実行機能について【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

実行機能について【1】では、実行機能の重要な要素として自動反応の制御、ワーキングメモリー、感情コントロールまでお話ししました。今回はその続きをお話しします。

実行機能の重要な要素・・・

●課題開始
先送りすることなく、予定どおりに課題を開始する力です。
計画立案、優先順位付け、感情コントロール、整理体系、メタ認知、時間管理などが課題開始には関わってきます。

わかりやすい例だと、先延ばし、後回しにしがちな行動のひとつが食器洗いではないでしょうか。面倒と感じやすい家事のひとつだと思います。そのため「面倒くさいな」という思考を制御できず、それに行動がコントロールされてしまいがちです。

ワーキングメモリーやメタ認知が機能していると、「先にやっておいたほうがいい」と気付けますし、感情コントロールができていれば「面倒くさいなぁ」と思っても、自分自身で「いやいや、そんなこと言ってないでさっさとやってしまおう」と自分にハッパをかけることができます。優先順位や目標設定がきちんとつけられて持続できていれば、「食べ終わったから、よし食器洗うぞ」となるでしょう。

●持続的注意
私たちの“注意”には4種類あり、それぞれ選択的注意、転換的注意、分配性注意、持続的注意と言います。一つのことに集中し続けることを持続的注意といいますが、飽きたり多少疲れても気が散らないように目の前の課題(タスク、やらなくてはならない作業)に注意を向け続けることでもあります。

勉強や資料作りなどで考えると理解しやすいと思います。最初に前記の課題開始が関わることがわかると思います。いざ開始しても、飽きてきたり退屈になると気が散りやすく集中できなくなります。反応制御やメタ認知、ワーキングメモリーが機能していないとすぐに気になることや目の前の違うこと、思いついたことに引っ張られ、そちらに意識が向いて集中が途切れてしまいます。同時に機能しているのが持続的注意(集中し続ける)になります。私たちは無意識に幾つもの注意機能を複雑に組み合わせながら課題遂行していることがわかると思います。

自分が勉強、作業などが持続できないのは、どの機能が弱いのかを考えてみましょう。課題開始?反応制御?メタ認知?持続的注意?・・・どの機能からくるものかで対策を取れるものもあります。

●計画立案・優先順位
なかなか複雑な機能で、課題解決のために取捨選択し目標達成に向け、手順ややり方を組み立てる能力になります。

簡単に思えますが、この優先順位をつける能力にはメタ認知(俯瞰して見る力)で今の状況を理解しながら、ワーキングメモリーで複数ある課題を検討することが必要になってきます。どのように進めるかの意思決定や計画立案には、タスクの整理や体系化もしなくてはなりません。さらに、計画立案には作業量の全体像を把握し(メタ認知フル活用)、課題遂行までのうんざりするモチベーションダダ下がりになりそうな感情をコントロールする力や、あちこちにある反応制御という注意の散りやすさを一時的に保留(隅に追いやり)、予定どおりにいかなかった場合の可能性を考え、対応できる柔軟性も必要になってきます。それに加え、同時に時間管理をおこなうことも必要になってくるでしょう。

●課題整理と体系化
インプットされた情報を整理してメモリーするシステム作りをし維持する力、と言われています。課題遂行でも発揮される能力ですが、わかりやすく説明すると、身の回りの整理整頓や脳内のさまざまな記憶を整理し必要時に必要な情報を思い出したり、インプットされた情報を保持することになります。

整理体系化を無駄なく効果的におこなうためにワーキングメモリーは必須で、俯瞰的な視点で考え理解し、また視点を切り替えていくためにはメタ認知や柔軟性も必要になってきます。うっかりや忘れ物は整理体系化だけではなく、私たちは無意識に常時、分配性注意やワーキングメモリーを働かせているので、忘れそうになった時にわざわざ注意しなくても思い出すことができるのです。うっかりや忘れ物が多い人はそのアラートが自動発動しない(しづらい)ので、能力をアテにせずトレーニングやライフハックでカバーしていくと生きづらさが軽減するのではないかと考えています。

【2】はここまでにして、【3】に続きます。

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ADHDの課題【時間管理】について<5>:心理的抵抗に対処する。

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

本連載最後となる5回目は、ADHDの人の【心理的に集中を妨げるもの】や【集中力のコントロール】についてお話を進めます。

ADHDを持つ人は、引っ張られやすい不安感情や抑うつに加え、何かしら他者に対してイライラと不満を持ちやすい(面倒、難しい要求ややりたいことへの制限など)ことを自覚し、“怒っている自分、これまでずっと変えたいと思いつつ、自分には絶対無理だと感じる自分”、【変容に反抗している自分】に気付き、自分の認知(思考)を同定し反論してみる練習をしてみましょう。

