緊急寄稿:新型コロナウイルスによるメンタルリスク

メンタル・イデア・ラボの代表を務めるスミです。

新型コロナウイルスの影響により、当初は首都圏や関西、福岡に緊急事態宣言が出され、今や全国に緊急事態宣言が出されるに至りました。生活が一変し、日常とは違う生活を強いられていることだろうと思います。一応来月6日までということですが、それで済むかいえば甚だ疑問です。

英国では以前より緊急事態宣言が出されており、そこで静かに社会問題化しているのがDVであることが報道されていました。恐らく虐待も増加していると想像します。

経済的に苦しくなり、徐々にメンタルが不安定になっていった結果、DVや虐待が誰の身にも起き得るということを理解しておくことが大切です。最悪の場合、離婚に発展することもあるようです。『コロナ離婚』という言葉も既に耳にします。

夫の収入が不安定になり(あるいは無くなり)、生活が維持できなくなるのではないか、これからどう生活していけばいいのか、という極度な不安がメンタルを追い詰め、DV、虐待という形で顕れることがあります。それが酷くなれば、当然一緒に生活できないとなり、離婚へ至る夫婦もあるようです。

2019年8月19日のコラムで、弊社の心理士である本城がモラルハラスメントについて書いていますので、それと合わせて読まれることをお勧めします。というのも、今の社会的・経済的不安定の状況にこそ、モラルハラスメントが顕在化し、横行し、今まで他人事だと思っていたことが突如自分の身に起きる可能性が高まるからです。

世間全体が今、我慢を強いられています。テレワーク、在宅勤務ができている人で、収入面でもそれほど心配ではなくても、夫婦関係、親子関係は別であることは肝に命じておくとよいと思います。外出自粛も相まって四六時中一緒に居れば、家庭でも多少の差はあれ、イライラが溜まってくるものです。子供も学校は休校状態であり、子供の面倒を見ながらの在宅勤務、テレワークなど、やはり心理的負担は大きいはずです。

そんな状態が毎日続くわけですから、当然イライラが溜まり、時として心にもなく、“つい”キツい言葉が出てしまうかもしれません。そこからゆっくりと気持ちのスレ違いのようなことが進行し、知らず知らずのうちに溝が出来てしまう、ことになりかねないのです。

収入面での心配が生じてしまっている場合は、よりメンタルを直撃し深刻になりやすくなります。私もリーマンショックの時などは本当に辛かったし、今思えば軽い鬱になっていたのではないかと思うくらいです。しかし今回は、それを上回る規模で景気が急速に後退しつつあります。行政機関からの休業要請もあり、支援金などの制度を活用したところで再開の目処が立たないうちは、不安はまったく払拭されません。このような状況で

どうメンタルを保てばいいのか?

これは経済的な問題と同時に重要な問題です。経済的な問題は死活問題ですから、同時にダイレクトにメンタルにも影響してきます。私がリーマンショックの時に感じた、重苦しく不安しかないメンタル状態にならないために、メンタルをいかに保って難局を乗り越えていくかが、今、最も重要なもうひとつのテーマです。

しかし『これ!』という方法はありません。ただ不安に呑み込まれないようにすることが肝要です。そのためには、

今の自分の現状を受け入れること

出来ることから行動すること(今なら行政機関の支援制度を調べ行動するなど)、

そして親など身内、知人、友人と相談も含めた世間話すること

です。これを【意識的に】おこなうことです。【意識的に】がミソです。この時、心配をかけたくないとか、見栄、羞恥心は最大の敵になるので、そういう類の感情は早く捨てたほうがいいと思われます。社会全体が有事なのですから、ヘンにカッコ付けるのは危険です。社会全体が有事だからこそ、むしろ共感が得られやすいかもしれません。

共感できる人や共感し合える人がいることは、メンタルにとって非常に重要なことです。

どうか共感し合える人を一人でもいいので見つけてほしいと思います。決して独りで抱え込まないことが肝要です。

このように、自分ができる小さなことを行動に移すことで、不安に呑み込まれにくくなります。ただし、不安が解消されるわけではないことに注意してください。不安に呑み込まれにくくなることで、少しずつ出来ることが見えてきたり、夫婦や恋人との会話であれば、思わず前向きな言葉が出てくるかもしれません。こういう時、夫婦や恋人は戦友のように共に励まし、助け合う関係になり、絆がさらに深まる機会でもあります。単身であれば仲間同士で励まし合い、信頼関係が一層深まる機会でもあります。つまり、こういう時は

孤立化しないこと

が重要です。孤立化しなければ、メンタルが不安に呑み込まれにくくなり、深刻な状態に至らない予防になり得ます。

今、新型コロナウイルスに感染しないことが最も重要なことですが、次に重要なのは、意外と見落としがちな【メンタルをいかに保つか?】です。今こそ自分のメンタルのしなやかさが問われています。

メンタルは不安に駆られているうちに壊れていきます。メンタルが壊れてしまっては、出来ることすらする気がなくなります。つまり気力が奪われます。さらに心がささくれ立ち、今まで築き上げた人間関係すら壊してしまうことになりかねません。

この度のことは長期戦が予想されます。この長期戦を乗り越えるには、

自らのメンタルに目を向け、気力を奪われないように、メンタルを自己管理すること

が重要です。

その方法のヒントについては、以前の本コラムに本城が書いていますので参考までに記載しておきます。

2020年1月15日コラム

2019年11月20日コラム

2019年11月15日コラム

2019年10月31日コラム

2019年9月21日コラム

上記以外にもヒントになるコラムがあるかもしれません。どうぞ参考にしてみてください。

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エゴグラムで自分を知ろう【後篇】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前篇では質問に答えて点数を出してもらい、グラフに書き込んでもらいました。

