思考について考えてみる【後篇】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

ひと口に思考と言っても、今は“〜シンキング”というものが流行りのようで、多くの思考法が溢れています。

よく聞く言葉に『ポジティブシンキング』がありますが、今回はポジティブ、ネガティブという“捉え方”ではなく、

“如何に考えるか?”

という思考方法の話です。

思考は、

  • 思考を広げる(幅)/水平思考/ラテラルシンギング
  • 思考を絞り込む(深さ)/垂直思考/ロジカルシンキング

大きくこのふたつに分けられ、

  • 思考を疑う/クリティカルシンキング

を合わせて3つの思考法と言います。

ラテラル

ロジカル

クリティカル

この3つのシンキングについて話を進めていきたいと思います。

重ねての説明になりますが、それぞれ

●ラテラルシンキング → 水平思考(幅)
●ロジカルシンキング → 垂直思考(深さ/論理的思考)
●クリティカルシンキング → 批判的思考

で、ロジカルシンキングは論理的課題解決力と言えます。

ロジカルシンキング=課題解決力、というと何が何でもロジカルシンキングが良い!と思い込みがちですが、必ずしもそうではありません。

ロジカルシンキングは考えねばならない一つの課題に対し論理を構築し、より深く考察していく考え方で、ラテラルシンキングとは、前提や過去の情報に捉われず、斬新な解決策を模索する、広がりのある自由な考え方です。

クリティカルシンキングは“批判的思考”と訳されますが、決して攻撃的な意味ではありません。

これでいいのだろうか?本当に〇〇は△△なのか?と

前提を疑う思考法

です。解決すべき課題に対し、自らの考えを疑う(疑問を持つ)、です。

わかりやすいのはテストの見直しですね。

「この公式で出した解だから正解に決まっている」という気持ちで見直しをしても、間違いを見つけられないことがあります。

「この問題を解くのに、この公式でよかっただろうか?」という気持ちで見直しをする、これが見直しをする上でとても大切になります。

クリティカルシンキングを心掛けるために、陥りやすい幾つかのバイアスがあるので意識しておく必要があります。そのバイアスは次のとおりです。

▷都合の良い結論ありきで考えてしまう。
▷自身の中にある記憶や知識だけに頼る。
▷情報をアップデートせず、最初に得た初期情報に依存する。
▷反対に、アップデートされた情報だけを頼り、初期情報を蔑ろにする。
▷うまくいかなかった時に他責方向で考える。
▷自身の知識や体験にこだわり、ニュートラルな視点で発想できない。

以前にもお話した【認知バイアスの罠】がここでも働いてしまうのです。

時と場合によっては、ラテラルシンキングで多角的に広がりをもって考え、ロジカルシンキングでより深掘りし、クリティカルシンキングで疑問を投げかけ検証し、さらに考えに修正を加え研鑽していく・・・が、最善の解を導き出す方法であったりもします。

どの考え方が一番良い、ということではなく、いろいろな思考法をバイアスを取っ払い柔軟に駆使しながら課題解決に取り組む、この姿勢こそが大事なのではないかと思うのです。

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思考について考えてみる【前篇】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

いきなりですが“考える力”を育むために必要な要素とは何だと思いますか?

それは、

知識力と思考力

です。今回は知識力や思考力、また思考方法などを前篇・後篇で書きたいと思います。

知識力とは、その人自身が持っている知識の量ですが、暗記が得意で知識だけが溢れるほどあっても、思考力が伴っていなければ考える力が高いとは言えません。

知識力と思考力をマスク製作を例に出して考えてみましょう。

マスクを作るために必要な道具(ミシン、縫い針、ハサミなど)や材料(さまざまな布やゴムひもなど)が考えられます。

●道具の使い方やさまざまな布やゴムひもの性質をどれくらい知っているか?

↑これに該当するのが知識力になります。

●どの素材(夏だから接触冷感にしよう、冬は暖かな肌触り。ゴムひもは耳が痛くならないニット製、それとも耐久性のどちらを選ぼうかな)を使い、どんな形のマスク(立体型?プリーツ型?など)を、何を使って(手縫いだけにしようか、ミシンを使おうか)どのような手順で作るのか(先にまとめて裁断しようか、ゴムひもから取り掛かろうか)?

↑これに該当するのが思考力になります。

道具や材料が揃っていても、

  • 何のために
  • どのようなマスクを

をイメージできなければ実際の行動に移すことはできません。取り掛かれても、途中でグダグダになることが目に見えています。

私たちは、

無意識に知識を使い、知識を発展させたり応用するという思考がセットになって行動に繋がっている

ことが分かってもらえたと思います。

一度自分の行動を振り返り、

どのような知識を使い、それを発展、応用しているのかを意識してみる

とわかりやすいと思います。

料理、買い物といった家事、営業や接客、指示されたものを作り上げるといった仕事、そこには蓄えた知識を柔軟に発展、応用しているあなたがいるはずです。

後篇では思考法について考えてみます。

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“注意”をADHD(ADD)の特性から考える

一応緊急事態宣言は解除されましたね。まだまだ油断はできない状況に変わりはない中で、急に暑くなり、それでもマスクを外すことはできず、今度は熱中症にも注意しなければいけなくなりそうです。

お元気ですか?メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

さて今回は、生活していく上でいろいろな場面で必要となる能力、【注意】について、その種類や役割を、また、学校生活や家庭、社会生活でも困り感が出やすいADHD(ADD)の特徴と照らし合わせながら見ていきたいと思います。

軽くADHDのおさらいと、【注意】の種類やどのような場面でそれらの能力が使われるのかについて説明します。

ADHDは大きく3つのタイプに分けられます。

  • 多動/衝動性優勢
  • 不注意優勢
  • 上記を併せ持つ混合型

です。それぞれどのような特徴があるのかは発達障害のコラムを参照してください。

次に【注意】の種類や機能についてお話します。前回“分割的注意”とは?でお話しましたが、他にも幾つかの【注意】があります。

集中的注意(持続性注意)

選択的注意

分割的注意(分配性注意)

転換的注意

被る部分もありますが、例を挙げながらそれぞれの【注意】を説明します。

集中的注意(持続性注意): 一つのことに集中力を持続する機能(読書、テスト、書類をまとめる、作文を書く、授業を受ける、何かの作業をする、など)。

選択的注意:選択的注意には、今の自分にとって重要な情報を集める、不要な情報を遮断する、という二つの機能があります。 いろいろな情報から、自分に必要な情報を選択し集中する(ラジオを聴きながら勉強or仕事、散歩しながら献立を考える、など)。