今までの連載<1>〜<4>でお話したことの振り返りになりますが、おさらいしてみます。

  • 達成できる小さな、簡単なことからスタート。
  • 難しく面倒なことは、達成できるであろう大きさに分解(分割)。
  • スケジュールを組む時には対処しやすい“まとまり”に分解し、まとまりを終了できた時には“強化”(自分へのご褒美を計画)。
  • 完了と同時にTO DOリストの項目に完了印をつける(視覚的に“できた”を感じるモチベーションが維持しやすくなります)。
  • 強化(ご褒美)は随伴的であり、やらなくてはいけないことを完了していなければ、自分にご褒美を与えてはいけません。←「後でやるから先にご褒美」はダメ!

自分にとって集中を妨げるものには何があるのか考えてみます。

ADHDの人は、刺激に敏感に反応し集中が分散してしまうので、そうならないために、目や耳に余計な情報が入らないよう先に対策を取っておくのは有効です。

●携帯電話は遠くに置くか、留守電にしてサイレントモードに設定。
●本や雑誌は目につかない場所に。
●テレビ、パソコンなどは消す。
●家族にも上記を宣言し協力してもらう。

外部からの音を柔らかく遮断するイヤーマフデジタル耳栓、集中しやすいリラックス状態を保つために、ホワイトノイズ発生装置(レクトロファンマイクロ)も役立つと思います。もちろん音量は耳障りにならない音量で、ですが。

ADHDの人は、目の前の自分にとって楽しい報酬を、遠い先のより自分にとっては大きな報酬より選ぶ誘惑に駆り立てられがちです。ここで自分との闘いになると思います。実際に、闘っては毎回負けている息子を毎日見ています(笑)。この重要な岐路に、目先の楽しさを取ることと、課題をやった後の報酬、達成感、自信、他者からの評価といった現実的な報酬を書き出してみましょう。

△明日提出のやらなくてはいけない課題があるのに、見たいテレビがあり、我慢できずに見る。→取り組むのが億劫になり、お風呂から上がったら・・・ご飯食べたら・・・と先送り癖が出現。→「うーん、明日、早起きしてやればいっか」→早起きできない、もしくは早起きしてもいつもの「まだ時間があるから大丈夫」癖が出て、結局巻きに巻いて雑な仕上がりか、まったく手をつけていないことになる。→当然叱られる、呆れられる、信用を無くす・・・結果評価が下がる。→自己嫌悪から自己評価も下がり、「ダメな自分」から自己肯定感も下がる。

こうならないために

○見たいテレビは録画にして、明日提出の課題に取り組む。→終わった後に「完了させた!」という満足感と達成感。→ご褒美の動画を観る(気持ちを引っ張るものがないので動画を楽しむことに集中できる)。→次の日に胸を張って提出(できなかった(やらなかった?)言い訳をしなくていいので気が重くない)。→完了させたことへのそれなりの評価。→やり遂げた自分への自己評価アップ。

これを自分に当てはめて視覚化してみてください。

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ADHDの課題【時間管理】について<4>:認知面の気付きと対策を考える。

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

4回目、次回5回目は、ADHDの時間管理/認知面の気付きと対策について考えていきます。

認知(思考)の歪みには、不安や抑うつを生む自動思考と呼ばれるものも多く含まれますが、あまりにも普段の思考に密接であることから、なかなか気付きにくいものです。

自動思考とは、起こった出来事に対する咄嗟の評価

で、その評価が正しいこともあれば、そうでもない時もあります。

ASDやADHDを持つ人は、“失敗”から自動思考が知らないうちに徐々に歪んでいくので、不安や抑うつに引き込まれやすい傾向にあります。

自分の【自動思考の中にある認知の歪み】に気付くことが第一歩になります。

克服するための第二歩が、

【歪んだ自動思考に気付き、その思考に自ら反論し、それに代わる合理的反応を自身で持てるようになる】ことです。

起こった出来事に対する【認知】が【感情】を生み出すのですが、この“認知(思考)”は、出来事が起こった瞬時に自動的に生み出されるものなので(だから自動思考)、その結果生まれる感情にばかり目を向けがちで、【認知】そのものはほったらかし、意識しないことがほとんどです。