エゴグラムは善悪を判断したり、優劣を決めたりするテストではありません。

私たちは、一人ひとりが

自らが持つ感情・思考・行動の総責任者

です。そして、

過去も他者も変わらない

が事実です。ならば、

自分を変えるほうが【生産的】

ですよね。

そのためには、まず自分を知らなくては始まりません。

自分を知るひとつの材料として、前篇で記載した簡易エゴグラムを上手に活用し、『へぇ、自分ってこんな面があったのか。こんなふうに心掛けるといいんだな』に気付いてもらえると良いな、と思っています。また、新型コロナウイルスの影響でさまざまに環境が変わった人が多いと思います。こういう時こそ自分を知り、この難局とどう向き合うか、自分に合った方法を見出す機会にしてもらえたら幸いです。

5つの要素から【やめたい言葉/態度】、【心掛けたい言葉/態度】と説明していきます。前篇での低い点数の部分を意識的に高めていくことが改善に繋がります。

<CP>
【やめたい言葉】
・「私は関心ない」「どうでもいい」「何とかなるだろう」など。

【やめたい態度】
・自分の考えや意見を持とうとしない無関心。
・ミスを注意せず、やり過ごす。
・約束やルールをいい加減に考えて守らない。
・遠慮ばかりする、すぐに諦める。

【心掛けたい言葉】
・「私は〇〇だと思います」とはっきり考えや意見を述べる。
・「〇〇が好きです」「〇〇は苦手です」と言える。

【心掛けたい態度】
・決めたことをきちんとやる。
・時間や金銭的なことを管理する。
・物事は自分の責任で決める。
・何ごとも最後までやり切る。
・これでよいのかセルフチェックをする。
<NP>
【やめたい言葉】
・「それじゃダメ」「しっかりして」「何やってるんだ」など。

【やめたい態度】
・相手の気持ちや感情を考えない自分勝手な態度。
・一方的に自分だけが話す。
・ヘルプやサポートをしない。

【心掛けたい言葉】
・「よくできたよ」など良い点を褒める。
・「困ってることはない?」と相手を思いやり気遣う。
・ネガティブワードをポジティブワードに置き換える。→「これじゃダメ」を「こうすればもっと良くなるね」など。
・相手を思いやり、気遣う言葉を多用する。

【心掛けたい態度】
・自分から挨拶をしたり声を掛ける。
・良い点に気付いたら、すぐに褒める。
・相手の話に相槌をうち、個人的関心を示す。
<A>
【やめたい言葉】
・「わかりません」「知りません」「できません」。
・「でも」「だって」「だから」を減らす。
・相手に興味を示さず「興味ありません」など。

【やめたい態度】
・直ぐに感情的に反応する。
・反省しない。
・「なぜ?」「どうやれば?」に関心がない。
・最後まで他者の話を聞かない。
・時事問題に関心がない。ニュースを見ない、社説を読まない。

【心掛けたい言葉】
・「あなたが言いたいことは〇〇という意味ですか(ね)」と確認する。
・「もう一度お願いします」「詳しく説明してもらえますか」など。

【心掛けたい態度】
・伝えたいことやしたいことを文章化。
・自分の行動の無駄を見直す。
・何ごとも当たり前と考えず、疑問を持ち調べる。
・同じ場面で、自分以外の他者はどうするかを考える。
<FC>
【やめたい言葉】
・「嫌だ」「つまらない」「面白くない」「楽しくない」など。

【やめたい態度】
・ため息をつく。
・舌打ちをする。
・嫌な気持ちにいつまでも浸る。
・楽しい会話に加わらない。
・受け身ばかりの姿勢。

【心掛けたい言葉】
・「面白そうだね」「やってみようかな」。
・感嘆詞を使う、など。

【心掛けたい態度】
・長時間、不快感情に浸らない。
・楽しい、嬉しい、美味しいという気持ちを表現する。
・友人、恋人、家族と一緒に過ごし、豊かな感情を持つ。

ACについては、今回は飽くまで自分を知る目的のためにエゴグラムを活用するので、敢えてAC行動を増やすところに目を向ける必要はないと考えます。

どうでしたか?明日からすぐにやれることもあると思います。あなたのほんの小さな変化を身近な人は気付くものですし、それがプラス変化だと、自分も周りも幸せな気持ちになれるものです。

円滑な人間関係を築く、そのために長い付き合いになる自分にもう少し目を向けてみる

と、案外『あ、自分って良いとこあるじゃん』にも気付けるかもしれません。

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エゴグラムで自分を知ろう<前篇>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回は自分を知る(自己分析)のひとつの手段として、誰でも簡単にできるエゴグラムについてお話します。

性格は親から受け継いだ気質、育った環境、積み重ねてきた経験など、さまざまな要素で作り上げられています。エゴグラムでは、性格は【親の自分(P)】【大人の自分(A)】【子供の自分(C)】の3つを柱に、それをさらに【5つの私】に分けた性格から成り立っていると考えます。