分割的注意(分配性注意): 同時に一つ以上の情報に注意を向けながら行動する(複数で会話する、電話しながらメモを取る、運転しながら話をする、など)。

転換的注意: 一つのことに集中している時に、別のことに気付いて注意を切り替える(テレビを見ていて電話が鳴ったらすぐに話ができても気付かない、テレビを見ていて電話に気付かない、など)。

1日にどのような【注意】機能を使っているのか例を挙げ、見ていきましょう。あえて書き出すと、呼吸のように無意識且つ連続的に使っていることがわかります。

<設定>:週末。自宅に要介護の家族がおり、ヘルパーさんが訪問中なので、その間に近くのスーパーへ買い物に行った。

買い物帰りに友人に声をかけられました。週末で人も多く騒がしい街中、そんな場所で友人の声(話)に注意を向けます。← 選択的注意

久しぶりの友人との楽しい会話に注意を向け続けます。← 集中的注意(持続性注意)

会話を楽しんでいるとヘルパーさんから電話がかかってきたので、一旦話を止め、ヘルパーさんと話します。← 転換的注意

電話を切り、またすぐに友人と歩きながら話を続けます。← 転換的注意

道幅が狭い場所に差し掛かり、話をしながら後ろから来る自転車や車も意識します。← 分割的注意

何となくイメージできたでしょうか。

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分割的注意とは?

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

私たちが普段使う【注意】と、心理学の【注意】は意味が異なります。コラムでも、前回の心理検査や発達障害の回で【選択的注意】については触れていますが、今回は【注意】の中から【分割的注意】についてお話します。

私たちが使う【注意】は、ほとんどの場合“食べ過ぎ注意”“頭上注意”“高波注意報”のように、何かに“気をつける”という意味で使われます。

心理学では、この【注意】が違う意味で使われます。

【分割的注意】とは。

幾つもの作業をおこなう時に、並列的に集中を切り替えたり、分配する機能のことです。私たちの生活はすべて、認知活動によりおこなわれており、認知活動はさまざまな【注意(意識を向ける、集中)】を必要とされます。

重要度や振り分け具合はケースによりますが、身近なものだと、ラジオを聴きながら勉強をする、テレビをつけて人と会話をする、犬の散歩をしながら明日のプレゼンを考える・・・と思い浮かべてもらうとわかりやすいかもしれません。

大袈裟に言えばマルチタスクですが、

作業上必要となる幾つもの情報を一つ以上同時に実行していく機能

のことです。

授業中に先生の話を聞きながら黒板に書かれた字を見てノートに取る、これも分割的注意が必要で(ガヤガヤした教室内で先生の声だけに集中するのは選択的注意)ですから、この機能や選択的注意機能が低いと成績が振るわないということが起こります。

車の運転もそうで、バックミラーで後方車を確認したり、前方の車や先の信号、右折レーンにいる車、脇道から出てくるかもしれない人や車に気を配る、これも分割的注意になります。

家庭では料理を作るのに分割的注意を使っています。

私を例に『ポテトサラダを作る』で考えてみましょう。

実際の行動では、ポテトサラダを作りながら並行して、ご飯を炊くために米を研ぎ、出汁を取りながら味噌汁を作る準備をしつつ、ヒジキの煮物を作るために乾燥ヒジキを水に入れて戻したり、唐揚げの下味をつけたり、途中途中で出たゴミを片付け、調理器具を洗ったりを常に頭で考えながらスムーズに実行しています。

ジャガイモを洗って剥き、刻んだニンジンとラップに包んでレンジで加熱している間に、マヨネーズを冷蔵庫から出し、キュウリを刻み塩揉みしておきます。

そしながら、頭では出来上がったジャガイモを潰す、が浮かんできます。出来上がったジャガイモの粗熱を取りながら、塩揉みしていたキュウリの水分を絞り、それをジャガイモ、水分を絞り刻んだニンジンをマヨネーズと混ぜます。混ぜながら、掛かってきた電話を小首に挟んで話をします。電話をしながら、潰すために使ったボウルや包丁、使わない調理器具を洗い、シンクの中には物がないようにニンジンの皮やジャガイモの皮も一緒に片付けます。

これだけでもかなりの【分割的注意機能】を使っていることが分かると思います。

これが仕事だとどうでしょう。

具体的に見てみましょう。

資料作成中にあなたのデスクに電話が掛かってきます。電話で要件をメモしながら『あ、これはすぐに部長に報告しないと』と考えています。

実際に行動として現れているのは“電話を受けながらメモ”ですが、3つのタスクを使用していることがわかりますか?

1)聞く → 2)メモを取る → 3)メモを取りながら誰にいつ報告すべきか考える

【注意】あらゆる場面で必要となる機能です。【注意】には、ザックリ分けて4つの【注意】があります。

集中的注意

選択的注意

分割的注意

転換的注意

です。次回はさまざまな【注意】を発達障害特性から考えていきます。

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自己愛ってナニ?

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

自己愛

意味がわかるようで何だかよくわからない、そう思っている人は多いのではないでしょうか。

自分大好き!!

頑張る自分を誰よりも認め、自分のことを好きでいること。この気持ち自体は大切なことで、自分を認められないと“自己肯定感”を持ちづらくなります。(自己肯定感についてはまたの機会に。)

ただ、この【自己愛】が強すぎると『自分だけが大事!』になり、これはこれで人間関係に軋轢を生みやすい非常に厄介な人になってしまいます。

いろいろな使われ方をされる【自己愛】ですが、今回は自己愛が強すぎるタイプとはどのような人なのか、それがどう人間関係に影響してしまうのかをお話しします。

自己愛が強すぎる人には幾つかの特徴があります。

●自分に対して評価が甘い。
自分を大好き過ぎると、『ま、いっか』が激増、自分大好き=自分を甘やかす、になりがち。

言葉の端々から自己卑下しているように見えても、実は自己評価が高いという人がいます。何かに躓くと、自分が悪いのではなく「〇〇があったから」と環境のせいに、「〇〇さんが□□だから」と人のせいに、という具合に周りが悪いという考えに向きがちです。