認知の歪みを引き起こす自動思考にはさまざまな出どころがあるのですが、本題から外れるので認知について掘り下げてお話する機会に取っておきます。

自動思考、認知の歪みに気付くためには、感情そのものではなく、感情が生まれた出来事に対し、自分が“どのように受け取ったか”に意識を向ける練習が必要になります。

“不快”“辛い”“不安”“怒り”という感情の変化が起こった時にメモを取り、その感情にラベル付けしてみます。←毎回やるのは大変ですから、やれる環境にある時に意識的にやってみましょう。

前提)明日の大切なプレゼン用資料作りを任され、それを今夜中に仕上げなくてはいけないので徹夜になりそうです。資料作りに取り掛かろうとした時に憂鬱な気持ちに襲われるかもしれませんし、想像しただけで強い感情に襲われるかもしれません。

自動思考は何らかの感情と直接関係しています。今回、具体的にどのような自動思考が表れやすいのか見ていきましょう。

●それが【不安】からの場合
「どうしよう、もし失敗したらどうすればいいんだ・・・」「もうプロジェクトから外されるかもしれない」

●それが【抑うつ】からの場合
「あーダメだダメだ、こんなんじゃダメに決まってる!」「自分はなぜこんなことも満足にできないんだ」

●それが【怒り】からの場合
「自分一人にこんな膨大な資料を作らせるなんて上司は酷すぎる!」「要求レベルが高すぎる!きっと私に失敗させようとしてるんだ」

このように、起こった出来事(明日までに作成しなければならないプレゼン資料)により湧き上がってきた自分の感情(不安、抑うつ、怒り)を俯瞰し、じっくり観察してみることで、感情や行動(完璧主義や回避傾向)のトリガーとなる自動思考を同定していきます。

【認知の歪み】の具体例

●二分割思考(0か100か)完璧主義
物事を白か黒か、0か100かの両極端でしか捉えられない。
例:「もしこれで契約が取れなければ、もう自分は終わりだ」

●過度な一般化
一つのネガティブな出来事だけを根拠に、すべて悪いほうに捉える。
例:「自分は何一つまともにできない」「自分は幸せになんかなれない」

●“すべき”思考
過度に「〜すべき」「〜しなければならない」と考え過ぎ、それが実現できないと罪悪感や自罰傾向が高まる。自分の中の“べき”に則った行動をしてしまう。
例:「良くないおこないをする人には、どう思われてもその人のために注意すべきだ」「自分はクズなんだから、何を言われても黙って甘受しなくてはならない」

●レッテル貼り
たった一度の出来事で、自分や他者にネガティブなレッテル貼りイメージを固定してしまう。
例:「どんな綺麗事を言ったってどうせ裏切られる」「所詮女(男)はこういうものだ」

●結論の飛躍
結論が正確かもわからないのに(そのような事実はないのに)、ネガティブな解釈をする。<心の読み過ぎ、空気の読み過ぎ>と<根拠があるわけでもなく相手に確認もしていないのに、相手は自分に対しネガティブな反応をしていると思い込む>という二通りのタイプがある。
例:「自分が話をしていたのにスマホを見た、きっと話が面白くないに違いない」

●先読みの誤り
起きてもいないのに、悪い結果になると勝手に予想し、その予想が確立した事実と思い込む。
例:「同窓会で嫌な思いをするに決まってる、だから行くものか」

●選択的注意(以前お話した“選択的注意”とは違います)
小さな一つのネガティブな側面だけを取り出し、他を無視してそのことだけを考える。
例:「その髪型似合うね、髪の色はもう少し暗いほうがいいかも」に対し「どうせ似合わないと思ってるんだろう」

●自分への関連付け
実際に自分に責任がないことでも、ネガティブな出来事をすべて自分のせいだと考えてしまう。
例:「私が発表しているのにあの人が出て行ったのは、私の話が退屈だったからだ」←たまたま電車の時間だったかも、具合が悪く席を立ったのかも、と思わない。

●破滅思考
もし○○が起こったら、もしくは、〇〇が起こらなかったら破滅だ、と決めつけて考えてしまう。
例:「もし面接に落ちたらおしまいだ、自分は耐えられないだろう」「彼がいなくなったらもう生きていけない」

認知の歪みは極端な思考を呼び、不快感や不安、怒りといった強い感情を生み出しやすくなります。認知→感情、の感情にだけ目を向けるのではなく、感情の出どころ(認知)に意識を向ける練習を続けると、自分の自動思考に気付けるようになります。