エゴグラムを活用することで、今の自分の心の働きを客観的に知り、より良い望む方向へ自分を変えていくことができます。

  • CP:批判的な親
  • NP:養護的な親
  • A:合理的な大人
  • FC:自由な子供
  • AC:従順な子供

という分類に分けて各10問に、はい(○)、どちらでもない(△)、いいえ(×)で答え、○=2点、△=1点、×=0点で計算し、下のグラフに書き込みます。

それでは質問です。

<CP>
①何事もきちんとしないと気が済まないほうだ。
②人が間違ったことをした時に、なかなか許せない。
③自分は責任感が強いと思う。
④自分の考えや意見を譲らないで、最後まで主張し押し通そうとする。
⑤礼儀作法やルールに厳しい。
⑥何事もやり始めたら最後までやり切らないと気が済まない。
⑦上の人からの指示や意見には従う。
⑧「〜しなくてはいけない」「〜すべき」という言い方をよくする。
⑨時間やお金にルーズだと許せない。
⑩自分が親になったら子供を厳しく育てると思う。
<NP>
①人から道を聞かれたら親切に教える。
②人を褒めることがよくある。
③人の世話をしたり面倒をみるのが好き。
④人の短所より長所を見るようにしている。
⑤気落ちしている人がいたら、慰めたり元気づけようとする。
⑥人のために何かをすることが好き。
⑦頼まれたり助けを求められたら断れず引き受ける。
⑧失敗した人がいても、からかったり責めたりせず許せる。
⑨自分より弱者に対し、思いやりを持ち優しく接する。
⑩困っている人には積極的に助ける。
<A>
①いろいろな本を読む。
②上手くいかないことがあってもイライラしたりカッとしない。
③何かを決める時には人の意見も聞く。
④初めてのことに取り組む時にはよく調べる。
⑤何かをする場合、自分にとって損得をよく考える。
⑥わからないことや知らないことがあると、人に聞いたり相談できる。
⑦体調が悪い時に無理をしないよう気をつけられる。
⑧感情的にならず他者と冷静に話し合いができる。
⑨仕事や勉強をテキパキ片付けていくほうだ。
⑩迷信や占いは絶対に信じない。
<FC>
①楽しいことやオシャレが好き。
②騒いだりはしゃいだりすることが好き。
③「わぁ」「すごいね!」などの感嘆詞をよく使う。
④言いたいことは遠慮なく言う。
⑤嬉しい、悲しい時などに表情や動作で自由に表現する。
⑥欲しいものは手に入れないと気が済まない。
⑦誰とでもすぐに打ち解け話ができる。
⑧絵を描いたり歌ったり、自分を表現することが好き。
⑨嫌なことは、はっきり嫌と言う。
⑩人の好き嫌いは、あまりないほうだ。
<AC>
①人の顔色や行動を気にする。
②自分の気持ちを抑えてしまう。
③劣等感が強い。
④頼まれてもすぐにやらず、引き延ばす癖がある。
⑤人からよく思われようと無理をすることがある。
⑥他者の言うことに影響されやすい。
⑦憂鬱な気持ちになることが多い。
⑧消極的で遠慮がち、引っ込み思案である。
⑨他者の機嫌を取ろうとすることがある。
⑩内心不満があっても、表面では満足しているように振る舞う。

以上です。

グラフに書き込み、高いところ、低いところに目を向けてみましょう。

最も高いところは『あなたらしさ』に繋がっている部分ですので、そこを変えるのは無理があります。低い部分を高めることで全体のバランスが良くなります。

ここでわかりやすくそれぞれが持つ長所、短所をみてみましょう。

<CP>
長所:責任感が強い、ルールやマナーを守る。
短所:批判的、偏見や思い込みが強い。
<NP>
長所:面倒見がよい、親切。
短所:お節介、甘やかす。
<A>
長所:合理的、計画性がある。
短所:機械的、人間味に欠ける。
<PC>
長所:元気がある、明るい、ユーモアがある、人懐っこい。
短所:自己中心的、感情的、ワガママ。
<AC>
長所:協調性がある、慎重。
短所:依存的、本心がわからない。

低い部分を高めようとする時、自分の中に、ある種の“抵抗”を感じるはずです。変化を妨げようとするのは、ほとんどの場合、一番高い部分です。そのジレンマが生まれるのは自然なことだと理解し、無理のない範囲で取り組んでいくことが大切です。

後篇では、それぞれを伸ばすために心掛けたい言動についてお話します。

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在宅勤務、いかがですか?

メンタル・イデア・ラボの代表を務めるスミです。

世間は新型コロナウイルスの影響でテレワークを実施している企業もあると聞きます。要は在宅勤務ですね。インターネットのニュースでは在宅勤務で逆に『孤立化』が進行しているケースもあるとか。あるいは自宅待機(休日とは違い自宅に居るという勤務状態)を命じられ、いつ会社から連絡が入ってもいいように自宅に居なければならず、それが却ってストレスに感じる職種の人もいるようです。

いずれにしても、慣れないことを強いられているので無理もありません。新型コロナウイルスの影響はメンタルのバランスにも及んでいるようです。

在宅勤務だからといって、企業は安心することは禁物です。在宅勤務だからこそ、新型コロナウイルスの感染リスクは避けられるとしても、上記のような慣れないことでメンタルのバランスを崩す従業員が出るとも限りません。

例えばインターネットのニュースにもあった

在宅勤務による『孤立化』

とはどういうことか?