●失敗から学べない。
私生活や仕事で失敗することがあっても過度に「自分は大丈夫」と思い、反省から振り返り、次の行動に活かすことができない。そのため、何度も同じ失敗を繰り返しやすい。

自己愛が強過ぎる人は、自分の中に“理想の自己像”があり、自分の失敗や欠点、汚い部分(実は自分は計算高いところがある、人によって態度を変えるなど)を認めない傾向が高いです。失敗について誰かに咎められても、自分を省みることが難しいことから、謝罪をしていても形だけ、どこかで「自分は悪くない(だって〇〇さんが・・・)(だって□□があったから・・・)」「自分が正しい」と思っています。

●思いやりの持ち方、考え方が独特。
自己愛が強過ぎると自分にばかり意識が向いているので、他者の気持ちや感情を認識しようとしないし、そんなことより“自分が優先”。

大切なもの、守りたいものは自分(だけ)の気持ちやプライド、体面なので、それが傷つけられたと感じると、他者から見て些細なことでも過剰反応し、激しい感情をぶつけます。とても強いように見えますが、他者からの否定や非難には非常に打たれ弱く、嘘や詭弁でその場を逃げようとします。客観的に現実把握する力があっても、自分(だけ)が大切で可愛い、守りたいのは自分(だけ)なので、自分の失敗を認めて反省することはできません。

他者(関わる人)をブンブン振り回しエネルギーを奪う人たちの中には、ボーダーと言われる“境界性パーソナリティー障害”がいますが、自己愛が強過ぎる人も、ボーダー並みに他者を心底疲弊させます。

失敗を認めず、「だって〜」「でも〜」「だから〜」を繰り出し、誰かのせいにばかりしているとウンザリされますし、口先の謝罪ばかりで行動自体が何も変わらなければ他者から相手にされません。

自分を愛し大切にする適切な“自己愛”は、自己中心や自意識過剰、自分大好き人間とは違うのです。

家から一歩出ると(一人暮らしでなければ家の中にも“他者”がいますが)、どのような形でも自分以外の他者と関わりながら社会生活を営んでいます。

自分(だけ)が一番可愛い、自分(だけ)を守りたい、自分(だけ)は傷つきたくない、何かあったら人のせい・・・と、ジブンがー!ジブンがー!ばかりだと、関わる人は疲れてしまいます。

私生活でこのようなタイプに行き当たってしまったら・・・「へー」「ほー」「ふーん」と定型文ループで浅いお付き合いを心掛け、大切な自分のエネルギーを無駄に使わないようにしましょう(笑)

誰かが言っていた印象深い言葉があります。

【我が強い】と【気が強い】は似て非なるものだ、

と。なるほど、と思いました。

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エチケットとマナー

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。 

今回は心理学とは少し離れますが、目についたことについてお話ししようと思います。内容に汚話を含んでいるので、読むタイミングに注意してください。

読者の皆さんは【クチャラー】という造語、意味をご存知でしょうか?知っている人は一気に思い出し、食事中の人は不快感が押し寄せてきたかもしれません・・・。

私も書きながら不快になっているのですが、今回はなぜ【クチャラー】が人をそんなに不快にさせるのかを考えてみたいと思います。

随分昔に『自分の食事風景をマナーとエチケットという視点から他者と一緒に評価してみる』という、いろいろな意味でとんでもなく恥さらしで穴があったら入って埋めたくなってしまう講義がありました。

それは定点カメラで自分一人と、グループで食事中の自分の姿を記録して『評価し合う』という考えただけでも恐ろしいもので、それが原因で人間関係が拗れてしまったという笑えない話もあるとかないとか。

幸いなことに、箸の持ち方、使い方、肘を付くなどテーブルマナーにも問題はなく、クチャラーについても無問題でしたが、グループの中に3人、一人は肘を付いて食べる人、もう一人は食器に顔を近付け、皿に顔が付かんばかりの食べ方をする、いわゆる“イヌ食い”、そして今回のテーマであるクチャラーがいました。

無自覚な人が多いのだと思いますが、咀嚼する時に口を閉じず(閉じられず?)、咀嚼音を周りに響かせながら「クッチャクッチャ」と音を立てて食べるのがクチャラーです。誰でも咀嚼時には多少は音が出るものではありますが、彼らは食べ物を噛む度に「クチャクチャ」と咀嚼音、そして舌鼓を打つという文字通り舌を鳴らしたりします。

クチャラーと言われる人たちの多くは、口を閉じずに食べている人で、咀嚼音だけではなく、口腔内にある咀嚼中の食べ物が見えたりします・・・。

「食事くらい好きに食べたっていいじゃん!」そう思う人もいるでしょう。確かにそうかもしれません。

クチャラー同士だとわかりませんが、目の前でクチャクチャ音を立てて食べられると、周りは不快になるものです。咀嚼音ではありませんが、音を立てて啜って美味しそうだと思うのは蕎麦やラーメンぐらいでしょうか。これからの季節はそうめんや冷や麦が美味しそうです。

そして、クチャラーに対して不快になるにはもっともな理由もあるのです。

クチャラーではない人は、食べ物を咀嚼したり飲み込む時には口を閉じます。しかし、

クチャラーの咀嚼音が大きいのは、口を開けたまま咀嚼したり飲み込んだりするから

です。

咀嚼は、歯で食べ物を細かくし飲み込みやすくするためにおこなわれる行為です。

クチャラーのように口を開けたままの状態でクチャクチャ噛むと、当然、細かくなった食べ物や唾液が飛び散りやすくなります。潔癖症でなくても、どれほど仲が良いカップルや家族でも、目の前の他者の口から飛び散った食べ物のカスが、テーブルや自分の食器に付いていい気持ちの人はいません。

開口して食べるクチャラーは、その様子を見たくなくても口腔内が視界に入ってきてしまうのですが、舌を突き出したり食べ物を丸めたり、口腔内の都合のいい場所に移動させたりと舌の動きが忙しなく、とても品の良い食べ方とは言えません。

人が食事を楽しむのに使っているのは味覚だけではありません。美味しそうに見える(視覚)、美味しそうな匂い(嗅覚)、そして、例えば肉のジュージュー焼ける音、鍋のグツグツ煮える音(聴覚)、いろんな感覚をフルに使い、食事を味わっています。

そこに、口を開けて食べている口腔内が見え、クチャクチャと音がする・・・これはもう食事を楽しむどころか、不快感満載の雑音でしかないわけです。

私自身、元祖昭和(笑)なので、息子にも厳しくマナーやエチケットを教え込んでいる真っ最中ですが、マナーやエチケットは

“その人のため”にだけあるのではなく、同じ空間、時間を過ごす他者を不快にしないために身につけるもの

だと思うのです。

クチャラーに限らず、人混みをかき分けて降車しなければならない時に、ただただ力業でグイグイ押し退けるのではなく、ひと言「すみません、降ります(通してください)」が言えること、店で料金を渡す時に投げるように放り出す(案外見るのでびっくりします)、見ている人を不快にする行為はいくらでもあります。

自分に置き換えてみてください。

満員電車で身動きが取れない中、力任せにグイグイ押し退けられるのと、「すみません、降ります」とひと言あるのとでは、どちらに好感が持てますか?

