次障害を併発してしまっている人も多く見られます。二次障害になっていると、表面症状にばかり囚われ、根底にある発達障害を見逃すこともあるので、発達障害に詳しい精神科や心療内科で相談しなければ、単に「鬱ですね、お薬出しましょう」になってしまいます。この場合、根底にある発達障害を無視しているので、いくら薬を出されても改善は見込まれません。もちろん、発達障害であっても日常困り感に対処した薬であれば対応できることはあるので(ADHDにはストラテラ、インチュニブ、コンサータなど)詳しいクリニックでよく相談することが大切です。

重複があると特定の場面、または場面場面でどちらか、もしくはどちらもの特性が複雑に表れ、共通する特性であっても濃淡に個人差が大きいため、簡単に“ASD”“ADHD”と言えない現実があります。

ASDには【積極奇異型】【受動型】【孤立型】【尊大型】があり、濃淡はあっても三つ組の特性を持ち合わせているのは同じです。発達障害は生まれ持っての脳の特性(私は脳のクセと捉えています)ですが、尊大型については、いきなり【尊大型】ということはなく、受動型→尊大型、孤立型→尊大型という過程を辿った結果のタイプです。

その過程には歪んだ認知や人間関係/周辺環境などが複雑に絡み、尊大型は家庭ではモラハラ、職場ではパワハラになりやすい特徴もあります。しかし、モラハラ/パワハラがあるから必ずしもASD尊大型ではありません。

いますよね、例えば普段から偉そうで人を見下すタイプの人(笑)。コンビニやスーパーで「オレを誰だと思ってるんだ!」と他者にトンチンカンに絡んでいたりします。そういう人は、ただの勘違いしている人か、やたら自己愛を膨大化させてしまった痛々しい人だろうと憐れみの眼差しで生ぬるく観察していみるといいと思います。要はASD の類ではなく『ただの器の小さい人』ということです。

テレビなどメディアで取り上げられることが多くなったASDやADHDですが、その取り上げ方はASDの特性、ADHDの特性、という単独での取り上げ方をしている番組がほとんどです。しかし現実はASDとADHDの重複を持っていることがほとんどです。そのせいか、ADHD重複があると見えやすい(気付きやすい/困り感として表れやすい)特性だけを見て、まとめてアスペルガーだADHDだと捉えがちなのが現状です。この点は気をつけなければいけないところです。大概は、ASDとADHDの両方を持ち合わせていると思って間違いないでしょう。

「遅刻が多い」「忘れ物ばかりする」「片付けられない」これらはADHDによくある特性ですが、ASDにも一見同じ表れ方をする場合があります。ただ理由がまったく違うので対応策も違ってきます。

忘れ物が多い、しょっちゅう物を失くす、この特性がある時点で、ASDであってもADHD(グレーゾーンも含む)重複と考えます。ASDとADHDの両方を持ち合わせている可能性が大ということです。

【ASD重複なし】は時間にキッチリ(実際、他者を巻き込みながら時間に並々ならぬこだわりを持つ人もいます)、また、こだわりやマイルールに忠実なので時間はキッチリ守ろうとしますし、部屋が一見乱雑に見えても本人はどこに何があるのか把握しているので、他者がそれを動かさない限り、物がどこかに紛れ込んだり失くすことはありません。自分のルールに則って持ち物を整理/管理しているので(出かける時に必要なグッズ、身支度を整えるのに必要なグッズのように)、よほど想定外のことが起きなければ、まず忘れ物もしません。

【ASD積極奇異型】は基本的に人見知りをせず、人と関わることが大好きなため、バウンダリーを無視し(もちろん空気は読めません)、ガンガン他者領域に踏み込んでいく傾向があります。ADHDと同じく人懐っこく一見人当たり抜群なので、最初は仲良くなれるように思えますが、慣れてくるとコミュニケーションコストが高く、疲れることや無神経な言動が目につき、最終的に鬱陶しがられ遠巻きにされてしまいます。人間関係の距離感が掴めないタイプですね。まさに息子はこのタイプです。

【ASD受動型】は日本で一番多いタイプなのではないでしょうか。同じく空気は読めませんが、積極奇異型のようにバウンダリーを無視してガンガンいくことはありませんし、穏やかで人当たりが良く、落ち着いていて、一見おおらかに何でも受け止めてくれるように感じるのが受動型です。

人当たりの良さからASDで結婚している人の多くが受動型だと思われます。穏やかで何でも受け入れてくれるようなおおらかさを感じるので、結婚生活に向き不向きはともかく、結婚に一番近いASDと言えるかもしれません。

ただ、そこはASDなので家庭生活を営むパートナーをカサンドラにしてしまう可能性は受動型であれ、どのタイプも同じで、悲しいかな高確率で相手をカサンドラ化させます。多少の違和感があっても踏み込んだ関係にならなくてはわからないことが多いので、「結婚する前にそういう人だとわかって結婚したんでしょ?」と言われても困ってしまうのです。←わかっていたら結婚しないかもしれません。

ASD孤立型がダントツでパートナーをカサンドラ化させると思っていますが(笑)、次は受動型でしょう。

ASD積極奇異型は鬱陶しがられ、ASD孤立型は他者に関心が非常に薄いので、お付き合いに発展しない、「何を考えているのかまったくわからない」とお付き合いは終了になり、結婚まで到達しづらい気がします。

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