いつもは毎朝出勤し、上司、同僚、部下、先輩、後輩、顧客などに囲まれて仕事をしています。周囲の人の進捗状況を見たり、コミュニケーションを取りながら仕事をしているわけです。言葉を交わさずとも、そばに人がいる、という職場そのものが孤立化しない環境に自動的になっています。

しかし在宅勤務は、周囲にそんな人はいません。それは何を意味するかというと、周囲の人の進捗状況はわかりにくく、言葉や表情など直接的なコミュニケーションもほぼ取れない状態に陥るということです。コミュニケーションとは言葉を交わすことだけではありません。相手の顔色や態度、表情など、言葉以外の情報を瞬時に整理することもコミュニケーションなのです。それを【ノンバーバルコミュニケーション】といいます。このノンバーバルコミュニケーションがほぼ取れない状態が在宅勤務です。

ノンバーバルコミュニケーションがほぼ取れない環境で考えられるリスクとして、周囲に迷惑をかけないようにしようと無理(あるいは無駄)に仕事をしてしまう、あるいは見えないプレッシャーに常に晒されるなどが考えられます。そういう人は一定数必ず出てくるでしょう。また子育てや介護、家事をしながら業務もしっかり遂行しなければいけないプレッシャーに強い焦りや苛立ちを感じる人も出てくるかもしれません。

仕事の場と生活の場が同じという環境での精神的両立は、かなりのストレスを要することは容易に想像できます。

こうしたことが複合的に絡み合い、やがてメンタルのバランスを崩してしまう人は確実に出てくるでしょう。

崩してしまうと、崩す前に戻すにはかなり時間を要し、場合によっては医療機関を受診する事態になります。そうなっては、従業員の社会復帰は相当難しくなります。

企業はこうしたリスクを考慮しなければなりません。

企業は従業員が完全にメンタルのバランスを崩してしまう前に、適切な対応をおこなう必要があります。

企業の適切な対応には、日頃から従業員のメンタルをしっかりとケアし、サポートする態勢を整えておくことがあります。それは従業員が身体疾患同様、精神疾患で医療機関にかからないように、例えば私たちのような医療機関や行政機関とも連携するメンタルの専門家である心理士を活用し、

予防的【砦】を確保すること

というものです。

産業医に相談することを推奨することも悪くありませんが、医療機関の受診へと進んでしまう恐れがあり、一見安心に思えても、それは予防ではなく疾患となり、通院する負担や処方薬を手放せなくなるなど、従業員のクオリティ・オブ・ライフに何らかの影響を及ぼします。

在宅勤務は皮肉にも今回の新型コロナウイルスが契機となって、これから新たな働き方として広く普及・定着するかもしれません。そうなれば、顔を合わせないリスクの対策として、コミュニケーションをどう円滑化するか、メンタルのバランスをいかに保つか、保たせるか、がこれからの企業の人事課題、労務課題になってくるのではないでしょうか。今からでも決して遅くはありません。

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自律訓練法<後篇>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

後篇は、標準公式に次いで黙想練習についてお話します。

黙想練習は、常日頃の言語的論理思考からイメージによる視覚的思考をおこなっていくものです。第一黙想練習から第四黙想練習まであります。

かなり難しいです(笑)自律性状態を30分以上維持しなくてはいけませんし、うっかり寝てしまわないように気を付ける必要もあります。

自律状態とは、前篇で練習した①〜⑥の公式を身に付けていることで、黙想練習に取り掛かるためには、その状態へ短時間で移行できること、その状態を長時間保つことができないと・・・寝てしまいます。つい寝てしまいます。

私も5回に1回は寝てしまいました(笑)

それでは第一黙想練習(自発的色彩心象視)に取り組んでみましょう。

この練習は、目を閉じた時に視覚的イメージに自然に現れてくる色彩を意識してみるものです。

瞼の裏をスクリーンとして、色を感じるイメージです。

標準練習(前篇の①〜⑥)によって、四肢や練習部位に自然に意識を向け集中します。そして閉じた瞼の裏へ自然に意識を向けていくと(無理やり見ようとするものではありません)瞼の裏をスクリーンに、色が浮かび上がってきませんか?色を感じている、という表現が近いかもしれません。

いきなり全面に色が現れず、端のほうにだけ現れたり、次々と色が変わったり、複数の色が混ざり合って現れたり、さまざまな現れ方がみられます。焦点を合わせようとすると頭痛が起きたり、気持ち悪くなったりするので、飽くまで“色を感じる”を意識してください。

練習を繰り返していくと、視野全体に単一の色が瞼の裏というスクリーンに安定して見られるようになり、時間も長く維持できるようになります。

この色彩は人により異なり、個人色(パーソナルカラー)と言われます。この個人色は、似合う似合わないというパーソナルカラー、衣類のパーソナルカラー診断などとはまったく違うものです。私の個人色は薄青でした。

黙想練習の時間は40〜60分ですが、終了してみると日によって短く感じたり、いつもより長く感じることもあります。標準練習から引き続きおこなうと時間も必要になるので、うっかり寝てしまっても大丈夫なようにタイマーをセットしておくとよいでしょう。本来はうっかり寝てしまうと意味がなくなるので、覚醒していながら心身はリラックスしている状態を長く維持しなくてはならず、そのために<前篇>の標準練習が重要になってきます。

したがって、疲れ果ててグダグダな時には標準練習も黙想練習をするには良いタイミングではないということになります。

次に第二黙想練習(特定色彩心象視)に進んでみましょう。この練習は本来スーパーバイザー(指導者)が指定した色が見えるようになるための練習ですが、第一黙想で個人色が安定してイメージとして現れるようになってからの次のステップです。