あなたがコンビニスタッフでカウンターにいたとしましょう。トレーにお金を置いてくれたり、手渡すお客さんと、カウンターに小銭を放り投げるように払う(時々転げ落ちて拾わないといけない)お客さん、どちらに好感を持ちますか?

年齢や性差に関係なく見られます。『自分は客なんだ!』を“偉い”と勘違いして横暴、横柄な振る舞いをする人たち。目にする度に残念な気持ちになります。相手はロボットではなく人間です。自分が逆の立場だったらどう感じるでしょう。

クチャラーや食事中のゲップ、『自分は気にならない』という人も少数いると思いますが、言わない、表情に出さないだけで不快に感じている人が大多数ではないでしょうか。

エチケットやマナーは他者を不快にさせないために身につけておく(自分の品を守るためにも)ものであるということを意識すると、それが結果、他者への気遣いに繋がると思うのです。

箸を上手に使い、キレイな食べ方をしている人は見ていて気持ちいいものです。せっかくの楽しいはずの食事、皆で楽しい時間が過ごせるといいですね。

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ストレスマネジメント【3】補足:リスト化参考例

ストレスマネジメントの3回目で書いた、具体的なストレスマネジメントの方法の例を記載します。

まず、ストレッサー(ストレスの原因)のリスト化の例。

  1. 常に仕事量が多い。
  2. いつも忙しくて時間に追われている。
  3. 上司が忙しく相談できない。
  4. 責任感から人に仕事を頼んだり任せられない

など、上記のようなことが複合的な場合もあると思います。このようにリスト化します。そして深刻度と問題解決の困難度をランク付けしていきますが、例えば、ストレッサーの深刻度を

A<深刻度高> /B<深刻度中>/ C<深刻度低>

にランク分けし、同様に問題解決の困難度を

A<困難度高> /B<困難度中>/ C<困難度低>

に分けます。

迷うところだと思いますがコツがあって、書き出した中から最初に最も深刻度の高いAと、最も深刻度の低いCを決め、残りを割り振っていくと比較的ラクにできると思います。

ストレッサーの例で挙げた1、2は、量的ストレッサーですが、これは会社からの要請のため、個人だけでは解決が難しい、問題解決の難易度が高いストレッサーになります。

4は社内への何らかのアプローチで解決可能な範囲と思われますが、今まで責任感から人に頼むより自分でやったほうが早いし確実だと自分一人で抱え込み、対処してきませんでした。また3も、上司は自分以上に多忙だと知っているために4に比べて問題解決の難易度が高いと判断されます。

こうしてリスト化し深刻度を可視化することにより、そもそもこのストレッサー群は、大元にある業務過多や時間的切迫から派生していることから、解決が困難な我慢するしかない問題だと思っていたのがわかります。

深刻度も解決困難度も低いものから取り組みます。

ここでは4になりますね。

さぁ、コーピングで対処法をできるだけ出していきます。

  1. 同僚や部下に思い切って仕事を割り振る。
  2. 他の事務スタッフに裏方的なサポート仕事を任せて時間を作る。
  3. 有能な部下を自分の下に付けてもらえるよう交渉する。
  4. もう一度部内で仕事の分担を見直す。

など、考えられる対処法を挙げていきます。この中で取り組みやすいと思われるコーピングはどれでしょう?

人の手を借りる1と2あたりが一番現実的で取り組みやすいでしょうか。

出来る出来ないは別にして、例えば、部下や事務サポートスタッフに仕事を割り振るために、今までより30分早く出社して、電話など手を煩わせることがない状況で、彼らに仕事を任せるための準備をおこないます。そして朝のミーティングでは効率よく彼らに指示を出せるように心掛けます(事前に部下や事務サポートスタッフの状況を聞き取り話を通しておくと、よりよいかもしれません)。夕方以降は、残業して一人で片付けることが多かった書類作成や事務処理は、部下や事務サポートスタッフに任せることにより、勤務時間内である程度終わるようになるかもしれません。

夜はそのための残業ではなく、それらを確認し、翌朝にフィードバックするようにしたところ、今までより仕事が効率よく進むようになります。そうすると、多少なり残業時間が減り、早く帰宅できる、時間も増やすことができるかもしれません。

これはほんの一例です。このように進める必要はありません。大事なことは、あなた自身が置かれた状況に即して、

ストレッサーとコーピングを列挙し、それぞれ深刻度と困難度をランク付けして可視化してみる

ことです。

全3回:ストレスマネジメント【3】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

ストレスマネジメントの最終回となる今回は、心理的ストレス反応の段階や、組織を例に具体的なストレスマネジメントの方法を個人向けに、ストレスが引き起こす関連疾患についてお話しようと思います。

心理的ストレス反応とは、ストレッサー(ストレスの原因)に対するコーピングの結果生じる、

心理的 身体的 行動的

な変化をまとめて指します。ストレス反応はそのままにしておくと、徐々に深刻な状況になってしまいます。

段階を進むごとに、さまざまな適応力を低下させますが、どのような経過を辿り、深刻化するのかを見ていきましょう。

段階1→疲労感
心身ともに疲労感を感じる。
十分寝たはずなのに、起きた時から疲れている、いつも緊張感がありリラックスできない。
段階2→イライラ感
感情のコントロールがしにくく、不安定になる。
今まで気にならなかったわずかな刺激で怒りやすくなり、指図されたと受け取りやすくなったり、感情がかき乱され、すぐに腹が立つ、物にあたる、手を上げることもある。
段階3→緊張感
いつも他者から評価されているような落ち着かなさや、今までできていたことが、今まで通りできないと感じるようになる。
段階4→身体不調
胃が痛む、動悸や異常な発汗、胸を締め付けられるような息苦しさ、ひどくなると突発性難聴などが表れる(私自身、今は治りましたが、以前は凄まじいストレス状態にあった時、突発性難聴になったことがあります。)
段階5→憂鬱感や解離症状
食欲がなくなり、今まであった物事への興味、関心が失われたり、注意力低下からミスが増える。
自分が自分でないように感じるのが解離症。
(私はカサンドラ状態に陥っていた時に、この第5段階の経験がありますが、自分の行動にまったく責任や自信が持てなくなり、無意識にかなり危うい行動をしていたこともあるようです。)