自分の自動思考における認知の歪みを同定できたら、合理的な反論で、その歪みに自分で反論してみます。自動思考→認知の歪み→その認知に反論した合理的反応・・・の例を一つ出して考えてみましょう。

<例:やっとこぎ着けた就職の三次面接前夜>

  • 自動思考:次こそ面接で上手くやらなくては。はぁ、ちゃんとやれるのか本当に心配だ。毎回こんな時は神経質になってしまって、本来の自分が見せられたことが一度もない。もう10回目の面接だ・・・でも、こんな好条件な仕事は二度と私には巡ってこない。
  • 認知の歪み:破滅化、過度の一般化、先読みの誤り
  • 合理的反応:「いかんいかん、自分は少し神経質になってるのかも。でも、面接なんて誰でも緊張したり神経質になるものだよな。緊張するなんて面接する側もわかってるはずだし。よし!履歴書も職務経歴書も丁寧によく出来てる、緊張して多少上手く話せなくてもこれで自分をわかってもらえるだろう。」

もう一つ例を出します。

<何日も前から親に「片付けるように」と言われていた散らかった部屋、「そういえば片付けたの?」と聞かれました。>

  • 自動思考:「あっ、何もやってないや。はぁ、つくづく自分って怠け者でダメダメな人間なんだろうな」
  • 認知の歪み:過度な一般化
  • 合理的反応:「確かに自分を片付けは苦手で時間もかかる。でも、だからといってすべてにおいて怠け者というわけではないよな。まとめては難しいけど、今日はタンスだけ明日は机と机周り、というふうにやれば自分でもできるぞ!」

合理的反応を目指すためには、まず【認知の歪み】やそこからくる【自動思考】に気付かなくては始まりません。

ちょっと自己分析してみませんか?

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ADHDの課題【時間管理】について<2>

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

2回目となる今回は、ADHDの時間管理/随伴性自己強化を使い、気が進まないタスクを少しでも楽しいものにする、についてお話します。

複雑な仕事や気が進まない事柄を対処しやすく分解する。

随伴性自己強化を使う。→やりたくない(不快感を伴う)ことを終わらせた後に、自分自身に報酬/ご褒美を与える計画を立てる。

自分への強化子(具体的な報酬、ご褒美)リストを作る。

この3つが今回のキーワードです。

単調な繰り返しがひたすら続く。

・興味がなく退屈な仕事。

・複雑で細かく時間がかかる仕事。

などは、ADHDを持つ人にとって完遂が特に困難です。

これらに対処するために効果的なのが、

【仕事(やらなくてはいけないこと)を大きな塊と見なさず、無理なく取り組める程度に小分け、“まとまり”に分解し、“まとまり”となった仕事が一つ完了するごとに自分に報酬(ご褒美)を与える】

というやり方です。

大きな仕事(複雑で時間がかかる、手順が面倒など)がドーン!と目の前にあると、山のようにやらなくてはならないことばかりに意識が向き、途方に暮れて、どこから手を付ければいいのかわからず、ますます手を付けるのが億劫になります。

そこで、自分がやろうと思っている仕事のボリューム、それを完了させるために費やす時間(あるいは労力)を“これなら容易に終わらせられる”と感じられる程度(のまとまり)まで小分けします。

大枠で<大掃除>を例にとると、「やることは何だかいっぱいだし大変そうメンドクサー」・・・になるので、“今日はすべての部屋の窓だけ”“トイレだけ”“バスルームだけ”と計画を立て、『他はやらない』と決め、小分けしたそのまとまりにだけ取り組む感じです。まとまりの一つである“今日はすべての部屋の窓だけ”を終わらせた後に、“好きなDVD(動画、ゲームなど)を1時間半”というふうに、随伴性自己強化のために前もって書き出していた“ご褒美リスト”から、自分に対し“強化子(ご褒美)”を与えます。

難しいのは、「ご褒美を先にもらっておいて後から頑張ればいいや」という、いつもの先送りしそうな気持ちが持ち上がることです。ADHDは極度に面倒臭がりでもあるのです。息子は毎回このパターンで、自分一人ですぐに終わりそうなことも完遂できず、鼻先にぶら下げるニンジンを先に欲しがるので(笑)、私がストッパーや柔らかい鞭になっています。

前記の“すべての部屋の窓だけ”掃除も、『うちには○枚窓があるから、だいたいこの位の時間がかかるな』と見通しを立てなくてはなりませんから、ここで必要なのが、【1】でもお話した