スーパーバイザーがいなければ近しい人が指定する色を目指してもいいと思いますが、その場合、個人色に近い色を選択すると取り組みやすいでしょう。

自発的個人色が【青】であれば【青紫】【青緑】、【黄緑】であれば【黄】【緑】のような具合です。

こうしてイメージできる色のレパートリーを増やしていきます。指定された色がスクリーンに現れにくい時は、その色と関連した具体物をイメージしてみてください。例えば、【赤】を瞼スクリーンに見えにくければ、リンゴを思い浮かべる・・・という補助手段を取ります。

ここで大切なのは、飽くまで色彩に意識を向けることが第二黙想練習なので、リンゴという形態には捉われないということです。リンゴに意識が向き、詳細イメージをしないように気を付けるという意味で、目的は瞼スクリーンに【赤】をイメージし写し出せること、だからです。

第一黙想練習で2〜4週間、第二黙想練習では2週間〜半年程度と、人によりかなりの差があります。練習しても自転車になかなか乗れるようにならない人と、なぜかあっという間にコツを掴み乗れるようになる人の違いくらいと思ってもらえればいいでしょう。

次に第三黙想練習(具体物心象視)です。

この練習は特定の何かを見ようするものではなく、自発的色彩心象視のように、色彩の代わりに具体物が自然に閉じた瞼のスクリーンに現れてくるのを待ちます。

雑念から普段使っている馴染み深いコップが浮かぶ・・・ではなく、具体物は一般的なものとして見えてくるものが良いです。日常的な具体物として、例えば自転車、ペン、トイレットペーパーなどを選びましょう。具体物は人によりさまざまですので、やはり誰かが選んだものを心象視することが良いかもしれません。

はっきり具体物の心象視ができるようになってから、第四黙想練習(抽象概念心象視)に進みます。

抽象概念、ただでさえ難しいものを心象視しスクリーンに現れるようにするわけですから、ここはとても時間がかかる部分です。

『感情』『平和』『危険』『愛』『自由』『親切』『情熱』『平等』など、その人自身の中にある抽象的な概念を視覚化(閉じた瞼の裏スクリーン)していきます。これもスーパーバイザー的な人にお願いして、どんな抽象的なワードでどのような場面や絵、写真が浮かんだのか記録を詳細に取っていきます。

一連の黙想練習(心象視)の最終的テーマは、

自分の存在はどういったものだろうか?

自分の役割は?

自分にある最大の問題は何?

最も腹立たしいことは何だろう?

どうすれば今より良くなるか?

などを受動的注意集中を維持しながらイメージすることで、幾つもものステップを踏みながら、心身リラックス状態で落ち着いて考えられるようになるための訓練と言えます。

前篇の標準練習だけでも自律神経失調症には効果がありますので、ユルユルと取り組んでみてはいかがでしょうか。

自律訓練法<前篇>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回から自律訓練法について前篇、後篇に分けてお話します。

まず自律訓練法とは、ドイツの精神科医シュルツが【自然なリラックス状態の特徴が安静感、四肢の温感、重感(後述)】であることを発見したことから、それらの感覚を段階的に身に付けていくことで、心身のリラックスを得る目的として考えられた練習です。基本練習として標準練習が①〜⑥があり、次いで黙想練習、自律性修正法、自律性中和法、時間感覚練習、空間感練習、自律行動療法、自律フィードバック訓練法と進めていきます。

前篇では標準練習の公式⑥までを、後篇では黙想練習についてお話します。

標準練習は、公式化されたワードを反復暗唱しながら意識を集中させ、関連する身体部位に意識を向け、段階的に生体機能のチューニングを図るものです。

自律訓練法は、心身の緊張を和らげリラックスさせるものですが、残念ながら練習を始めたからといって、すぐに効果が表れるものではありません。

まず、標準練習を始める前にどのような環境でおこなうのが効果的かをお話します。

▶︎外界刺激の少ない場所で、適度な明るさと心地よい温度、静かな環境がよいでしょう。私は寝る前の静かな部屋で茶香炉を焚きながらおこなっています。

▶︎身体を圧迫する衣類ではなく、ネクタイやベルトなどは外したほうが集中しやすいと思います。

▶︎生体症状にも意識を向けていくので、空腹時、満腹時を避け、お手洗いも済ませておきましょう。

リラックスできる体勢であれば特に決まりはありません。ベッドに横になる、お気に入りの座りやすい椅子に座る、座禅・・・集中しやすくラクな体勢を考えてみてください。ただ、いくらリラックスできるといっても入浴中はオススメできません。

標準練習①〜⑥のベースになる練習として、気分を落ち着かせる、あるいはクールダウンさせるための【安静練習】ということから始めます。

リラックスした状態で、例えば『私は今とても穏やかな気持ちでいる』など、自分なりに気持ちをクールダウンさせる言葉を繰り返し暗唱していきます。環境音楽を流しながら、お気に入りのアロマを焚きながらでもいいでしょう。

ここで大切なのが『落ち着かなきゃ』と努力するのではなく、雑念が浮かんでも構いません。そのままの状態で心の片隅で『私は気持ちが落ち着いている』という言葉を繰り返していくだけで大丈夫です。

安静練習も標準練習も心の中で公式ワードの暗唱なので声に出す必要はありません。誰も見ていませんが、ブツブツ言っているとかなり怪しい人です(笑)安静練習の後から標準練習に入ります。