いくつか補足します。

段階1で感じる疲労感の特徴は、

時間的には十分な睡眠時間を取ったのに、睡眠満足感を得ることができない、身体の奥に鉛を抱えたような疲れ

です。

段階2にはイライラ感が表に出てくるので、パートナーや家族など近しい人にトゲトゲしい態度や強い言い方が増え、口論が増えていきます。感情コントロールの舵取りができないと、

不必要に他者と衝突することが増え、人間関係のトラブルを生みやすくなります。

段階3になると、

嫌なドキドキが出てきて、人前に出ることが苦痛になりますが、なぜ自分がそうなのかわからず、自分で自分に困惑する状態

になります。

次に心身症についてです。心身症とはストレス関連の疾患をまとめて言いますが、どのような疾患があるのか見ていきましょう。ただ、この中にはストレス“だけ”が原因で発症するわけではないものもあるので、『〇〇だから原因はストレスだ!』と決め付けないようにしてください。

顎関節症
ストレスから歯ぎしりや噛み締めが起こると、顎関節に症状が現れることがある。

●眼精疲労・眼瞼痙攣
睡眠不足や眼を使いすぎたり、疲れると瞼がピクピクする。

●喘息・過換気症候群
気管支が弱いと喘息になるケースがあり、ストレスが喘息を悪化させる可能性がある。過換気症候群は、発作性の呼吸困難。

●胃潰瘍・十二指腸潰瘍・過敏性大腸炎・心因性嘔吐
胸焼けや胃部不快感、すぐにお腹を下す、食べ過ぎや感染症ではないのに気持ち悪くなり、吐き気が出ることがある。

●蕁麻疹・円形脱毛症
ストレスで蕁麻疹が出やすくなり、アトピーは悪化しやすくなる。円形脱毛症は比較的よく見られる症状ですね。私も見事なハゲを幾つも作った経験があります(笑)

●緊張型頭痛・書痙
書痙とは手が震えて文字が書きにくくなったり、細かな作業がしにくくなる症状。

ストレスは全般的にアレルギーを悪化させると言われていますが、蕎麦アレルギーがストレスでもっと酷くなる、ということは聞かないことから、食物アレルギーはあまりストレスに関連がないのかもしれません。

ストレスがなぜ身体症状として表れるのでしょか?

それは

ホルモン分泌の乱れ、自律神経バランスの崩れ、免疫系バランスの崩れ

などがストレスから身体症状を引き起こしています。それらはどういうことかを少しお話します。

私たちはストレッサーに晒されると、副腎皮質から副腎皮質ホルモンというホルモンが分泌されます。副腎皮質ホルモンは、代謝活性し身体をストレス反応から守る働きがあるのですが、(現在のように)ストレス状態が長引き、ホルモンが分泌され続けると身体バランスが崩れてしまうのです。

知っている人も多いと思いますが、自律神経には【交感神経】【副交感神経】があり、不安や緊張から心臓がドキドキするのは交感神経が活動的になることから起こる生理現象です。いざという時に、身体がすぐに反応できるよう心臓をフルに稼働させている状態です。またリラックスした状態の時には、副交感神経が活動的になります。

このように、【交感神経】と【副交感神経】が交互にバランスを取りながら身体の働きを調整しています。ストレス状態になると、当然交感神経が活性化し、血管拡張や心拍増加、血圧上昇や血液凝固亢進(血栓ができやすくなる)、消化器官活動低下などが起こります。胃腸の働きが弱ると、胃液が溜まり胃が冷えたように感じたり、消化不良からさまざまな胃部不快感、下痢や便秘になりやすくなります。

また免疫系バランスの乱れは身体を守る大切な役割をするリンパ球数が減ったり、その機能が低下することで感染症に罹りやすくなります。慢性的にストレスが持続しても自然免疫に関連するナチュラルキラー細胞の減少が機能低下を引き起こし、ウイルス感染しやすくなります。

次に具体的なストレスマネジメントの方法ですが、今回は組織における個人向けについてお話します。

まずストレッサーを明確にし、具体的に

“負担に感じていること” “困っていること” “苦痛に思っていること”

を書き出してみましょう。どのようなストレッサーがリストアップされましたか?この結果、心に重くのしかかっているストレッサーの原因はひとつの問題ではなく、複数のストレッサーが合わさった重複的なものだと気付いたのではないでしょうか。(別ページ:ストレスマネジメント【3】補足:リスト化参考例参照)

負担を感じる作業ですが、ひとつ一つを細かく書き出していくことで、初めてそれらへの具体的な対処法が見えるようになります。

書き出したストレッサーから深刻度、困難度の低いストレッサーから取り組みます。

問題を解決するのに取り組むランクを決める際に考える基準があり、

【1】他者からサポートを望めるか?
→サポートが望める問題のほうが困難度は低くなります。

【2】その問題が自分が原因なのか、他者が原因となって起きたものか?
→自分が原因となって起きたものは、他者が原因となり起きた問題より困難度が低くなります。

次にコーピングを思いつく限りリストアップします。

以前、コーピングは積極的コーピングが有効だとお話しましたが、ケースによっては消極的コーピングを取ることが必要になることがあるため、この段階では積極的、消極的双方からのコーピングをリストアップしていきます。

【1】ランクを付けた最も低いストレッサーに対し、自信のあるコーピングからスタートする。

【2】緊急度が高くても、失敗するかもしれない深刻度の高いストレッサーに取り組まない。
→上手くいかなかった時にコーピングをおこなおうとすると、失敗の可能性が高くなり、一度コーピングが上手くいかないと次にコーピングにチャレンジするモチベーションが低下するからです。
実際、深刻度の高いストレッサーが原因となり、深刻度の低いストレッサーが含まれるケースも多いことから、遠回りに思われても、深刻度の低いストレッサーに対し、着実にコーピングをおこなっていくことが大切になります。