自分はこの(ボリュームの)仕事を終わらせるのに、どのくらいの時間が必要か

の見通しを立てられることが重要になってきます。時間を少なく見積もると焦って雑になったり抜き落ちが出てきますし、多く見積もり過ぎると、「まだ時間あるから大丈夫だし〜」とダラダラやりながら目についたテレビや雑誌などに注意が逸れてしまいます。なので、

今の自分の集中が続く時間を自分自身がわかっていないといけない

のです。

ADHDを持つ人には【手を付けられないのは最初のステップが大き過ぎる】というのがあるので、前記の“今の自分で容易に終わらせるだろう”程度の小さなまとまりにし、取り掛かるハードルを下げるのです。

より細かく大掃除を例にみてみましょう。

やる気があっても、気持ちとやる気だけが大きく、いざとなると取り組む(実行)ハードルが高いのがADHDです。

初めは【すべての部屋の窓だけ】でしたね。窓掃除に必要なものは何でしょうか。それをイチから探して準備するところからだと、ADHDにはそれだけで面倒で面白くないひと仕事になってしまい、本来の目的である窓掃除に辿り着く前に集中が途切れる可能性がありますから、前日準備という予備日を用い【窓掃除に必要な掃除用具を全部揃え、2日目にすぐに取り掛かれるように目につくところに置いておく】を目標にしてみましょうか。

バケツに雑巾、洗剤に必要ならスクレイパーや下に洗剤が垂れないように敷く新聞紙、汚れものを捨てるビニール袋など。1日目はまず、考えながら何が必要か最初に書き出し、それからひとつひとつ準備していきます。1日目は【窓掃除】はしなくていいわけですから、終わりの見通しが立てやすいですよね。集中も持続できるはずです。

2日目、もう窓掃除の準備は終わっていますから、それを見れば大掃除で窓掃除をする予定だったことは思い出しますし、すぐに作業に取り掛かれます。仮に『(今日の、今の)自分の集中は40分が限度かな』と思うなら、ひと部屋の窓だけならラクに終わらせられると考えられるので、まずは目先のひと部屋の窓を終わらせ、強化子(例えば好きなお菓子を食べて15分休憩などのご褒美、報酬)を与え、次の部屋の窓掃除をするとよいと思います。

家に何十枚も窓がある人を想定していないので、ひと部屋終わるごとにお菓子を食べて15分休憩しても、1日あればすべての窓掃除が終わります(笑)。

仕事を絶対に終わらせられる小分けの量にして、「おー!できたできた終わった!頑張ってできたよ、自分」という

小さな小さな成功体験を積み重ねていくことが重要

なのです。最初に、自分自身に報酬(強化子)を与える計画を立てると話しました。←(随伴性自己強化)これは自分の好きなことで構いません。ウォーキング、友達に電話、ネット、おやつ、散歩、テレビや動画視聴など。取り掛かることや完了させることができずに悩んでいるのなら、仕事が終わったらすぐに手に入れらるような強化子を考えてみるとよいでしょう。

時間記録、時間見積にはこのような雛型があるとすぐに書き込めると思いますので参考にしてみてください。

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ADHDの課題【時間管理】について<1>

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

ADHD(重複含む)を持つほとんどの人にとって、時間管理はとても厄介な問題です。

いつの間にか時間が経っていた、時間がなくなった・・・と感じることが多いのに、やらなくてはならないことがある時に、なぜか時間が足りません。きっと時間経過に謎を感じている人も多いのではないでしょうか。忘れやすさや時間管理に衝動的な言動、衝動買い。困り感に目を向けると、ADHDには生活上困る要素がたくさんあります。

今回から数回にわたり【時間管理】についてお話していきますが、初回となる今回は、さまざまな困り感の中から【時間管理/時間を意識する、スケジュールを組む】について考えていきましょう。

①自分の中にある時間意識を改善する。

スケジュール帳を使い、あなた自身の日々の活動に必要な時間を記録していきます(起床〜身支度〜食事〜出掛けるまでなど)。

とても骨の折れる面倒な作業ですが、効率よく予定を立てるためには物事を終わらせるのに“自分は”どれくらいの時間がかかるのか見当をつける必要があるからです。常に目につくところに時計がなければ時間をうまく管理することは不可能ですから、どの部屋にも目につくところに時計を置き、支障がない範囲でできれば見やすい腕時計を身につけ、「何時かわからなかったから」という自分への甘えをなくしましょう。もちろん、置いておくだけでは時間管理はできませんから、時計を意識して見ることが大切です。