力を抜いたラクな体勢から・・・

①重感練習
『両腕・両足が重たい』
利き腕から始め、反対の腕に組み、足も同じように進めます。この重感とは、力が抜けてリラックスした時に感じる感覚を指し、人によっては『重だるい』『下に引っ張られる感じ』など感じ方はさまざまです。

公式ワード例:【右腕が重たい、左腕が重たい】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。足も同様に。

②温感練習
『両腕・両足が温かい』
重感練習により四肢の筋肉が弛緩すると、血流量の増大から皮膚温の上昇など生理的変化を得やすくなります。ここでも利き腕から順に進めていき、練習順序は、安静練習→重感練習→安静練習→温感練習となります。

公式ワード例:【右腕が温かい、左腕が温かい】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。足も同様に。

ここからは持病がある人には注意が必要となるので、主治医に相談しながらおこなうようにしましょう。

③心臓調整練習
『心臓が静かに規則正しく脈打っている』
『心臓が自然に脈打っている』
重・温感練習が十分習得できるようになると、脈拍数は減少し、落ち着いた状態になっていることが多いので、練習というより“静かに規則正しく脈打つ自分の心臓の状態”に意識を向け、気づく練習になります。いずれお話するマインドフルネスでも役立つので意識してみてください。

公式ワード例:【心臓が静かに規則正しく脈打っている】【心臓が自然に脈打っている】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。

④呼吸調整練習
『自然に呼吸(いき)している』
『とてもラクに呼吸(いき)している』
③の心臓調整練習と同じように呼吸に意識を向けるのですが、呼吸は随意神経と不随意神経から二重支配を受けているため、この練習を始めると呼吸に注意が向き過ぎて不自然になってしまうことがあります。そのような時は、呼吸に軽く注意を向けて練習をし、不自然、違和感を感じない程度にしてください。

公式ワード例:【自然に呼吸(いき)している】【とてもラクに呼吸(いき)している】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。

⑤腹部温感練習・内臓調整練習
『お腹が温かい』
『胃のあたりが温かい』
これは消化管や内臓機能のチューニングを狙ったもので、心理生理的に四肢温感練習とともに緊張緩和効果、中枢神経活動への鎮静効果が高いので、ストレス過多、過敏の改善に効果があります。右手を軽くお腹に当て、右手の温かい感じがお腹へと伝わっていくというイメージを浮かべて練習するとわかりやすいと思います。

公式ワード例:【お腹が温かい】【胃のあたりが温かい】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。

⑥額涼感練習
『額が心地よく涼しい』
腹部温感練習までが、心理的リラックス効果と鎮静、生理的に筋弛緩と血管拡張を狙った練習でしたが、これは逆に適度な内的覚醒と緊張という俗に言われる“頭感足熱”状態を作り出す目的があります。と同時に、標準練習をまとめ上げる効果もあります。

公式ワード例:【額が心地よく涼しい】と心の中で暗唱しながら、ゆっくり自己暗示をかける。

この練習をする際に注意していただきたいことがあり、額の一部に注意を固定したり「涼しい」の代わりに「冷たい」という言葉を使わないようにしてください。感覚がわかりにくい人は、額を濡れタオルで軽く拭いてみたり、そよ風が額を撫でていくイメージを浮かべてみてください。

以上をまとめて練習する場合は、

安静練習→重感練習→安静練習→温感練習→安静練習→心臓調整練習→安静練習→呼吸調整練習→安静練習→腹部温感練習→安静練習→額涼感練習→消去動作

と進めてください。

消去動作とは、両手開閉運動や両肘屈伸、背伸びや深呼吸をして最後に目を開ける・・・で、練習終わりにすぐ目を開けたり、立ち上がろうとして目眩などの不快症状を避けるためにおこなう動作ですので、練習の終わりに取り入れてください。

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「少々お待ちください」の『少々』とは?

メンタル・イデア・ラボを運営する有限会社時遊区のスミです。今回は本城に代わり、書かせていただきます。ちなみに私は本城のような心理学の専門家ではなく素人です。たまにこういうことがあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

先日、某銀行に所用のため行きました。普段はATMで済ますところ、この時は窓口でしかできないことだったため、例によって番号札を引き、番号が呼ばれるまで待っていました。店内には数人の客しかおらず、すぐに呼ばれました。ここまでは至って通常の流れです。

相談用のブースに呼ばれ書類を出しながら行員に説明しました。その後行員は、その書類を確認しながら、

「少々お待ちください」

と言って、奥の事務スペースへと消えて行きました。ここまでもよくあることなので、素直に従って待ちました。

10分程度してもなかなか行員は戻ってきません。15分経ちましたが音沙汰無しです。まさか忘れられている?と不安になりつつ、フロアにいるスタッフに聞いてもらうように言いました。

やっと戻ってきたと思ったら、

「少々お待ちください」

と言われます。『何してんだ?』とココロの中で思いながら、さらに待つことに。

既に最初に言われてから30分以上は経った頃、さすがに『少々お待ちください』のレベルではないなと思い、また10分ぐらいで済むと思っていたので、その後にアポイントを入れていました。しかし時間をズラしてもらうべく先方に電話する様相になってきたため、焦ってきました。フロアにいるスタッフに言って、再度行員を呼んでもらうと、