【3】コーピングの成功、失敗に関係なく、よりランクの上のストレッサーに移行する。
→特定のストレッサーに対しコーピングをおこなって問題解決できなくても、そのストレッサーにだけとらわれず、『自分は努力した』と認めることが、無駄なエネルギーを使わず、コーピングを持続するモチベーションに繋がります。
ここで大切なのは、結果より、問題に対処しようとする姿勢を持続していくことだからです。

コーピングをおこなうためのフローチャートを参考にし、取り組んでみてください。

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全3回:ストレスマネジメント【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回に引き続き、ストレスマネジメントの2回目になります。今回は積極的コーピングやソーシャルサポート、ソーシャルスキルについて考えていきましょう。

前回紹介した【感情優先/積極・消極】【問題優先/積極・消極】ですが、感情を鎮めることを優先するか、問題の解決を優先するのかは個人の性格やケースにより変わってくることもあります。しかし、積極的な対処をするか、消極的な対処をするかは個人の“意志”次第で、ある程度変容できる部分でもあります。

性格自体を変えることは難しくても、気の持ちようは、努力である程度変えられるというわけです。

『自分は〇〇だから』『〇〇だから無理』『前も〇〇だったからできないに違いない』・・・という思いが出てくるかもしれません。以前【認知の歪み】のコラムでも書いた、思い込みによる認知の歪みが邪魔をすることもあることを思い出してください。

積極的コーピング、消極的コーピング、どちらを選択するかは、誰かに強引に決められることなく、任意にあなた自身がその努力を選択することができる『行動』です。

“積極的”“消極的”という表現から『自分は消極的だからダメなんだ』『やはり積極的が優れているんだ』と受け取る人もいると思いますが、決してそうではありません。以前お話した“優性遺伝”“劣性遺伝”を思い出してください。“優”という漢字は“優れた”に使われますが、優性遺伝が優れた遺伝子というわけではありませんでしたよね。

何でもかんでも積極的、積極性が良しで、消極的、消極性が悪、劣っている、ではありません。

下記に積極的コーピング、消極的コーピング、それぞれの行動と心理的ストレス反応を表にしてみました。自分自身がどちらのコーピング傾向にあるのかを、ストレスを伴う困難に遭遇した場合、どのような行動を取ることが多いのか、【行動】の欄を見ながら考えてみてください。

より良いコーピングとは、問題解決の積極的コーピングであることは理解できたと思いますが、より良いコーピングを安定して実践していくために必要なものがあります。それは、

ソーシャルサポート、ソーシャルスキル

という概念です。ソーシャルサポートとは、パートナーや家族、身近な人、友人や知人、職場の上司や同僚も含まれ、あなた自身が周囲から受けられる支援(サポート)のことです。問題解決のために目上の人や尊敬する人からもらう具体的アドバイス、パートナーや友人に悩みを聞いてもらい共感を得たり、理解してもらうという情緒的なサポートになります。

誰でも自分が経験した以上のことを想像したり、自分の身に置き換えて考えるのは難しいものですが、大切な人が悩んでいるツラい気持ちや、一人で抱え込んでいると感じる孤独感や絶望感にそっと寄り添うことはできるものです。ここでは以前お話した【アクティブ・リスニング(傾聴)】が役立ちます。

一旦話が逸れますが、気持ちを落ち着かせたり、荒れくれた気持ちを穏やかにするために重要な働きをする“愛情ホルモン”と言われるオキシトシンというホルモンがあります。

オキシトシン舌下スプレー、オキシトシン点鼻というものがあるのですが、日本では認可されていないので海外から個人輸入して自己責任で使用することしかできません。私は、イライラしがちで感情コントロールが難しい息子に、以前オキシトシン舌下スプレーを試したことがありました。すぐに効き目が表れるような性質のものではないので多少時間はかかりましたが、息子にはかなりの効き目を感じました。息子本人も「いつもより全然イライラしない!」と効果を実感したようでした。

継続していない理由は、海外では認可されていても国内で認可されていないことから、継続するには大いなる責任が伴うことと、何より高額だからです。自閉症スペクトラムへの情緒面の治療薬として期待されていますが、認可にはまだ時間を要しそうです。

しかし国内外のオキシトシン研究で、ハンドタッピングやマッサージにより、手の温もりからこのオキシトシンが分泌されることがわかってきました。愛情ホルモンは別名『幸せホルモン』とも呼ばれ、『安心ホルモン』でもあるので、心細かったりツラい時に愛するパートナーにハグしてもらう、信頼する人に「大丈夫、君ならできるよ」と肩をポンポン叩かれる・・・それで安心したり、気持ちがラクになった経験は誰もが持っているのではないでしょうか。それ、実はオキシトシンパワーです(笑)

私のオキシトシン分泌促進剤的なものは、信頼できるパートナーに話を聞いてもらいハグしてもらうこと、長い付き合いの信頼できる友人たちと話をすること、癒し効果抜群の猫たちと触れ合うことです。効果抜群です。

ソーシャルサポートとは、裏に隠されたオキシトシンパワー、そういう意味合いも含めて持っています。皆さんのオキシトシン分泌促進剤は何ですか?

次にソーシャルスキルですが、この場合のソーシャルスキルとはわかりやすく言うと“人付き合いスキル”で、人付き合いが上手い人は、円滑で友好的に幅広い層の人々と人間関係を構築、持続できるので、それが人脈という資源となり、ソーシャルサポート源になっていきます。

無意識にせよ、他者に対し身勝手な言動や振る舞いを繰り返したり、責任感のない誠意を感じられない対応、マウンティング、ワガママですぐに感情的になりやすいなど、ソーシャルスキルが低いと周りにはあなたを支援しよう、したいと思う人は少なくなってしまいます。そうなると、ソーシャルサポートという安定したコーピングに必要な“人脈”という資源が少なくなるので、ストレス耐性は低くなりがちです。

孤独、孤立はストレス耐性に大きく関わり、ストレスコーピングにも差が表れてきます。ソーシャルスキルがソーシャルサポートに繋がり、より良いコーピングを実現させることに結び付いていくと考えられています。

考えてみましょう。いつもあなたの話をきちんと聞き、寂しさやツラさに寄り添ってくれる友人と、側にはいるけど、こちらの話はろくすっぽ聞いてもくれず、話を被せてきて自分の話に持っていく(会話泥棒と言うそうです)か、口を開けば根性論や自慢、不平不満に文句ばかりのパートナー、お互いが困った事態になり苦しんでいる時、あなたはどちらにも同じように寄り添いたいと思いますか?