「時計なんて見なくて大丈夫」と思った途端、問題に陥ります。時間はその経過を意識して追っていかないと、知らない間に過ぎ去っていくものだからです。←結果『私の時間、どこいった?』になります。

②スケジュール帳を準備しましょう。

スケジュール帳は1冊だけにし、時間とスケジュールが書き込めるよう1マスが大きいものや、1日を時間軸で書き込めるものを選び、開くとすぐにわかるようなものにしましょう。

時間管理を身につけるために日々使うものですから、見た目や可愛さやカッコよさではなく、自分が書き込みやすく見やすいものを厳選し、その1冊に専念し途中で放り出さないようにしてください。すぐに取り出し書き込めるように、ペンホルダーをつけたり、差し込めるペンを選び、常にペンも一緒にしておきます。お気に入りの使いやすいペンや付箋を使うとモチベーションも高まると思います。

ADHDの面倒臭がりが発動すると、すぐそこにペンがなければ、わざわざペンを持ってくることや探すことすら面倒になり、結局スケジュール帳を書かなくなるか、先送り癖が出て「後で書くからいいや(本人は覚えておけるつもりでも実際忘れ去ること多→結果書かない)」になります。

今は便利なアプリもあるようですが、私は敢えてアナログな手書き、スケジュール帳を勧めています。これは『アプリは悪!』ではないので、自分に一番合ったやり方で構わないと思っています。

③やらなくてはいけないことや約束の時間など、すべてスケジュール帳に記入する。

やらなくてはいけないことや約束を書くことで、スケジュールが確約するのだと意識してみてください。

④毎日、少なくとも朝、昼、夜にスケジュール帳をチェックする。

計画なしで1日をスタートさせない癖をつけましょう。いくらスケジュール帳に書き込んでも、定期的にチェックしなければ意味がないので、チェックすることを毎日繰り返し繰り返し習慣にしてください。

夜は、翌朝にやらなくてはいけない服薬や持っていく物、提出課題、人と会う予定があるなら待ち合わせ時間や移動交通機関などの確認、朝はスケジュール帳をチェックし、やらなくてはいけないことをやり、何にどれだけ時間がかかったのかも記録します。少なくとも1日1回はスケジュール帳を更新し、完了していない項目や変更があった部分のスケジュールを立て直してください。書いて終わり、見て終わり、だと時間管理になりません。

最初はスケジュール帳をチェックするのも忘れがちかもしれないので、スケジュール帳チェックのキーワードや合図を自分の行動の中に関連付けて決めましょう。例えば・・・朝顔を洗ったら、コーヒーを淹れる時、ランチ終了後すぐ、歯磨きが終わったら、お風呂から出たら、などです。

⑤うまくスケジュールを組むコツを身につけましょう。

繰り返しおこなうこと(服薬、朝シャワーの人はシャワー、月末の請求書払い、銀行など)は毎回同じ時間に予定してください。

毎月決まった日の支払いなど、予定を立てる上でわかっていることはスケジュール帳に書き込んでおきます。難しいことや時間がかかると思われることは、最もやる気がある(疲れていない)と考えられる時に設定してください。

「自分は今とてもやる気がある、元気だ」と感じた時には、やりたいことではなく最も面倒、困難だと思われることから取り掛かりましょう。これには今まで先延ばしにしてきたことも含まれます。

面倒、困難なことに取り掛かった場合、途中で「後でまたやろう」と先延ばしにすることは止めましょう。止めたことを再開するのは、最初に取り掛かった時よりもはるかに困難だからです。

小さな事柄は“すき間時間”に組み入れます。例えば、列に並んで待っている時、バスや電車に乗っている時、お風呂に浸かっている時間やお湯を沸かしている時間、洗濯待ちをしている時間など。

スケジュールはキツキツに組まず、必ず“リラックスタイム”を挟みます。キツキツにスケジュールを組むと、焦りから抜け落ちが増えたり、息つくひまがない!という気持ちから心身疲労が高まります。

すき間時間にできる小さなことは何かを考えてみましょう。ざっくりスケジュールを立てる、郵便物を開封したり請求書を仕分ける、夕食や週末の予定を決める、読もうと思っていた本を読んだり音楽を聴く、など。

すき間時間は時間の断片です。この小さな“時間の断片”を有効活用することで時間を節約できるので、改めてこの“すき間時間”を意識し、何ができるかを考えてみましょう。スケジュール帳を見返すことで、あなたにも絶対にあるすき間時間がどこにあるのか、わかると思います。

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