「少々お待ちください」

と、まだ言うではありませんか!もう30分以上は待っていることをわかって言っているのかという不快感が、ついに私に言わせてしまいました。

「さっきから少々少々って言うけど、アナタの少々は何分だ?」

特に客で混雑しているわけでもないし、書類は前日のうちに銀行に確認して持参してきているわけだから不備はないはず。結局1時間ぐらいかかって銀行を後にしました。

この「少々お待ちください」の『少々』は人によって感覚が違うので、曖昧といえば曖昧です。対面で「少々お待ちください」と言われたら5分以内、電話だともっと短くなって1分以内、というのが私の感覚です。待たせることが長引きそうだと判断できるのは、この場合行員なので素直に理由を言ってくれたら、と思いました。なぜ私が苛立ちを覚えたのかを冷静に振り返った時、大きく3つの要因が考えられました。この場合、対応した行員の意思は関係ありません。

  • 行員と私の『少々』という時間感覚の著しい相違。
  • 理由を知らせないまま漠然と待たせている無神経さ。
  • 他人の時間を無意識に搾取している行員の傲慢さ。

これらの要因が私の中で同時混在的に生まれていたのです。

「少々お待ちください」という口調は丁寧でも、そう言っておけば大丈夫だろう、待ってくれるだろう、と思い込んでいることが透けて見えると言えなくもありません。簡単に言えば、自己中心な発想や行為を丁寧な口調でオブラートに包んで、悪意なく相手に押し付けているだけです。普段何気なく使っている「少々お待ちください」ですが、その時留意すべきは、相手に

時間を搾取されていると思われない範囲

ということだろうと思います。長引きそうな事情が判明した時は、速やかに理由を言い、待つか、待たないかの

判断は相手に選択させること。

似たようなことは電車が止まった時の車内や駅構内アナウンスで「しばらくお待ちください」がありますね。この場合、いくら理由を言われても結果待つしかないことがほとんどですが、漠然と待たされるより、理由や見通しを知って待つほうが気持ちの整理ができます。つまり、人を待たせる時は、

気持ちを整理できる情報を与えること

が非常に重要になってくるように思います。

ただ漠然と人を待たせると、人は不愉快になり怒りが芽生えるものだということは経験的に分かっているはずなので、開示できる範囲で情報を提供することが肝心だと思います。

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認知の歪みって?

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

最近は認知症という意味だけでなく、“認知”“認知の歪み”という単語もよく聞くようになってきましたよね。

今回は中学生でもわかる内容で、“認知の歪み”について、とても簡単にわかりやすく説明しようと思います。

認知とは平たく言うと、

その人のものの捉え方 

その人の持つ思考スタイル

と言えます。それでは“認知の歪み”とは一体どんなものなのでしょうか。

読者の皆さんは、こんなところはありませんか?

  • 一度失敗したら二度と挑戦しようとしない。
  • 「いつも」「絶対に」ダメだと思ってしまう。
  • ついネガティブな想像をしてしまう。
  • 100点でなければ0点も同じだと考える。
  • 理由は特にないのに自信がない。

それは、もしかしたら“認知の歪み”が原因で引き起こされているかもしれません。

例えば会社でAさんがBさんに挨拶をして、Bさんから返答がなかったとしましょう。Aさんが『Bさんは私をわざと無視した!』と考えれば“怒り”が生まれます。怒りが生まれると、今度はAさんがBさんを無視したり、嫌な態度を取るかもしれません。こうした思考スタイルが重なって人間関係がギクシャクしていくこともあります。

もしAさんが『私の声が小さくて聞こえなかったのかも』『Bさんは何かに夢中だったのかも』などと考えれば、怒りは生まれませんよね。怒りが生まれなければAさんはBさんを無視したり、冷たくすることはないでしょう。

『私は何をやってもダメだから、次も絶対うまくいかない』

『前に失敗したからまた失敗する』

『周りのみんなに嫌われてるに違いない』

など、

現実に違うかもしれない思い込みや捉え方、考え方を“認知の歪み”と呼びます。

誰でも落ち込むことはありますし、落ち込んだ時にネガティブになってしまうことはありますが、それが毎日続いて気持ちがツラくなっていませんか?

認知の歪みは自覚するだけでも効果があります。もし出来そうなら、他の考え方や捉え方を探してみましょう。

一人では難しいので、家族や信頼できる身近な人に自分の考え方について客観的にアドバイスをもらったり、専門家に相談することもオススメです。

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人間関係の距離感<後篇>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前篇に続き人間関係の距離感<後篇>、心理的パーソナル・スペースについてお話しようと思います。

物理的パーソナル・スペースはもちろんですが、それ以上に心理的パーソナル・スペースは人により、とても幅があります。

誰でも友好的で人見知りをしないように見える人でも、心理的パーソナル・スペースがとても広い人もいますし、人見知りで取っ付きにくく感じても、心理的パーソナル・スペースが狭い人もいます。

心理的パーソナル・スペースは誰にでもあるもので、その広い狭いは、自分との関係性によって距離を変化させるものと言われ、見た目だけではまったくわからないということを覚えておくとよいかもしれません。

本題に入る前に・・・。

このコラムでよく使う単語に【他者】という言葉があります。他人と他者、同じ意味ですが少しだけ受け取るニュアンスが違うと思います。

親子、兄弟姉妹、夫婦関係では日常的に“他人”という言い方はあまりしませんし、恋人同士で“他人”と言われると、よそよそしく感じてしまいます。“他人”という表現は、自分や自分と親しい人以外、というニュアンスを感じませんか?