幾つもソーシャルサポートを持っていると、ストレッサー(ストレス原因)や心理的ストレス反応を減少させる効果があります。ここでソーシャルスキルを幾つかに分けて、どのような“人付き合いのスキル”があるのか見ていきましょう。

マネジメントスキル:自分への要求や要請を、段取りを考えて行動したり、感情的にならず、わかりやすく他者に伝えたり指示するスキル。

コミュニケーションスキル:他者に自分の意思や考えを的確に伝えたり、他者の考えを自分勝手なフィルターを通さず理解するなど、上手く会話を進めるスキル。

トラブルシューティングスキル:他者との間に勘違いやスレ違いから生じた軋轢を、考えて会話や行動によって良好な状態に修正するスキル。

といったところでしょうか。ここで簡単なソーシャルスキルテストをしてみましょう。

それぞれの問いに、まったくできない<1点>、少しできる<2点>、普通にできる<3点>、かなりできる<4点>、完璧にできる<5点>、をプラスしながら評価してみてください。

  1. 誰とでもあまり会話が途切れない。
  2. いろいろな目標を立てるのを困難だと思わない。
  3. 他者に対して、やってもらいたいことを上手く伝えることができる。
  4. 他者が自分とは違う考えを持っていても、擦り合わせ、上手くやっていける。
  5. 他者への手助けが上手にできる。
  6. 間違いや勘違いなどを指摘された時、感情的にならず、すぐに謝ることができる。
  7. 怒っている相手の話を聞き、上手くなだめられる。
  8. 初対面の人に、上手く自己紹介できる。
  9. 知らない人が相手でも、すぐに会話ができる。
  10. 周囲から矛盾する話が伝達されても混乱せずに処理できる。
  11. 周囲とトラブルが発生しても上手に処理できる。
  12. 自分の気持ちや感情を適切な手段で素直に表現できる。
  13. 恐怖を感じた時に上手くその感情を処理できる。
  14. 仕事上でどこに問題があるのか、すぐに見つけることができる。
  15. 気まずいことがあっても、相手と上手く和解できる。
  16. 相手から非難されることがあっても、上手く片付けることができる。
  17. 仕事ややらなくてはいけないことがある時、何をどうすればよいかを決められる。
  18. 何人かで話をしているところに、話を折らず気軽に参加できる。

如何でしたか?合計点が70点以上(A)は、人付き合いスキルが特上クラスです(笑)。52〜69点(B)であれば、まずまずの人間関係が構築できるとされ、それ以下(C)だと人付き合いは苦手と感じている人たちかもしれません。

また(C)に分類される人たちの多くに、人間関係が拗れた時にさっさと距離を置いたり、身を引く防御型、感情の拳を振り上げ、自分の正当性を主張する攻撃型とに分けられます。どちらも他者に傷つけられることを避けようとする自己防衛の表れです。

どちらも無意識な場合が多いので、『自分にはそういうことがあるかもな』と意識してみることは大切です。まずは自分にある思考や行動の癖に気付かないことには“だったらこう心がけよう”に繋がっていかないからです。点数は伏せますが、私も常に意識し続けている部分はあります。

コラムで代表のスミも書いていましたが、ストレスに晒され苦しい時に、たった一人で抱え込むことは精神的孤立に繋がり、メンタルを削られ疲弊していくので危険です。メンタルが疲弊すると、心身共にやる気を奪われ、正常な判断力、思考力が低下します。精神的な孤立化が進むと、社会的にも孤立しやすくなると同時に、益々気持ちが追い詰められ、知らず知らずに鬱状態に陥ります。

孤立をものともせず、たった一人でも心身生き抜いていけるサバイバーもいますが、強がりではなく本心からそう感じている人や実践できる人は稀ではないでしょうか。私が思い当たるのは“ジョン・ランボー”ぐらいです(笑)

日本が全国的に皆が不安を抱えているこのような状況だからこそ、カッコつけよう、強がろうとせず、『大変なんだよ、不安だ、頑張んなきゃいけないのはわかっているけど疲れたよ』と心の『澱み』『愚痴』を話してください。共感が精神的な孤立化を防ぎ、心の支えや安心感に繋がっていくことを感じるはずです。

最終回となる次回(5月5日)は、心理的ストレス反応の段階や、ストレスが引き起こす関連疾患、引き起こされるメカニズムと、具体的なストレスマネジメントの方法を幾つかお話しようと思います。

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全3回:ストレスマネジメント【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

新型コロナウイルスの影響で、感染拡大懸念から緊急事態宣言、社会活動の制限がおこなわれ、社会、学校、家庭生活とさまざまなところで不自由を強いられ大きな支障が顕れてきています。

我が家も春から中学2年になった息子がいますが、3月2日以降休校になり、終業式も始業式も簡略化、一体いつから通常授業に入れるのか?これだけの学習の遅れはどう埋めるのか?他校に行っている通級はどうなる?・・・など不安が重くのしかかり、先の見えないストレスが尽きません。

本来なら夢膨らみ、新しい門出となる人も多い春のはずが、私も含め先行き不安から胃が痛くなっている人も多いのではないでしょうか。

本当に無茶苦茶、胃が痛いです。

仕事面の不安にプラスし、思春期+超絶面倒な特性を持つ発達障害児と顔を合わせる時間が格段に増え、感情的なぶつかり合いを回避するために、メンタル面をフラットに保つ凄まじい努力が加わり、そのストレスたるや筆舌しがたいものがあります。

今回のようなケースでは、現状を自分の力で変えることはどうやってもできないか限界があり、頑張っても経済不安が解消できるわけではありません。しかし、このような時だからこそ、今回を含め3回に分けてストレスマネジメントについてお話ししたいと思います。

初回となる今回は【ストレスとは?】【ストレスが生まれる仕組み】についてお話しします。

普段からストレス、ストレスと言葉にしていますが、【そもそもストレスって一体ナニ?】というところからです。

ストレスとは、

さまざまな肉体的心理的外部刺激により生じた、“歪み”に対して起こる“心身反応”のこと

です。メンタルヘルス用語だと思われがちですが、実は物理学から来ている用語です。

真っ直ぐな金属棒に両端から力を加えていくと、たわみが生じます。しかし、力を緩めると元の形に戻ろうとしますよね。力が外部から加わった(両端から力を加えた)結果、生じたたわみ(歪み)に金属棒が反発する状態、これを物理学用語で『ストレス』と言います。

一般的にはストレスというと、ストレスの原因(ストレッサー)とストレス反応の両方を指します。高温、寒冷、振動や強い光、大きな音などが身体的外部刺激、人間関係、理不尽な扱い、過度なノルマ、能力以上を求められる、生活が脅かされるなどが心理的外部刺激になります。今回の新型コロナウイルスにより生まれるストレスは、社会不安やイライラ感、鬱や胃痛ということになります。

マイナスイメージしかないストレスですが、現実的にストレスがまったくない生活はあり得ませんし、それが望ましいわけでもありません。ストレス=負荷(負荷は悪い意味だけではありません)とも言えますが、私たちが成長していくために必要なものでもあります。仕事でも、今の能力ではできないことをできるようになりたいと努力する中で、心身に負荷がかかることはよくあると思います。また、逆境が人を強くするとも言われます。

実際、飲食店の中には客足が遠退き、短縮営業を余儀なくされてしまったことで、テイクアウトや通販など、今までやってこなかった方法で何とかこの苦境に立ち向かおうとしている人達がいます。

新型コロナウイルスからくるストレスの是非はともかく、悪者扱いされがちなストレスですが、負荷やプレッシャーは能力を高め、成長を促す役割を持つ源でもあるので、忌み嫌ってはいけない、ということになります。

私自身、息子と衝突を回避するために感情マネジメントにより一層取り組み、生活習慣がこれ以上乱れないように何かできないものかと、あの手この手を考えています。逃げたくても逃げることはできません。

平時に人が一番ストレスを感じるのは人間関係、環境変化だと言われています。仕事でも私生活でも、人間関係のもつれに巻き込まれれば誰でも気が滅入り、憂鬱な気分になるのはわかりやすい因果関係です。これは人間関係のもつれがストレッサー(ストレスの原因)となり、憂鬱な気分になる(ストレス反応)からです。

ストレッサーが同じでも、人によってストレス反応に差があることはご存知でしょう。それは何故だと思いますか?

心理学者のラザラスが打ち出した『心理学的ストレスモデル』で説明されていますが、より分かりやすく噛み砕きます。専門用語でいうところのアプレイザル(判断/評価)とコーピング(対処努力)というプロセスが大切になってきます。

この“アプレイザル(判断/評価)”は、ストレッサーを

  • 負担(望まないけど)
  • 自分を成長させくれる試練

どう捉えるかという私たちの心の中にある“評価プロセス”です。困難で不快な状況に置かれた時に、怒りを覚えるだけの人もいるでしょうし、まったく気にせずスルーできる人もいれば、こんなの大したことはない、これは気付くキッカケだ、厳しい状況だが自分を成長させる貴重な機会だ、など人によって考え方はさまざまです。つまり、この

“負担の受け取り方”次第

ということになります。

ただ、困難な状況に長期間置かれた場合、かなり神経が図太い人でなければ、ストレッサーを負担と感じてしまうのも事実です。

ストレッサー=負担、と受け取ると心理的負担を少しでも軽くしようと『努力』が始まります。ストレスに直面すると、そのストレスを受け取る側でさまざまな刺激を処理する過程があります。これをアプレイザルとコーピングと言います。

ストレッサーを負担と受け取ると、次にこの心理的負担を軽減しようと努力が始まります。コーピングは、ストレッサーを少しでも軽くしようとする“具体的な努力”を意味し、憂鬱な気持ちやイライラ感などのストレス反応を何とかしようとする努力ではありません。ストレッサー(ストレスの原因)と向き合う前向きな努力です。

コーピングは生まれ持った性格ではなく、努力により身につけられるものなので、性格は簡単に変えることはできないものでも、努力で身につくのであれば、よりよいコーピングを身につけることで、ストレッサーから受ける心理的負担の軽減を図ることができます。

コーピングはストレスマネジメントの鍵となる、とても重要な概念です。

同じ種類の、同じレベルの影響力の強いストレッサーに晒されても、表れるストレス反応(イライラ感、疲労感、鬱や胃痛)は人によって変わってくるとお話ししました。その違いを生むのが、

ストレッサーに対処するコーピングというメカニズム

です。

ちょっと専門的になりますが、コーピングには幾つかのタイプがあり【感情優先】と【問題優先】があります。また感情優先には【感情優先消極】と【感情優先積極】が、問題優先には【問題優先消極】と【問題優先積極】があります。

【感情優先】とは、気分の動揺が激しく、辛く苦しいため、まず気持ちを鎮めてから、その後に問題解決するための対策を考えるタイプ。その際の問題解決はストレスの原因を解決することで気持ちの動揺が収まると考え、まず原因の究明を優先するというタイプです。【感情優先】は気持ちの鎮静化に向かうだけで、ストレスの根本原因の解決には向かわないのがほとんどです。気持ちは落ち着いてもストレッサーはなくならないため、抜本的な対策にはなりづらいです。

【感情優先消極】タイプは、ストレッサーに遭遇すると『嫌なことはなかったことにして忘れよう』と、消極的な手段で気分の鎮静化を図り、【感情優先積極】タイプは『趣味や好きなことに没頭して気分転換しよう』と、積極的な行動を起こし、気分の鎮静化を図るタイプです。

【問題優先】にも同じく消極、積極タイプがあり、【問題優先消極】は『しばらくよく観察してみよう』と問題解決にはすぐに向かわず、まず様子を見るタイプ。【問題優先積極】は『よし、できることから対応してみよう』と周囲に相談したり、自ら問題解決のために行動を起こすタイプです。

こうしたコーピングタイプでストレス耐性が変わってくるのですが、ストレッサーの影響を受けやすく、ストレス反応を起こしやすい、いわゆるストレス耐性が低い人は、感情の鎮静化を優先する傾向があります。逆に、ストレス耐性が高い人は問題解決を優先し、積極的なほうが消極的よりもストレッサーに対処する傾向があります。

次回は誰でもチャレンジできる【積極コーピング】についてお話ししたいと思います。

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