一方“他者”は、自分以外すべての人なので、それこそどんなにおしどり夫婦でもピーナッツ親子でも、仲良しカップルでも“自分”以外は他者になります。

この“他人”と“他者”という表現の違いを頭の端に置きながら読んでみると、なぜ他者という言い方をするのかや、“他人”という言い方をした時に感じる違和感を見つけられるかもしれません。

多くのクライエントと話をし、関わってきた中で気付いたことがあります。それは、他者との距離の取り方には幾つかのタイプがあるようだ、ということです。その中で人間関係が拗れやすいタイプを4つに分けてみました。

①自分だけの都合で近づいたり離れたりする、気まぐれな<彗星タイプ>

②ふとした瞬間に(無意識的、意識的関係なく)他者の領域に踏み込む<地雷踏み抜きタイプ>

③近づかないのに遠い所から干渉してくる<マジックハンドタイプ>

④常に領域無視でガンガン踏み込んでくる<無神経タイプ>

自分の周りを思い浮かべながら、どれかに当てはまる人はいないか考えてみてください。

人間関係を上手に構築、持続していっている人を見ると、相手との間柄(関係性)、心的距離を考慮して意識的に『これは聞いちゃダメだ』『ここまで仲良くなったから聞いても(話しても)大丈夫だな』『仲良くなったけど、この話は話題にしないほうがいいかも』などを、人や場面に応じて上手く振り分けて話をしています。

心理的パーソナル・スペースは、仕事やその場でしか関わらない第三者、あまり親しくない他者に対しては広く、恋人やパートナー、親友など親密な他者に対しては狭い人が多いようです。

心理的パーソナル・スペースが広い人には傾向があります。

▶︎自分のペースを守りたい、他者に合わせるより自分のやり方を大切にしたい人。

▶︎人見知りで内向的な人や、元々一人の時間が好きな人。

▶︎自分に近づく危険から自分を守るため、トラブルになりそうな苦手なタイプとは、あまり関わらない人。

・・・なので、警戒心が強く、打ち解けるまでには時間がかかります。また、口出しされたり、自分のやり方を指摘されることが苦手で、集団行動が得意ではない人も多いようです。慎重で心配性、何事も納得がいくまで確認したいと考える、他者に急かされるのが苦手な人も心理的パーソナル・スペースを広く取る傾向があります。

警戒心が強く、自分を守るために縄張り(パーソナル・スペース)をしっかり確保しておきたいと考える人は、苦手な人を絶対に自分の心理的パーソナル・スペースに入れようとはしません。

マイルールや拘りが強く表れるASDの人にも心理的パーソナル・スペースが広い人が多く(ASDのタイプにより個人差がある)、それは、自分の価値観を否定される(かもしれない)ことを強いストレスと感じるからです。

心理的パーソナル・スペースが広い人には、相手のペースを尊重し、適度な心理的パーソナル・スペースを保ちながら、互いの距離を時間をかけて縮めていくことを心掛けると円滑な人間関係が築けるはずです。

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人間関係の距離感<前篇>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

人は皆それぞれ違う人間関係を築きながら、社会生活を送っています。そこで、今回は前篇【物理的距離感】、後篇【心的距離感】で、“人間関係でほどよい距離感”についてお話しようと思います。

私たちは不快感を避けるために、他者やモノとの間に無意識のうちに取ろうとする距離があり、それを

パーソナル・スペース(個人空間)

と言います。

その人を取り囲む空間において、他者が踏み込まない(踏み込んでほしくない)空間を指します。

パーソナル・スペースには物理的距離と心的距離があり、前篇の今回は物理的距離についてのお話です。

下の図を参考にしてください。

図における、それぞれの距離についての補足説明。

【密接距離】
夫婦や家族、恋人、パートナーといった近親な関係。→見知らぬ人が入ると不快に感じる。

【個人距離】
友人関係の他、医師や美容師など社会生活を送る中で近い距離で関わらざるを得ない関係。

【社会距離】
会社の上司や同僚など、言葉でのコミュニケーションが可能な距離。

【公的距離】
個人的コミュニケーションはほぼ不可能な距離。

また図が円ではなく楕円である理由は、例えば自分にとって同じ個人距離内にいる人であっても、相手によっては差があるからです。つまり、自分にとって『密接距離に近い人』か『社会距離に近い人』か、といった具合です。相手が“片思いの人”の場合と“いい人”の場合をイメージすればわかりやすいでしょうか(笑)

精神分析学の父と言われるフロイトが、寓話を元に考えた人間関係についての例え話で、心理学では有名な【ヤマアラシのジレンマ】というものがあります。

日本では、エヴァンゲリオンでも話が出た【ハリネズミのジレンマ】ですが、耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。ヤマアラシでもハリネズミでも同じ例えです(笑)

【ヤマアラシのジレンマ】

ある冬の寒い夜、2匹のヤマアラシが寄り添って暖め合おうとしますが、近過ぎると互いの持つ鋭いトゲで体を傷つけてしまい、離れ過ぎると寒さに震えてしまいます。寄り添ってみたり離れてみたりを繰り返すうちに、2匹のヤマアラシは互いの体を傷つけず、ぬくもりを感じられる、お互いにとってちょうど良い(ベストな)距離を見つける・・・というお話です。

〜寄り添い合うヤマアラシ〜

人との関係が難しいと感じている人は多いと思います。人間関係の難しさの一つが距離の取り方とも言えます。自分も傷つかず、相手のことも傷つけない、それでも互いのあたたかさを分かち合える距離を見つけることが大切なんですね。

まずは、

相手を思いやる気持ちを持つことからがスタート

です。今回は物理的距離についてお話しましたが、次回は心的距離についてお話しようと思います。

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